尿酸値を下げることができる食べ物・飲み物は?

尿酸値を下げることができる食べ物・飲み物は?


尿酸の排泄とアルカリ尿の関係:体内のバランスを守るしくみとは?

尿酸値が高いと痛風や腎障害のリスクが高まることはよく知られていますが、実際に尿酸はどのように体外へ排出されているのでしょうか?そして「アルカリ尿」がなぜ重要なのか?今回は、尿酸の排泄経路とアルカリ尿の役割について、わかりやすく解説します。


🧬 尿酸とは?どこから生まれる?

尿酸は、体内の細胞が代謝される過程で生じる「プリン体」が分解されてできる老廃物です。プリン体は食事からも摂取されますが、約80%は体内で自然に生成されます。

尿酸は血液中に溶けて運ばれ、最終的には腎臓を通じて尿として排出されます。ところが、尿酸の生成量が多すぎたり、尿への排泄がうまくいかないと、血中の尿酸値が上昇してしまいます。


🚰 尿酸の排泄経路

尿酸の排泄は主に以下の2つの経路で行われます:

排泄経路 割合 特徴
腎臓(尿として) 約70% 尿細管で再吸収と分泌が行われる。腎機能が重要。
腸管(便として) 約30% 腸内細菌によって分解され、一部が便中に排泄される。

腎臓が尿酸排泄の主役であるため、腎機能が低下すると尿酸値が上がりやすくなります。


🧪 アルカリ尿とは?なぜ重要?

「アルカリ尿」とは、尿のpHが7.0以上の状態を指します。通常、尿は弱酸性(pH 5.5〜6.5)ですが、食事や体調によって変動します。

尿がアルカリ性になると、以下のようなメリットがあります:

  • ✅ 尿酸が水に溶けやすくなり、排泄が促進される
  • ✅ 尿酸結晶ができにくくなり、痛風や尿路結石の予防になる
  • ✅ 腎臓への負担が軽減される

逆に、尿が酸性に傾くと尿酸が結晶化しやすくなり、関節や腎臓に沈着するリスクが高まります。


🥗 アルカリ尿を促す生活習慣

尿をアルカリ性に保つために摂取すべき食べ物は、主に野菜や果物、海藻など、カリウムやマグネシウムなどのミネラルを豊富に含むものです。これらのミネラルは、体内の酸性物質を中和し、尿のpHを上げる(アルカリ性に保つ)働きがあります。

具体的には、以下の食品がおすすめです。

野菜:

  • ほうれん草: カリウム、マグネシウムが豊富。

  • ブロッコリー: ビタミンCも豊富で、抗酸化作用も期待できます。

  • キャベツ: 食物繊維も豊富で、腸内環境を整える効果も。

  • きゅうり: 利尿作用があり、水分補給にも役立ちます。

  • 大根: カリウムが豊富で、消化を助ける効果も。

  • セロリ: 利尿作用があり、むくみ解消にも効果的。

果物:

  • バナナ: カリウムが非常に豊富。

  • りんご: マグネシウム、カリウム、食物繊維がバランス良く含まれています。

  • 柑橘類 (レモン、オレンジ、グレープフルーツなど): ビタミンCが豊富で、クエン酸も含まれています。クエン酸は、エネルギー代謝を促進し、尿をアルカリ性に傾ける効果があります。

  • メロン: カリウムが豊富。

  • スイカ: 利尿作用があり、水分補給にも役立ちます。

海藻:

  • わかめ: カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのミネラルが豊富。

  • 昆布: グルコン酸が含まれており、尿をアルカリ性に傾ける効果があります。

  • ひじき: 食物繊維、ミネラルが豊富。

その他:

  • 大豆製品 (豆腐、納豆、味噌など): カリウム、マグネシウムが含まれています。

  • 牛乳・乳製品: カルシウムが豊富で、尿をアルカリ性に保つことが報告されています。

  • ナッツ類: マグネシウムが豊富。

ポイント:

