おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

経口免疫療法

ゾレア皮下注が米食品医薬品局(FDA)にて食物アレルギーの承認を得る(2024/2)

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ゾレア皮下注が米食品医薬品局(FDA)にて食物アレルギーの承認を得る(2024/2)

喘息治療薬で知られるゾレア皮下注が米国にて食物アレルギー治療薬としての承認を得ました。

使用方法は2~4週間ごとに皮下注射にて投与します。

治験データでは、ピーナッツアレルギーを持つ子供にゾレア皮下注を投与した結果、中等度または重度のアレルギー症状を呈することなく67%の子供が1回に約2.5個(600mg以上)のピーナッツを摂取できたと報告されました。一方、ゾレアを投与していない子供ではアレルギー症状を呈することなく摂取できた割合は7%だけでした。

報告では、卵や牛乳、小麦、カシューナッツ、ヘーゼルナッツでの摂取でも同様の結果が得られたとしており、子供や青少年が誤ってアレルギーを含む食物を食べてしまった場合の、リスク回避としても有益であることが示唆されています。

ゾレア皮下注に食物アレルギー予防の適応追加

牛乳アレルギーの経口免疫療法には腸内のビフィズス菌が関与(2023/11/8)

牛乳アレルギーの小児に対する治療として経口免疫療法が行われることがあります。

理化学研究所の報告によると、腸内細菌のビフィズス菌が持続的無反応達成に関与する因子であることが報告されました。

経口免疫療法が行われた小児の糞便検体を採取し、腸内環境因子を解析した結果、ビフィズス菌優勢モジュールにおいて持続的無反応達成率の上昇と関連することが示されました。ビフィズス菌が優勢の群では達成率が1.4倍と報告しています。

また、アトピー性皮膚炎および喘息が持続的無反応達成率の低下と有意に関連していたことも報告されました。

牛乳アレルギーの経口免疫療法とビフィズス菌の関連について

食べ物によるアレルギーを治療する”経口免疫療法”の作用の一部が解明される(2020/12/10)

花粉症治療や、ダニ抗原によるアレルギー症状を軽減させる目的で脱感作療法または経口免疫療法と呼ばれる治療があります。原因となる物質を一定期間をかけて、ごく少量ずつ体内に取り入れることで、アレルギー症状を軽減させることが目的です。

専門医の指導の下、小児に牛乳や小麦アレルギーの軽減化を目的として、原因となる食べ物を、非常に少量ずつ摂取するという取り組みを行っている医療機関もあります。

今回は”経口免疫療法”を行うことで、私たちの体の中でどのような変化が起こっているのかについて、その一端が解明されましたので下記致します。

 

以下はマウスによる実験結果です。

特定の食べ物をたべて下痢などのアレルギー症状が生じる流れとしては「食べ物を食べる」→腸管においてマスト細胞と呼ばれる細胞が活性かして、脱顆粒(細胞内に含んでいるアレルギー成分を細胞外に放出する)を行い、アレルギー症状を呈し、下痢症状が引き起こされるという経路が想定されます。

 

経口免疫療法により、ごく少量ずつ該当食品を摂取したマウスにおいては、活性化されたマスト細胞が低応答状態(非活性化状態)となっただけでなく、調節性のマスト細胞へ変換を行うことが見出されました。調節性のマスト細胞は該当食品を摂取してもアレルギー性下痢を引き起こすことはありませんでした。(経口無反応性を獲得)

 

また、アレルギー症状を抑える体内サイトカインとして「規制性T細胞」呼ばれるアレルギー抑制細胞があるのですが、上記の調節性マスト細胞は「規制性T細胞」を増やすためにIL-2を産生するとともに、アレルギー反応を抑制するためにIL-10を産生することにより、アレルギー症状を抑制することが解明されました。

 

専門医の指示のとも、継続的に経口免疫療法を行うことで上記の免疫システムを獲得することができれば「食べ物によるアレルギー」を軽減できるのかもしれません。

注意)日本小児アレルギー学会において経口免疫療法を食物アレルギーの一般診療として推奨しておりません。

経口免疫療法による腸管内作用機序の一端が解明される

milk

milk

経口免疫療法におけるアナフィラキシー症例報告

 

経口免疫療法を行っていたお子さんが心肺停止となる報道がありました。経口免疫療法とは食物アレルギーを克服するために専門医の治療の下で少量ずつ該当食品を摂取して耐性を獲得していくという治療方法であり、現在臨床研究の段階にある医療です。

 

今回の報道では、ぜんそくの持病がある牛乳アレルギーのお子さんが、21日間入院中に少量ずつ牛乳を摂取するという経口免疫療法を行った後、退院して自宅でも同様の牛乳摂取を行っているさなかにアレルギー反応が発症したと報じられています。尚、2日前にぜんそくの発作を起こしていたということです。

