おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

認知症 高尿酸血症治療薬(痛風治療薬)

フェブリク錠とトピロリック錠(ウリアデック錠)の違いについて/尿酸値と認知症に関する仮説

投稿日:2019年5月17日 更新日:

フェブリク錠とトピロリック錠(ウリアデック錠)の違いについて/尿酸値と認知症に関する仮説

追記:2019年5月17日

尿酸値と認知症に関する仮説

尿酸値と認知症に関する興味深い仮説が公開されましたので追記いたします。

血清の尿酸には抗酸化力があり、ある程度の濃度があると認知症発症に対する保護効果があるのでは?という仮説がなされています。

(一方で、血清尿酸値が高すぎると、心血管リスクが上昇しますので血管性の認知症リスクが増悪するため、血清尿酸値が高すぎても良くないです)

スウェーデンの研究チームの報告によりますと、44年間にわたって1462人の女性における血清尿酸値と認知症リスク(年を取った時点での認知症リスク)について追跡調査した結果、関連性が確認されたという報告がなされました。

具体的には、「血清尿酸値が高い群」と「血清尿酸値が低い群」における認知症発症リスクを比較したところ、高い群は低い群と比較して発症リスクが19%低い結果となりました(被験者数=320人)。アルツハイマー病の発症リスクについては血清尿酸値が高い群が低い群と比較して、発症リスクが22%低い結果となりました(被験者=152人)。血管性認知症発症リスクについては、血清尿酸値が高い群が低い群と比較して、その発症リスクが33%低い結果となりました(被験者=52人)

血清尿酸値と認知症に関する報告(仮説段階です)

 

血清尿酸値に関しては、医療機関で「尿酸値が低すぎると〇〇ですね」という話は、あまり話題に出ない気がします。(低い方は治療の対象とならないためです)。以前、フェブリクを製造販売している帝人ファーマがスポンサーとなって行われた調査によると、尿酸値を4.5mg/dlまで厳格に管理すると腎機能低下リスクを軽減できるという報告がなされています(フェブリク40mgを飲み続けて尿酸値を厳格に管理する調査報告です)。この時の調査報告では、尿酸値の下限は血清尿酸値が2.0mg/dlを下回らないようにフェブリクの服用量が調節されておりました。

 

尿酸値の下限をどのように考えるかはわかりませんが、血清尿酸が認知症発症リスクに対して保護的な効果がある?(仮説段階です)のであれば、血清尿酸値を下げすぎるということは注意が必要なのかもしれません。

tufu

tufu

以下は2017年11月11日に記載いたしましたフェブリク錠とトピロリック錠の比較データについての内容です。

フェブリク錠とトピロリック錠(ウリアデック錠)の違いについて

高尿酸血症治療薬を使用している患者様の薬を調剤していると、高齢による腎機能低下のために腎排泄型の薬剤であるザイロリック(アロプリノール)から肝代謝型の薬剤であるフェブリクまたはトピロリック(ウリアデック)錠へ変更されることがあります。

今回はフェブリク錠とトピロリック錠(ウリアデック錠)の違いについて調べてみました。


フェブリク錠もトピロリック錠(ウリアデック錠)も尿酸を合成する酵素のはたらきを妨げることで尿酸の合成を抑える薬です。具体的にはフェブリク錠やトピロリック錠が尿酸合成酵素であるキサンチンオキシダーゼにくっつくことで、酵素の正常な働きを阻止します。

このとき、くっつく強さを示す指標にKi値(阻害定数)があります。Ki値が小さいほど、薬が酵素にくっつく強さが大きい(よく効く薬)と判断します。

キサンチンオキシダーゼ阻害薬による治療戦略

尿酸合成酵素であるキサンチンオキシダーゼは2つの形態を持ちます。
酸化型キサンチンオキシダーゼと還元型キサンチンオキシダーゼという2つです。

トピロリック錠のKi値

ザイロリック(アロプリノール)錠は還元型キサンチンオキシダーゼへの結合が強いという特徴があります。還元型キサンチンオキシダーゼに対する阻害定数は
Ki=560nmol/L
酸化型キサンチンオキシダーゼに対するザイロリックの阻害定数は上の値の1/1000というデータがありますのでおおよそ
Ki=560000nmol/L = 560μg/ml(単位変更)
と考えられます。

フェブリク錠は酸化型/還元型キサンチンオキシダーゼの両方に対して強い阻害作用があり
還元型キサンチンオキシダーゼに対する阻害活性 Ki=0.6nmol/L
酸化型キサンチンオキシダーゼに対する阻害活性 Ki=3.1nmol/L
どちらに対しても強い阻害活性を有していることがわかります

一方、トピロリック錠のインタビューフォームには酸化/還元キサンチンオキシダーゼについての区別は記載されておりませんでした。
キサンチンオキシダーゼに対する阻害活性=Ki=5.1nmol/L
どちらのキサンチンオキシダーゼかは分かりませんが、いずれにしてもアロプリノールより力価が高いことがわかります。
(上記データはウシミルクオキシダーゼに対して行われたIn vitro試験の結果です)

~作用時間~

フェブリク錠を反復投与したときの半減期:6.8~8.8時間 
トピロリック錠(ウリアデック錠)の半減期:6.26~7.98時間
あまり変わらないようです。
フェブリク錠が1日1回服用であるのに対してトピロリック錠が1日2回服用です。1回服用時の半減期がそれほど変わらないということは1日2回服用のトピロリック錠の方が血中濃度変化のバラツキが少ないと考えられます。

尿酸とメタボリックシンドローム

~食事の影響~
フェブリク:空腹時に比べて食後に服用するとAUCが18%低下した
トピロリック:空腹時に比べて食後に服用すると吸収速度が遅くなる。AUCは変化なし

~適応症~

フェブリク:「痛風・高尿酸血症」/「がん化学療法に伴う高尿酸血症」
トピロリック:「痛風・高尿酸血症」

~血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成率~
フェブリク20mg/1×:46.5%
フェブリク40mg/1×:82.9%
フェブリク60mg/1×:83.3%

フェブリクの臨床データ

トピロリック80mg/2×:35.5%
トピロリック120mg/2×:81%
トピロリック160mg/2×:87.5%
フェブリクの維持量は40mg/1×、トピロリックの維持量は120mg/2×ですので、どちらも維持量を継続服用すると80%以上の割合で血清尿酸値を6.0mg/dL以下に保つことができるデータとなっています。

~副作用発現頻度~

フェブリク:副作用22.2%、
トピロリック:副作用35.4%、重大な副作用として肝機能障害(2.9%)
トピロリックは副作用の発現頻度が高い印象です。特に重大な副作用として肝機能障害2.9%は見逃せない数値かと思います。お薬を使用している患者様の体調は継続的に確認する必要があります。

 

追記

1日服用量アロプリノール200mgあるいはユリノーム25mgからフェブリク20mgへの切り替えが尿酸低下作用で同等と考えられています。ユリノーム50mgからフェブリク40mgへの切り替えが同等と考えられています。

慢性腎臓病(CKD)を伴う高尿酸血症に対するフェブリク錠の投与例

高尿酸血症治療薬の薬物相互作用について

 

 

-認知症, 高尿酸血症治療薬(痛風治療薬)
-ウリアデック, トピロリック, フェブリク

執筆者:ojiyaku


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