おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

緑内障

緑内障治療薬ルミガン・キサラタン・トラバタンズ・タプロス点眼の比較データ

投稿日:2018年7月3日 更新日:

緑内障治療薬ルミガン・キサラタン・トラバタンズ・タプロス点眼の比較データ

 

4種類のプロスタグランジン製剤(ルミガン・キサラタン・トラバタンズ・タプロス)について、その有効性・有害事象・保存剤の影響について調べてみました。

被験者:開放隅角緑内障と診断された患者さんを上記4種類のプロスタグランジン製剤に振り分けて使用してもらい、1か月後、3か月後、6か月後の検査結果および、OSDIスコア(ドライアイを評価する自己指標)を検討したデータを確認しました。

被験者は1剤で眼圧が良好にコントロールできる方を対象としており、毎晩午後7時~9時までの間に両目に1滴ずつ滴下して効果を検討しています。

緑内障治療薬プロスタグランジン製剤4種類の比較データ

〇有効性について

ヒトの眼内圧の正常域:10~21 mmHg

 

ルミガン点眼

開始時の眼内圧:26.13 mmHg

1か月後の眼内圧:17.12mmHg                              

3か月後の眼内圧:15.58 mmHg

6か月後の眼内圧:15.50 mmHg

 

キサラタン点眼

開始時の眼内圧:24.71 mmHg

1か月後の眼内圧:16.32mmHg    

3か月後の眼内圧:17.02 mmHg

6か月後の眼内圧:17.43mmHg

ドライアイ症状に対するジクアス・ヒアレイン・ムコスタ点眼の比較

トラバタンズ点眼

開始時の眼内圧:24.38 mmHg

1か月後の眼内圧:16.32mmHg    

3か月後の眼内圧:17.43 mmHg

6か月後の眼内圧:16.88mmHg

 

タプロス点眼

開始時の眼内圧:25.22mmHg

1か月後の眼内圧:17.22mmHg    

3か月後の眼内圧:16.97 mmHg

6か月後の眼内圧:18.11mmHg

4製剤ともに眼内圧低下作用について統計的な差はなく有用性が示されました。有意差はないものの、このデータに関しては、ルミガン点眼が他剤と比較してより大きな眼内圧低下作用を示していました。

コンタクトレンズをした状態でムコスタ点眼液をした時の効果について

megusuri

megusuri

〇有害事象(副作用について)

ビマトプロスト:ルミガン(陽イオン性界面活性剤:ベンザルコニウム塩化物0.02%)

ラタノプロスト:キサラタン(陽イオン性界面活性剤:ベンザルコニウム塩化物0.02%)

トラボプロスト:トラバタンズ(polyquad)

タフルプロスと;タプロス(ベンザルコニウム塩化物を含まない)

 

キサラタン点眼を使用した患者さんで虹彩色素沈着・眼周囲の多毛化(まつげがのびる)という有害事象が他3剤と比較して高い値となっています。

 

眼の調子を自己指標するためのOSDI(眼表面疾患指数:値が高いほど目の調子がよくない)の結果では、統計的な有意差はないものの、キサラタン点眼を使用した方でOSDIスコアが最も高い32.13(不快感がつよい)というデータとなっており、トラバタンズ点眼を使用した方でOSDIスコアが10程度と最も低い(使用感がよい)という結果となっています。

(ルミガンのOSDIスコア:21程度、タプロスのOSDIスコア:26程度)

緑内障治療薬プロスタグランジン製剤4種類の比較データ

筆者らはキサラタン点眼とルミガン点眼に含まれている防腐剤“ベンザルコニウム塩化物”を長期間使用すると脂質層が乳化することで涙液膜が損傷することで“重症のドライアイ・眼瞼炎・角膜炎”といった副作用を引き起こす可能性があると注意喚起を促しています。(電子顕微鏡を用いた角膜の組織学的検査において、ベンザルコニウム塩化物が角膜の損傷を引き起こす可能性が示唆されているためとしています)。

防腐剤“ベンザルコニウム”の使用に関してはさまざまな見解があるかとは思いますが、トラバタンズ点眼、タプロス点眼にはベンザルコニウム塩化物が含まれておりませんので、このあたりが使い分ける理由の一つとなるかもしれません。

 

尚、日本国内ではソフトコンタクトレンズを使用している方が“塩化ベンザルコニウム”を含む点眼をするとレンズの変色・角膜障害を引き起こす可能性があるため使用しない程度の警告をよく目にします。

緑内障点眼剤の副作用について

まとめ

 

今回の報告ではプロスタグランジン製剤4種類の眼内圧に対する有効性は同等

トラバタンズ点眼は使用感がよい(目の違和感がすくない)

キサラタン点眼は虹彩の色素沈着・眼周囲の多毛化が生じる頻度が高い

 

 

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執筆者:ojiyaku


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