経口免疫療法に関する注意喚起(日本小児アレルギー学会)

経口免疫療法に関しては全国で約300か所の医療機関で実施されており8000例におよぶ治療例が報告されています。しかし、その研究報告の多くは

“アナフィラキシーとなる重症な患者を対象から除外している”

と記されている報告を多く見かけます。

経口免疫療法の実際と問題

実際にアナフィラキシー症例を除く経口免疫療法の報告例におけるアレルギー誘発頻度を確認してみると、アレルギー誘発率は2385回の経口摂取中197回(約8%)であり、内訳は皮膚症状が141回(6%)、呼吸器症状は16回(0.7%)、消化器症状は40回(2%)となっています。いわゆる命にかかわるような呼吸器症例が非常に少ないことがわかります。これはアナフィラキシー症例が除かれているためと解釈できます。

 

一方で、アナフィラキシー症例での治療効果を報告している研究もあります。

研究報告によるとアナフィラキシー発症患者さんを対象として2年間にわたる経口免疫療法を行った結果、鶏卵で90%、牛乳で80%、小麦では100%の脱感作状態(該当食品を少量摂取してもアレルギー症状が発症しない状態)となったことが報告されています。

 

さらに上記の状態で2週間にわたり経口免疫療法を中止したとしても鶏卵では60%、牛乳では30%、小麦では80%の割合で症状が耐性化したと報告されています。つまりアナフィラキシーが発症しても専門医の元で適切な治療を行うことで経口免疫療法を行うことができるという報告です。

 

しかし、安全性については注意喚起がなされており、治療中に誘発されるアレルギー症状は様々なものがありアドレナリン筋肉注射を必要とするような重篤な症状も報告されています(アナフィラキシーショックのことです)。

 

重篤な誘発症状の多くは増量期(入院中)に認められるが、退院後に自宅で同量を摂取し続ける維持期にも症状を認めることもあり、注意を要するとしています。

 

特に該当食品が牛乳の場合は治療が難渋し、Longoらの報告では重症牛乳アレルギー児を対象とした検討では、牛乳以外の食品と比べて、牛乳ではより多くのアレルギー誘発症状を認めたとしています。

 

Longらの報告を確認してみると重篤な牛乳アレルギー症状をもつ5歳以上の子供30人に1年間にわたり牛乳の経口免疫療法を行ったところ11人(36%)は治療が成功し、16人(54%)が5~150mlという少量を服用できるようになった。3人(10%)は持続的な呼吸器アレルギー誘発または持続的に腹部アレルギー症状が誘発したため治療を断念したと報告しています。

 

今回報道されたお子さんの事例も“牛乳”を対象とした経口免疫療法の治療中とのことでした。現在、経口免疫療法は臨床研究の段階にあり、その治療の有益性と有害事象とを臨床データとして研究している医療です。日本小児アレルギー学会は同ホームページにおいて以下の要点をまとめています。

 

  • 経口免疫療法を食物アレルギーの一般診療として推奨しない。

 

  • 治療の過程で即時型症状を多くの症例に認め、予期せずにアナフィラキシーを含む重篤な症状を誘発することがある。

 

③ 食物アレルギー診療を熟知した専門医(日常的に食物経口負荷試験を実施し、症状誘発時の対応が十分に行える医師)が、症状出現時の救急対応に万全を期した上で、臨床研究として慎重に施行すべきである。

 

④ 脱感作状態とは原因食物を摂取し続けていれば症状が現れない状態をいう。しかし、患者の一部では治療を中断すると症状誘発閾値が元に戻ることや摂取後の運動により症状が誘発されることがある。

 

⑤ 経口免疫療法を適用すべきではない患者は、表(9-4)に示すように原則的には他のアレルゲン免疫療法と同様である。不安定な喘息症状は致死的アナフィラキシーの重要な要因であるのでコントロールが良好な状態で経口免疫療法を実施すべきである。

表9-4:経口免疫療法の対象者の選択基準と禁忌

~適用~

1:負荷試験で診断された即時型食物アレルギーである。

2:自然経過では早期に耐性獲得が期待できない。

 

~禁忌~

1:アドレナリン投与禁忌である患者

2:妊娠している患者

3:不安定な重症喘息を合併する患者(1秒率70%未満)

4:全身的に重篤な疾患を有する患者

・悪性腫瘍

・自己免疫疾患

・免疫不全症

・重症心疾患

・慢性感染症

 

-経口免疫療法
-アナフィラキシー, アレルギー, 小児, 牛乳, 経口免疫療法

執筆者:ojiyaku


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