  • バランスの良い食事: 特定の食品に偏らず、様々な食材をバランス良く摂取することが大切です。

  • カリウムの摂取量: カリウムは尿をアルカリ性に保つために重要なミネラルですが、腎機能が低下している場合は、カリウムの過剰摂取に注意が必要です。医師に相談の上、適切な量を摂取するようにしましょう。

  • 水分補給: 水分を十分に摂ることで、尿の濃度が薄まり、尿のpHが上がりやすくなります。

また、尿pHを測定できる試験紙を使えば、食事の影響を確認しながら調整することも可能です。


📝 まとめ

尿酸は腎臓と腸管を通じて排泄されますが、腎臓からの排泄が主な経路です。尿をアルカリ性に保つことで、尿酸の溶解性が高まり、体外への排出がスムーズになります。これは痛風や尿路結石の予防にもつながる重要なポイントです。

日々の食習慣や水分摂取を見直すことで、尿酸値のコントロールは十分に可能です。体のバランスを整える第一歩として、アルカリ尿を意識した生活を始めてみませんか?

 

プリン体を多く含む食べ物としては「レバー、乾物(干物)、魚卵、」などがあります。

アルコールに関しては、ビールがプリン体が高いといわれます。含有量で言いますとビールに含まれるプリン体は高いです。しかし、アルコール自体に、体内のエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)の分解を促進する作用があり、ATPはプリン体の構成成分でもあるため、分解が進むとプリン体が増加し、結果的に尿酸が多く生成されることが報告されています。

つまり、アルコールは「体内でプリン体を増やすスイッチ」を押してしまうのです。

さらにアルコールは腎臓の尿酸排泄機能を低下させる作用があります。これにより、尿酸が体外に出にくくなり、血中に蓄積しやすくなりますので、飲みすぎには注意が必要です。

肥満になると尿酸値があがりやすくなるメカニズムが解明

追記:2025年6月13日

東京科学大学などの研究チームは、約37万人のビッグデータ解析と実験により、肥満やメタボリックシンドローム(メタボ)が尿酸値を上げやすいメカニズムを明らかにしました。

 

メタボで尿酸値が上がりやすい理由: 腎臓が尿酸を排泄する力が弱まるため。(尿酸の再吸収をおこなうタンパク質が増えるため)

腎臓で発現するURAT1というタンパク質が尿酸を再吸収することで尿への排泄を制限しているのですが、肥満に伴うインスリン抵抗性の増加や、食塩の摂りすぎが要因となって、URAT1の発現量が1.2倍程度まで増加し、尿酸排泄が制限され、血液中の尿酸値が上昇するという報告です。

メカニズム:

環境要因: 肥満によるインスリン抵抗性の増加、食塩の摂りすぎ

遺伝要因: 腎臓で尿酸を運ぶタンパク質「URAT1」の発現量(個人差あり)

遺伝子と環境の相互作用に関して、URAT1の働きが、遺伝的な体質と生活習慣の両方によって調節されるわけですが、特に、URAT1が多く作られやすい遺伝子を持つ肥満の人は、尿酸値が上昇しやすい傾向にあるというデータまとめられました。

腎臓の働き: インスリン抵抗性が高まると、腎臓からの尿酸排泄が減り、血中の尿酸値が上昇します。

意義

この研究により、痛風や高尿酸血症の個別化医療や新たな治療薬の開発が期待されます。

肥満だけでなく食塩摂取も尿酸値に影響を与えることが明らかになった点も重要です。

 

