アルツハイマー型認知症の治療薬候補“アミロイド前駆体タンパク質βサイト切断酵素1阻害薬”の臨床試験中止データ
アルツハイマー型認知症治療薬として臨床試験が行われていた“アミロイド前駆体タンパク質βサイト切断酵素1(BACE-1阻害薬)verubecestatの国際的な臨床試験結果が公開されました。
結果はverubecestatを飲むと認知症が進行する割合が高くなり、有害事象の発生率も高いという結果となり臨床試験が中止となりました。以下にその概要を示します。
BACE-1阻害薬”verubecestatの臨床データ
期間:2013年11月~2018年4月
被験者:50~85歳で脳アミロイド値の上昇がみられる患者
以下の症例数で104週(約2年間)の治療が終了し、認知機能の変化を確認しています。
verubecestat12mg服用群:234例(平均年齢71.7歳)
verubecestat40mg服用群:231例(平均年齢71歳)
プラセボ(偽薬)服用群:239例(平均年齢71.6歳)
評価は、臨床認知症評価スケール(CDR-SB)スコアを用いて評価しています。
点数が高いほどに認知機能が低下していると評価します。
結果
臨床認知症評価スケールの平均変化値
verubecestat12mg服用群:1.65
verubecestat40mg服用群:2.02
プラセボ(偽薬)服用群:1.58
プラセボ群と比較してverubecestatを服用した群で大きな値となっていますので、verubecestatを2年間飲むと認知機能の低下が示されました。
経時的なデータとしてはverubecestat40mgの服用を開始して13週・26週・52週の時点でプラセボ群と比較して認知機能の低下が示されております。
100人当たりの、アルツハイマー病による認知症への進行率
verubecestat12mg服用群:24.5
verubecestat40mg服用群:25.5
プラセボ(偽薬)服用群:19.3
というデータとなり、プラセボ群が良好なデータとなっています。
さらにverubecestatを飲むとプラセボと比較して以下の有害事象の発生率が高くなることがしめされました(有意差あり)。
皮膚湿疹(12mg群19.9%、40mg群20.9%、プラセボ群:12.8%)
睡眠障害(12mg群7.9%、40mg群9.1%、プラセボ群:4.5%)
まとめ
Verubecestatを服用すると認知機能が低下する可能性が示唆された。verubecestatの不況を開始して13週目から認知機能の悪化が確認され、それ以降は認知機能の進行が示された。この結果より、verubecestatがアルツハイマー病の認知機能の進行を加速させた可能性が示唆された。
MRIで評価した104週間後の海馬の体積は、プラセボ群で6.1%の減少、verubecestat群では6.5~6.7%の減少がしめされた。