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SPトローチの静菌作用について/溶連菌に対しての効果は・・・

SPトローチの静菌作用について/溶連菌に対しての効果は・・・

喉の痛みでSPトローチが処方されることがあります。SPトローチは“静菌剤”という作用ですので、のどの痛み・炎症を取り除く効果はないのですが、菌をやっつけることで回復を早めるという効果が期待できます。トローチ剤を患者様へお渡しする際は「噛まずに舐めて使用してくださいね」という程度の説明をすることが多いのですが、以下にSPトローチの働きについてまとめてみました。

SPトローチの静菌作用について

SPトローチのインタビューフォームを読んでみると、臨床データではなく、試験管内の実験データとして黄色ブドウ球菌・β溶血性連鎖球菌・巨大菌といったグラム陽性菌に対して細胞膜を壊すことなく、細胞の中のタンパク質を固まらせることで菌をやっつける効果が確認されています。

SPトローチによる扁桃炎の治療についての報告

また、カンジタ菌というカビ(真菌)に対しても抗真菌作用(静菌作用)があることがインタビューフォームには記されていますが、実際の臨床ではもっと優れた薬がありますのでSPトローチがメインで使用されることがないかと思われます。

 

また、溶血性連鎖球菌に対しても、試験管内(in vitro)のデータでは最小発育阻止濃度6.25μg/mlと記されており効果があるように見えますが、ドイツの研究チームの報告によると小児の急性扁桃炎患者22人に対してSPトローチが投与された結果、連鎖球菌感染において喉の痛み・扁桃の赤みといった局所症状の改善が見られないという報告がありますので、溶連菌にSPトローチは効果なしかもしれません。

また、SPトローチは「噛まずに舐めて使用する」製剤ですが、実際に唾液中では抗菌力が若干低下するものの、十分な静菌作用が確認されています。SPトローチ噛み砕いて飲み込んでしまっては、口腔内の殺菌作用がなくなってしまいますので、SPトローチは舐めて溶かして溶けた液を口腔内に広めるようお伝えすることが有益です。

 

また、SPトローチは陽イオン界面活性剤としての性質で静菌効果を示しますので、食後すぐ(食べ物のカスが口の中に残っている状態)よりは歯を磨いてからSPトローチを使用するほうが、しっかりとした効果が発揮されるかと思います。

 

日本国内では使用歴はありませんが、海外ではSPトローチの成分10mgを含む膣錠剤が細菌性腟炎の治療剤として使用されていますので、グラム陽性菌に対する十分な効果が確認されています。

 

さらにアメリカではデカリニウム塩(SPトローチの成分)を含む抗寄生虫剤としてマラリアを治療するとしても使用されています。

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尚、SPトローチほどの処方頻度はないかもしれませんが、同様のトローチ剤であるオラドロールトローチ(ドミフェン臭化物)についても調べてみたところ、オラドールトローチもSPトローチ同様に陽イオン界面活性剤による殺菌作用を薬理作用とするトローチ剤ですが、細菌に対するはたらきは、細胞壁外膜及び細胞膜を急激に破壊することによる殺菌作用と記されています。

 

さらに、オラドールトローチはグラム陽性菌・グラム陰性菌・真菌・ウイルスに対しても強い殺菌作用を示すことが記されています。急性感染性歯科疾患において、オラドールトローチを2日間使用すると、口腔内の疼痛および炎症の有意な減少が報告されております。

歯科疾患に対するオラドールトローチの効果

 

SPトローチもオラドールトローチも咽頭炎・扁桃炎・咽頭乾燥などの疾患に対する効果は60~80%程度とされています。

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業