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アルツハイマー病の原因物質アミロイドベータたんぱく質の脳内蓄積量を血液検査で判別可能に

アルツハイマー病の原因物質アミロイドベータたんぱく質の脳内蓄積量を血液検査で判別可能に

 

「アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドベータたんぱく質の脳内蓄積状況を血液検査だけで推測する技術を開発した」という内容が科学雑誌natureに掲載されました。(2018年1月31日)

アミロイドベータたんぱく質の脳内蓄積状況に関する従来の検査方法には、アミロイドPETという方法があります。アミロイドPETとは放射性を出す検査薬を投与して、その脳内への蓄積状況を確認するという方法ですが、保険外の検査となるため10万円以上の費用がかかることが難点でした。それ以外の検査方法としては腰椎の間に針を刺して脳脊髄液を採取して検査する方法もありますがこの方法は患者様の身体的な負担となることが難点とされています。。

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どちらの方法もコスト面や患者様の負担を考えると、簡便な検査とはいえないかもしれません。

アミロイドベータたんぱく質の脳内蓄積状況を血液検査で推測

今回、雑誌natureに報告された方法は0.5mlの血液だけで測定できるとされていますので、これまでの検査方法と比較しても、非常に有用な方法であると私は感じます。

 

検査方法

 

血液中を流れるアミロイドベータたんぱく質の前駆体の断片の比率およびそれらの複合体から脳内に蓄積しているアミロイドベータたんぱく質量を予測するという方法です。

ここで、「アミロイドベータたんぱく質の前駆体の断片」という言葉について掘り下げます。

 

脳内に蓄積するアミロイドベータたんぱく質とは、それよりもおよそ20倍も長いタンパク質がもともとの形として存在します(これを前駆体と呼びます)。前駆体から断片として切り取られたアミロイドベータたんぱく質が脳内に蓄積してアルツハイマー病の原因となると考えられています。

 

今回natureに掲載された検査方法は、アミロイドベータたんぱく質を断片として切り出した後の残りの部分の量の比率を測定することで脳内に蓄積したアミロイドベータたんぱく質の蓄積量を推測しようという方法です。

 

具体的な記述内容としては、アミロイドベータたんぱく質が切り取られた残りの断片であるAPP669-711とAPP672-713(アミロイドβ1-42)との比率やAP672-711(アミロイドβ1-40)とAPP672-713(アミロイドβ1-42)の比率、およびその複合体から脳内のアミロイドベータたんぱく質の量を予測するという考え方です。

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イメージ

20mのロープがたくさんあるとします。その20mの中から必要な部分は1mだけなので、その1mを切り出してどんどん蓄積していきます。残りの19mは不要部位なので適当に切断して捨てようとおもったけれども、残りの19mの断片の数を調べてみると必要部分(1m)の蓄積している量が90%の精度でわかりそうですね、という検査方法の解釈かとおもいます。

アミロイドベータたんぱく質の前駆体(20倍の長さ)

実際の検査結果データ

 

対象:日本人121人(健常者、軽度認知症患者、アルツハイマー病患者を含む)

対象:オーストラリア人111人(健常者、軽度認知症患者、アルツハイマー病患者を含む)

結果:PETによる脳画像検査結果と血液検査データを比較したところ約90%の精度で一致し、アミロイドベータたんぱく質量を判定した。

 

アルツハイマー病はアミロイドベータたんぱく質が20年程度蓄積をつづけた結果で発症する疾患と考えられておりますので、血液検査によって早い段階で、その兆候が確認できれば、悪化防止につながる治療を先手先手で行うことができるのかもしれません。

 

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業