尿酸再吸収阻害薬「ユリス錠」について

追記:2020年11月15日

ユリス錠は尿酸排泄・再吸収に関わるトランスポーターに作用することで、体内の尿酸値を下げる効果がある薬剤です。

私たちの体に備わっている尿酸排泄・再吸収に関するトランスポーターには

URAT1:近位尿細管に発現しており、尿細管を流れている”尿酸”を体内に再吸収(尿として出ていこうとする尿酸を体内に取り込む)する作用があります

ABCG2:腎臓や腸管に発現しており、体内の”尿酸”を尿や便として体外へ吐き出す作用があります

OAT1、OAT3:腎臓に発現しており、体内の”尿酸”を尿中に吐き出す作用があります。

上記は尿酸に関連するトランスポーターなのですが、URAT1(尿酸の取り込みを阻害する蛋白質)だけを選択的に阻害することが、抗尿酸薬としては理想です。URTA1を阻害しつつABCG2やOAT1、OAT3も同時に阻害してしまうと、再吸収を阻害しつつ体外への排泄も阻害してしまっては意味がありません。

ユリス錠とユリノーム錠に関して、上記トランスポーターに対する作用の違いを調べてみました。

URAT1に対する阻害作用(IC50値)

URAT1の働きを50%程度抑える(阻害する)のに必要な薬物量を比較してみます(少なければ少ないほど効き目が強いこと意味します)

ユリス錠:0.0372μmol/L

ユリノーム錠(ベンズブロマロン):0.19μmol/L(ユリス錠の5倍)

 

上記の数値を見ると、ユリス錠が非常に少量でURAT1の働きを阻害(抑える)することができることがわかります。

少ない量で効果が高いということは、実際に飲む薬の量を減らすことができるため副作用の発現量を減らすことにも寄与します。

 

一方で体内にある尿酸を体外へ排泄させるトランスポーターに対する作用も比較してみると

ABCG2に対する阻害作用(IC50)(尿や便として尿酸を排泄する蛋白質)

ABCG2の働きを50%低下させるのに必要や薬物量を比較します(少ないほど、尿酸が排泄できない=よくない)

ユリス錠:4.16μmol/L

ユリノーム錠(ベンズブロマロン):0.289μmol/L(ユリス錠の14倍)

ユリス錠と比較して、ユリノーム錠が少量でABCG2の働きを阻害(抑える)することがわかります。

ABCG2は体外へ尿酸を排泄させる働きがあるトランスポーターですので

ABCG2に対する作用が強い=尿酸排泄できないことを意味します。

ユリノーム錠(ベンズブロマロン)は尿酸を尿や便として排泄する作用を14倍妨げていることがわかります。

 

OAT1に対する阻害作用(IC50)(尿として尿酸を排泄する蛋白質)

OAT1の働きを50%低下させるのに必要や薬物量を比較します(少ないほど、尿酸が排泄できない=よくない)

ユリス錠:4.08μmol/L

ユリノーム錠(ベンズブロマロン):3.14μmol/L(ユリス錠の1.5倍)

OAT1に対する作用が強い=尿酸排泄できないことを意味します。

ユリノーム錠(ベンズブロマロン)は尿酸を尿や便として排泄する作用を1.5倍妨げていることがわかります。

 

OAT2に対する阻害作用(IC50)(尿として尿酸を排泄する蛋白質)

OAT2の働きを50%低下させるのに必要や薬物量を比較します(少ないほど、尿酸が排泄できない=よくない)

ユリス錠:1.32μmol/L

ユリノーム錠(ベンズブロマロン):0.967μmol/L(ユリス錠の1.36倍)

OAT2に対する作用が強い=尿酸排泄できないことを意味します。

ユリノーム錠(ベンズブロマロン)は尿酸を尿や便として排泄する作用を1.5倍妨げていることがわかります。

 

以上のことから、ユリス錠は尿酸を再吸収を促すトランスポーターに作用して、再吸収(尿酸を体内に取り入れる作用)を妨げると同時に、尿酸を排泄させる蛋白質への作用は低い(尿酸を排泄させるタンパク質は妨げない)ことがわかります。

 

更に、既存の治療薬(ユリノーム錠)より服用量が1/10程度でよいため肝機能関連の副作用頻度も低いという利点もあり有益な薬剤であることがわかりました。

 

