ドライアイの治療にバレニクリン(チャンピックス)点鼻液を使用したユーモアのある治験が報告されておりましたので、概要を記します。
日本国内ではドライアイの治療と言えばヒアルロン酸点眼やジクアス点眼、ムコスタ点眼などの点眼液を使用することが通例で、十分効果が期待されます。「目が乾いたときは保湿の液を点眼する」という理にかなった治療方法です。
今回ご紹介するのは目が乾いている患者さんに「点鼻」をするという治験例です。
被験者:ドライアイと診断をうけた22歳以上の成人
人口涙液を使用しており、ドライアイ疾患特異的問診票(値が高いほどドライアイの率が高い)が23以上、シルマー試験(目じりに試験紙をはさみ、5分間放置した時、涙で試験紙が湿った長さを測定)が10㎜以下の方を対象としています。
被験者758名を3群に振り分け、1日2回各鼻腔に50μlの鼻腔内スプレーを4週間使用した治験例です。
1群:バレニクリン点鼻液0.6mg/ml(260名)
2群:バレニクリン点鼻液1.2mg/ml(246名)
3群:コントロール点鼻液(252名)
4週間使用後の有効性の指標としてはSTSが10㎜以上改善した患者の割合としています。
結果:目じりにはさんだ試験紙が10㎜以上湿っていた割合
1群:バレニクリン点鼻液0.6mg/ml:47.3%
2群:バレニクリン点鼻液1.2mg/ml:49.2%
3群:コントロール点鼻液:27.8%
バレニクリン点鼻液を使用することでドライアイが改善した被験者の割合が増えていることが確認されました。
有害事象:くしゃみ・咳・喉の炎症・注入部位の炎症を報告した割合
1群:バレニクリン点鼻液0.6mg/ml:97.3%
2群:バレニクリン点鼻液1.2mg/ml:99.2%
3群:コントロール点鼻液:62.9%
筆者らは、バレニクリン点鼻液が忍容性が高く、ドライアイ疾患の兆候および症状改善に意味があるとまとめています。
バレニクリンはニコチン性アセチルコリン受容体作動薬という分類の医薬品です。内服することで脳内の受容体に作用して、少量のドパミンを放出して、禁煙によるイライラ感やタバコを吸いたいという欲求を抑える効果が期待される製剤です。
これを吸入すると鼻腔内のニコチン性アセチルコリン受容体に作用して、受容体が活性化することで涙腺機能ユニットを刺激し、涙を分泌させる作用が期待されるということです。
私が上記の治験を読んだ時の最初の率直な感想は
「眼が乾いたなら目薬でいいじゃない。なにも無理して点鼻することはないよ」
です。
目薬が苦手という方はあまり耳にしたことがないので、点鼻の方がつらいような気もします。
ただ、メリットがないわけでもありません。
ヒアレイン点眼やジクアス点眼はドライアイに対しては1日6回使用するルールとなっています。
ムコスタ点眼でさえ1日4回点眼しなければならないルールです。
それがどうでしょう。
バレニクリン点鼻液ならば、1日2回の点鼻でよいのです。
メリットを強調するのであれば、こんな感じになるのでしょうか。
ただ、さすが投与方法が点鼻なだけあって、投与後のくしゃみや咳・鼻腔炎といった有害事象報告率が高い結果となていました。
医薬品として認可されるかどうかは不明ですが、ユーモアのある治験だなぁと感じました。