おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

認知症

アルツハイマー病の原因物質アミロイドベータたんぱく質の脳内蓄積量を血液検査で判別可能に

投稿日:2018年2月1日 更新日:

アルツハイマー病の原因物質アミロイドベータたんぱく質の脳内蓄積量を血液検査で判別可能に

 

「アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドベータたんぱく質の脳内蓄積状況を血液検査だけで推測する技術を開発した」という内容が科学雑誌natureに掲載されました。(2018年1月31日)

アミロイドベータたんぱく質の脳内蓄積状況に関する従来の検査方法には、アミロイドPETという方法があります。アミロイドPETとは放射性を出す検査薬を投与して、その脳内への蓄積状況を確認するという方法ですが、保険外の検査となるため10万円以上の費用がかかることが難点でした。それ以外の検査方法としては腰椎の間に針を刺して脳脊髄液を採取して検査する方法もありますがこの方法は患者様の身体的な負担となることが難点とされています。。

抗コリン薬の服用量が多いほど認知症リスクが増大する

どちらの方法もコスト面や患者様の負担を考えると、簡便な検査とはいえないかもしれません。

アミロイドベータたんぱく質の脳内蓄積状況を血液検査で推測

今回、雑誌natureに報告された方法は0.5mlの血液だけで測定できるとされていますので、これまでの検査方法と比較しても、非常に有用な方法であると私は感じます。

 

検査方法

 

血液中を流れるアミロイドベータたんぱく質の前駆体の断片の比率およびそれらの複合体から脳内に蓄積しているアミロイドベータたんぱく質量を予測するという方法です。

ここで、「アミロイドベータたんぱく質の前駆体の断片」という言葉について掘り下げます。

 

脳内に蓄積するアミロイドベータたんぱく質とは、それよりもおよそ20倍も長いタンパク質がもともとの形として存在します(これを前駆体と呼びます)。前駆体から断片として切り取られたアミロイドベータたんぱく質が脳内に蓄積してアルツハイマー病の原因となると考えられています。

 

今回natureに掲載された検査方法は、アミロイドベータたんぱく質を断片として切り出した後の残りの部分の量の比率を測定することで脳内に蓄積したアミロイドベータたんぱく質の蓄積量を推測しようという方法です。

 

具体的な記述内容としては、アミロイドベータたんぱく質が切り取られた残りの断片であるAPP669-711とAPP672-713(アミロイドβ1-42)との比率やAP672-711(アミロイドβ1-40)とAPP672-713(アミロイドβ1-42)の比率、およびその複合体から脳内のアミロイドベータたんぱく質の量を予測するという考え方です。

日本人のアルツハイマー病患者さんを対象としたメマリー錠の効果について

イメージ

20mのロープがたくさんあるとします。その20mの中から必要な部分は1mだけなので、その1mを切り出してどんどん蓄積していきます。残りの19mは不要部位なので適当に切断して捨てようとおもったけれども、残りの19mの断片の数を調べてみると必要部分(1m)の蓄積している量が90%の精度でわかりそうですね、という検査方法の解釈かとおもいます。

アミロイドベータたんぱく質の前駆体(20倍の長さ)

実際の検査結果データ

 

対象:日本人121人(健常者、軽度認知症患者、アルツハイマー病患者を含む)

対象:オーストラリア人111人(健常者、軽度認知症患者、アルツハイマー病患者を含む)

結果:PETによる脳画像検査結果と血液検査データを比較したところ約90%の精度で一致し、アミロイドベータたんぱく質量を判定した。

 

アルツハイマー病はアミロイドベータたんぱく質が20年程度蓄積をつづけた結果で発症する疾患と考えられておりますので、血液検査によって早い段階で、その兆候が確認できれば、悪化防止につながる治療を先手先手で行うことができるのかもしれません。

 

-認知症
-PET, アミロイドβ蛋白, アミロイドベータたんぱく質の, アルツハイマー病, 蓄積, 血液検査

執筆者:ojiyaku


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

関連記事

bace-1-verubecestat

アルツハイマー型認知症の治療薬候補“アミロイド前駆体タンパク質βサイト切断酵素1阻害薬(BACE1阻害薬)”の臨床試験中止データ

アルツハイマー型認知症の治療薬候補“アミロイド前駆体タンパク質βサイト切断酵素1阻害薬”の臨床試験中止データ   アルツハイマー型認知症治療薬として臨床試験が行われていた“アミロイド前駆体タ …

red-tab1

レミニール錠のジェネリック医薬品(ガランタミン)のメーカー比較

レミニール錠のジェネリック医薬品(ガランタミン)のメーカー比較 2020年6月にレミニール錠のジェネリック医薬品が発売されます。各社からガランタミン錠の添付文書が公開されていましたので、各メーカーから …

dementia-alchole-max-lisk

血圧が低いと認知症発症リスクが下がる/アルコール依存症は認知症発症の最大リスク要因

血圧が低いと認知症発症リスクが下がる/アルコール依存症は認知症発症の最大リスク要因 血圧が低いと認知症発症リスクが下がる 2019年8月20日追記 血圧を120mmHg未満に保つ場合と、血圧を140m …

nintisyo

リリーのケサンラ点滴静注(ドナネマブ)が国内で新薬に承認(2024/9/25)

リリーのケサンラ点滴静注(ドナネマブ)が国内で新薬に承認(2024/9/25) 日本イーライリリーはケサンラ点滴静注液350ml(ドナネマブ)が「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進 …

France-Dementia-treatment-drug

フランスで認知症治療薬が効果不十分&副作用が多いため保険適用外になる

フランスで認知症治療薬が効果不十分&副作用が多いため保険適用外になる   フランスの保険証は2018年8月1日から認知証治療薬アリセプト、レミニール、メマリー、イクセロン(リバスタッチ)の4 …

  google adsense




2023年12月発売予定のGEリスト(エクセルファイル)

2023年12月発売予定のGEリスト(エクセルファイル)

2023年4月薬価改定 新旧薬価差比較データ(エクセルファイル)

2022年4月薬価改定。新旧薬価差比較データ(エクセルファイル)

おじさん薬剤師の働き方

how-to-work

薬剤師の育成について

how-to-bring-upo

日医工・沢井・東和・日本ジェネリック・日本ケミファ・アメルの出荷調整リスト

日医工・沢井・東和・日本ジェネリック・日本ケミファ・アメルの出荷調整リスト




how-to-work