2020年1月23日、尿酸再吸収阻害薬「ユリス錠」が新医薬品として承認されました。そこで今回は現在販売されている高尿酸血症治療薬と「ユリス錠」との違いについてまとめてみました。

ユリス錠とは

腎臓において尿酸を再吸収するトランスポーター(URAT1)を選択的に阻害することで、尿酸の再吸収を抑制し、尿酸排泄を促すことで血液中の尿酸値を低下させる作用があります。

注意)重度の腎障害患者さん(特に乏尿・無尿の方)に関しては、有効性が期待できません。

 

同様の薬理作用の薬に「ユリノーム錠(ベンズブロマロン錠)」があるのですが、ユリノーム錠は「劇症肝炎等の重篤な肝障害による死亡例が報告されていることから、投与開始後少なくとも6か月間ははならず、定期的に肝機能検査をすること」が使用上の警告として記されています。

 

一方、2020年時点における「ユリス錠」の添付文書には肝障害に関する警告はありません。私の印象ですが、ユリノーム錠と比較した場合のユリス錠の一番のポイントは「肝機能関連の副作用が少ない事」のように感じます。

 

「肝機能障害患者に対しては、慎重な経過観察を行うこと。他の尿酸排泄促進薬では重篤な肝障害が認められている。」と記す程度にとどまっています。

ただし、ユリス錠の臨床試験段階において、重篤な肝疾患を有する患者および肝機能が100U/Lを超える患者は除外されているため、現状では何ともいいがたいかもしれません。

 

ユリス錠の効果

1日1回0.5mgから服用を開始して、2週間以降に1日1回1mgへ増量し、投与開始から6週間以降に1日1回2mgへ増量する(維持量は通常2mg(適宜増減))。

 

ユリス錠2mgとユリノーム錠50mgを服用した比較データ

被験者

ユリス錠服用群102人(服用前血清尿酸値8.9mg/dl)

ユリノーム服用群98人(服用前血清尿酸値8.92mg/dl)

14週間上記薬剤を服用した後の血清尿酸値6.0mg/dl達成率は

ユリス錠2mg服用群:86.27%

ユリノーム錠50mg服用群:83.67%

ユリス錠2mgとフェブリク錠40mgを服用した比較データ

被験者

ユリス錠服用群99人(服用前血清尿酸値8.61mg/dl)

フェブリク錠服用群100人(服用前血清尿酸値8.67mg/dl)

14週間上記薬剤を服用した後の血清尿酸値6.0mg/dl達成率は

ユリス錠2mg服用群:84.8%

ユリノーム錠50mg服用群:88.0%

 

国内におけるフェブリク錠の使用量に関しては、フェブリク10mg、20mgの使用量が圧倒的に多く、40mgを使用している患者さんは10mg・20mgの使用人数と比較すると1/10程度です(厚生労働省のNDBオープンデータより)。ユリス錠2mgがフェブリク錠40mgに対して非劣勢が示されたことは、ユリス錠が高尿酸血症治療薬として非常に有益な薬であるなぁと個人的には感じます。

ユリス錠を使用する際の注意点

尿酸を尿として排泄させる薬剤ですので、尿中の尿酸濃度が増加します。そのため尿が酸性に偏っている方の場合、尿路結石・血尿などの症状を引き起こす可能性があります。そのため、防止策として水分を十分に摂取して尿量を増加させること、尿をアルカリ性に保つこと(野菜や海藻類を食べる)などが対策例としてあげられます。

(尿をアルカリ性に保つ薬剤にはウラリット配合錠などがあります)

ユリス錠の剤形特性/薬物動態

・ユリス錠1mg、2mgには割線が入っています。(0.5mgには割線はありません)

 

・0.5mg、1mg、2mgすべての規格がPTP100錠包装のみの販売となります(2020年発売時点)

 

・ユリス錠の半減期が9.5時間ですので定常状態(薬安定して効き始める)に達するまでに2日程度かかります

 

・承認された最大投与量は1日1回4mgまで

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ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業