おじさん薬剤師の日記

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塗り薬 水虫

水虫の塗り薬を1日1回塗るだけで効果がでる理由について

投稿日:2018年7月31日 更新日:

水虫の塗り薬を1日1回塗るだけで効果がでる理由について

 

 

最近の水虫の塗り薬は1日1回塗るだけで殺菌作用が1日ずっと持続します。患者様からは「1日2~3回塗ったほうが効果的ですか?」と質問を受けたことが何度かありますが、「患部に塗った薬を洗い落さない状況下であれば1日1回で効き目が十分でます。」とお伝えしています。今回は水虫の塗り薬が1日1回塗るだけで効果がでる理由について調べてみました。

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1:マイコスポールクリーム発売前か発売後かで用法が変わる

 

水虫の塗り薬が発売された順番に並べてみます。

1965年:ハイアラージン外用液(軟膏)

1975年:エンペシドクリーム1%(外用液)

1980年:フロリードDクリーム1%

1982年:アデスタンクリーム1%

1985年:オキナゾールクリーム1%(外用液)

 

上記4製品について、足白癬・手白癬などの水虫に対しての使用回数は“1日2~3回塗布”“となっています。その翌年(1986年)に発売されたマイコスポールクリームから用法が変わります。

1986年:マイコスポールクリーム/1日1回患部に塗布する。

マイコスポールクリームは皮膚への浸透性が良好であるのに加えて、皮膚に長時間滞留するこが可能であるために1日1回塗るだけで、水虫に対する殺菌作用(カンジダに対しては静菌作用)を維持することが可能となった初めての製剤です。

 

その後、6年間水虫の塗り薬は発売されないことになります。それほどマイコスポールクリームの1日1回塗布という用法が革新的な用法であったことがうかがえます。これ以降、様々な水虫の塗り薬が発売されますが、“マイコスポールクリームの基準“をクリアすることがある意味”医薬品としての承認申請を受ける“ことと言ってもいいかもしれません。以下メンタックスクリーム以降に発売された塗り薬は水虫に対して1日1回の適応症となっています。

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athletes-foot

athletes-foot

1992年:メンタックスクリーム1%(外用液)

1993年:ニゾラールクリーム2%(ローション)

1993年:アトラントクリーム1%(軟膏・外用液)

1994年:アスタットクリーム1%(軟膏・外用液)

2005年:ルリコンクリーム1%(軟膏・液)

1993年:ペキロンクリーム0.5%

2000年:ゼフナートクリーム2%(外用液)

 

2000年に発売されたゼフナートクリーム2%を1日1回皮膚に塗った後の、持続時間(皮膚貯留性)について調べてみると

塗布12時間後:34.6㎍/g>24時間後:19.1㎍/g>48時間後:9.9㎍/g>72時間後:4.8㎍/g

 

上記のように、ゼフナートクリームは1回塗るだけで長期間皮膚に貯留する(効果が持続する)ことが確認されています。

以上のことを踏まえますと、水虫の塗り薬は1日数回塗布する意味がないことがわかります。むしろ水虫の塗り薬を塗るうえで意識すべき点は

・どのタイミングで塗るか

・どれほどの量を塗るか

 

ということになってくる気がします。

軟膏が皮膚から吸収されるまでの時間について

2:水虫の塗り薬を塗るタイミングについて

 

ここまでで、水虫の塗り薬は1回塗ると1日以上にわたって長く皮膚に貯留する(効きめが持続する)ことがわかりました。皮膚に塗った塗り薬は1時間後くらいに毛穴・汗腺経由で染みこみが開始し、2時間後あたりで角質層などの表皮層を通過します。水虫菌は角質に生息する生き物ですので、水虫の薬を塗ったあと最低でも2時間は患部に塗った薬が“拭き取られないこと“が一つのポイントになってきます。その後さらに2時間後(合計4時間後以降)には角質層内の薬の濃度が定常状態(濃度が均一になっている状態)となり、安定した殺菌作用が持続することとなります。

 

皮膚に塗った塗り薬の浸透を考えますと、“寝る前”に薬を塗って寝ることが患部への浸透率が一番高いように感じます。さらに付け加えますと、入浴後に患部の水気を拭き取り、薬を塗ったあと、速やかに寝ることが薬の効果を最大限に引き出すことができるように思います。

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3:水虫の薬を塗る量と部位について

 

患部に塗る水虫の薬の量は“薄く広く“が基本的な考え方です。ぱっと見では水虫っぽくない部分(赤み・かゆみ・ただれ・白いぷつぷつ・カサカサといった症状が見受けられない部分)にも水虫の薬を塗る必要があります。足の一部分に水虫症状が出ているケースにおいても、場合のよっては広範囲(足裏全体・指の間・足の縁)にまで薬を使用した方がよい場合があります。その際に、薬を使用する量は”薄く広く“です。イメージとしては両足の裏・指の間・指・足の甲あたりまで塗り広げる軟膏の量は5cmほど(1g)くらいです。水虫の塗り薬は1本10g包装の医薬品が多いので、足の裏全体に水虫が広がっている方の使用量としては1本10日という覚え方いいかもしれません。

まとめ

・水虫の塗り薬は1986年のマイコスポールクリーム発売以降1日1回の塗布で十分効果が出ることが承認基準となっています。

 

・水虫の塗り薬は塗布後に2時間以上(理想は4時間以上)患部に留まることが皮膚に染みこむために必要ですので、就寝前に塗ることが有用です。

 

・水虫の塗り薬を塗る量は“薄く広く”です。少なくとも目に見える範囲とその周辺も含めて、まんべんなく薬を塗り広ることが完治に向けてのポイントとなります。

手の爪白癬(爪水虫)が他人に感染する速度について

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執筆者:ojiyaku


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