おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

糖尿病

動物性脂肪の摂取がDPP4阻害薬の作用を減弱する

投稿日:2018年1月4日 更新日:

動物性脂肪の摂取がDPP4阻害薬の作用を減弱する

 

日本人を対象としたDPP4阻害薬に関する興味深い報告がありました。報告によると動物性脂肪(飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸)の摂取量が多い人はDPP4阻害薬の効果が減弱するというものです(HbA1cが下がりにくいという報告です)

2006年9月から2017年6月までの約11年間においてDPP4阻害薬を単剤で1年間処方変更なく継続服用した2型糖尿病患者さんをピックアップして、 HbA1cの変動状況と食生活についての関係を報告しています。

 

結果、DPP4阻害薬の服用を開始して半年から1年において、HbA1cが上昇していた群は体重も増加しており、さらに食生活調査の結果、飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸の摂取量が有意に高いことが示されました。

 

炭水化物及びタンパク質の摂取量に関してはHbA1c維持群・上昇群ともに群間差は見られませんでした。

飽和脂肪酸(動物性脂肪)の取りすぎはDPP4阻害薬の作用を減弱する

この結果から、DPP4阻害剤単独療法におけるHbA1c低下効果において、過剰の飽和脂肪酸摂取は薬の効果を減弱させる可能性があると筆者らはまとめています。

 

飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸とは動物性脂肪に多く含まれている脂肪酸のことで、代表的な食品としては

バター・生クリーム・ラード・鶏皮・牛サーロイン・チーズ・ベーコンなど

年末年始の暴飲暴食によるメトグルコとアルコールの危険性について

加工食品として動物性脂肪が多い食品としては

カップ麺(インスタントラーメン)・ウインナー・チョコレート・ピーナッツバターなど

動物性脂肪の覚え方としては“常温・室温で固まっている油“です。常温で固まっている油を多く含む食品の取りすぎはDPP4阻害剤による糖尿病治療の妨げとなる可能性が報告されましたので、今後DPP4阻害剤を初めて服用する患者様には上記のような国内報告が上がっていることをお伝えしてもいいのかもしれません。

 

そもそもDPP4阻害剤は、その働きの一つに消化管の運動を遅らせて、食欲を抑える効果が備わっている薬だと認識しております。この働きを持つDPP4阻害剤を1年間服用してからも、体重増加が続くという患者様がいらっしゃった場合、これまでは「食べ過ぎ!」という認識でとどまってしまっておりました。

メトグルコ服用と体重増減について

しかし、今回の報告を受けて

「もしかしたら動物性脂肪の取りすぎかも・・」

と、より具体的な食品までお伝え出来るかもしれません。

 

調剤薬局で出来ることには限りがありますが、今回のような報告は調剤薬局においてお薬をお渡しした後の「プラス一言」としても活用出来るかもしれません。

年末年始の暴飲暴食によるメトグルコとアルコールの危険性について

-糖尿病
-DPP4阻害薬, インスタントラーメン, カップラーメン, チーズ, バター, ベーコン, ラード, 動物性脂肪, 牛肉, 阻害薬, 飽和脂肪酸

執筆者:ojiyaku


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

関連記事

厳格な血糖コントロールをしているうちは心血管リスクを低く保つことができるが・・

厳格な血糖コントロールをしているうちは心血管リスクを低く保つことができるが・・   2型糖尿病患者さんにおいて、HbA1cを厳格に管理した群と標準管理した群における心血管リスクに関する報告が …

Entresto-LCZ696

ネプリアライシン阻害剤LCZ696(サクビトリルとバルサルタンの合剤)の腎機能保護作用/急性心不全への効果について

ネプリアライシン阻害剤LCZ696(サクビトリルとバルサルタンの合剤)の腎機能保護作用/急性心不全への効果について 追記:2018年11月15日 ネプリライシン阻害薬による血中NT-proBNP低下作 …

type-1-diabetes-hba1c

1型糖尿病患者における超低炭水化物食によるHbA1c管理について

1型糖尿病患者における超低炭水化物食(VLCD)によるHbA1c管理について   1日の炭水化物摂取量を30g程度で管理する超低炭水化物食を行った1型糖尿病患者群に関するデータが開示されまし …

tab3

マウスの膵臓につながる迷走神経を活性化させて膵臓のβ細胞を増やすことに成功(2023/11/22)

マウスの膵臓につながる迷走神経を活性化させて膵臓のβ細胞を増やすことに成功(2023/11/22) 東北大学の研究チームがマウスの糖尿病治療で膵臓のβ細胞を増や手法を開発し、その手法が公開されました。 …

SGLT2-inhibitor-lisk-of-CVD

SGLT2阻害薬は痛風発作のリスクを低下させる(2023/9/10)

SGLT2阻害薬は痛風発作のリスクを低下させる(2023/9/10) SGLT2阻害薬の使用が痛風発作の低下と関連しているという報告が米マサチューセッツ総合病院の研究で報告されました。 SGLT2阻害 …

  google adsense




2023年12月発売予定のGEリスト(エクセルファイル)

2023年12月発売予定のGEリスト(エクセルファイル)

2023年4月薬価改定 新旧薬価差比較データ(エクセルファイル)

2022年4月薬価改定。新旧薬価差比較データ(エクセルファイル)

おじさん薬剤師の働き方

how-to-work

薬剤師の育成について

how-to-bring-upo

日医工・沢井・東和・日本ジェネリック・日本ケミファ・アメルの出荷調整リスト

日医工・沢井・東和・日本ジェネリック・日本ケミファ・アメルの出荷調整リスト




how-to-work