おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

治験 認知症

アルツハイマー病の原因が解明か?脳内に咲く「毒の花」に不要蛋白質が蓄積(2022/6/12)

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アルツハイマー病の原因が解明か?脳内に咲く「毒の花」に不要蛋白質が蓄積(2022/6/12)

どうやらアルツハイマー病の原因が判明したようです。

インパクトファクター25前後の非常に影響力の大きな「Nature Neuroscience」にアルツハイマー病モデルマウスを用いた実験により、タンパク質の分解がうまくいかずに不要蛋白質が蓄積される経過が報告されました。

アルツハイマー病の原因はリソソームのpH異常が原因(マウスのデータ)

今回の報告では、以下の2つのワードがポイントとなりますので、先に単語の意味を記します。

・オートファゴソーム

細胞内で、異常な蛋白質、壊れた細胞内小器官、過剰な蛋白質、微生物などの不要物を包み込む球状の構造体

不要物を自身の球体に確保したオートファゴソームはリソソームと合体して、不要物質をアミノ酸レベルまで分解し、再利用します。

 

・リソソーム

自身の内側にpH5前後の酸性下して、様々な加水分解酵素を保有しています。リソソームのを形成する膜にはvATPaseと呼ばれる出入口が作られており、ここから水素イオンを取り込むことでリソソームの内側を”酸性”状態に維持しています。

オートファゴソームとリソソームが合体すると、リソソーム内に含まれた酸性・加水分解酵素により不要蛋白質が分解されます。

 

上記のオートファゴソーム・リソソームの働きを踏まえた上で、アルツハイマー病マウスの脳内状態を確認してみます。

アルツハイマー病マウスの脳内にあるリソソームの状態を確認したところ、vATPase活性が低下しており、リソソームの内側が酸性状態を維持できない状態でした。「酸性じゃないリソソーム」とオートファゴソームが合体したところで、オートファゴソームが取り込んだ不要な蛋白質を分解することはできません。

以下の写真をごらんください。蛍光ラベルされた黄色い点の集まりが確認できます。これが「酸性じゃないリソソームとオートファゴソームが合体したもの」の集合体です。

PANTHOS

PANTHOS

 

細胞核の周囲に「酸性じゃないリソソームとオートファゴソーム」の凝集体が付着し、花びらのような状態を形成していることがわかります。

筆者らはこの状態を「PANTHOS(毒の花)」と表現しています。

 

さらに、この凝集体の内部をしらべると、これまでアルツハイマー病の原因と考えられていた「アミロイドβタンパク質」が徐々に蓄積していることが確認されています。

「酸性じゃないリソソーム」はアミロイドβタンパク質が細胞外に沈着する4カ月以上も前から確認されていました。

 

以上のことから、アルツハイマー病の原因は「リソソームの内腔が酸性じゃなくなる」ことで細胞内の不要物質を分解することが出来なくなり、オートファゴソームと酸性じゃないリソソームが合体した凝集体が蓄積することが原因であることが示されました。

 

筆者らはリソソームの酸性化を管理するvATPaseの異常が本質的な原因であると捉え、リソソームpH障害を薬理学的標的とすることがアルツハイマー病の治療となりうると示唆しています。

 

生活習慣病とアルツハイマー型認知症の発症リスクについて

35歳以上の被験者を対象として、血糖値・血圧・脂質異常症のリスクと将来のアルツハイマー型認知症の発症リスクについての大規模疫学研究が報告されていましたので、以下に記します。

 

生活習慣病とアルツハイマー型認知症の年代ごとの発症リスク

被験者:4932人

35歳~50歳、51歳~60歳、61歳~70歳という3群に分類し、長期期間の観察を行って血糖値、血圧、脂質異常値がアルツハイマー病の発症リスクにどのような関係があるかを調査したデータです。

35~50歳群:35.2±8.9年間の追跡調査を行い、5.5%がアルツハイマー型認知症を発症しました。

35~50歳群におけるアルツハイマー型認知症との関連因子

善玉コレステロール(HDL-C)が15mg/dl高いごとにアルツハイマー型認知症の発症リスクが15%減少することが示されました。

中性脂肪の値が高いほど、アルツハイマー型認知症の発症リスクが高いことが示されました。

血糖値および拡張期血圧(下の血圧)とアルツハイマー型認知症との関連は見られませんでした。

 

51~60歳群におけるアルツハイマー型認知症との関連因子

善玉コレステロール(HDL-C)が15mg/dl高いごとにアルツハイマー型認知症の発症リスクが18%減少することが報告されました。

血糖値が15mg/dl高いごとにアルツハイマー型認知症の発症リスクが15%上昇することが報告されました。

中性脂肪および拡張期血圧(下の血圧)とアルツハイマー型認知症との関連は見られませんでした。

 

61~70歳群におけるアルツハイマー型認知症との関連因子

血糖値が15mg/dl高いごとにアルツハイマー型認知症の発症リスクが7%上昇することが報告されました。

拡張期血圧(下の血圧)が高いほど、アルツハイマー型認知症の発症リスクが上昇することが報告されまた(リスク比14%)

善玉コレステロールおよび中性脂肪とアルツハイマー型認知症の関連はみられませんでした。

 

以上の結果を受けて、将来の認知症のリスクを抑えるためには、30代のころからコレステロール値や中性脂肪の値に配慮する必要があるようです。

また、年代によって関連リスクが変化していることから、生活習慣病の予防は継続的に続けていくことが、将来のアルツハイマー型認知症の発症リスクを下げることにつながることが示唆されると筆者らは考えています。

脂質異常とアルツハイマー型認知症との関連報告としては、HDL(善玉コレステロール)は血管内のアミロイドβタンパク(認知症の原因と考えられる1つのタンパク質)を減少させ、アミロイドβによる血管内皮における炎症を抑えることが報告されています。また、アミロイドβタンパクの線維化を遅延させるという報告もあります。

血糖値とアルツハイマー型認知症の関連報告としては、高血糖状態が続くとアストロサイトを介した神経炎症・神経損傷を悪化させ、アルツハイマー型認知症のリスクを上昇させることが示唆されています。また高血糖状態はタンパク質の糖化をもたらし、マクロファージ遊走阻止因子の糖化および酸化を介して、自然免疫系の調節システムに影響を及ぼし、アルツハイマー型認知症を進行させる可能性があります。また、インスリン抵抗性が進むと、精神機能を悪化させ、脳内のインスリン取り込みが減少し、脳細胞間のシグナル伝達を阻害して、記憶に影響を及ぼす可能性が示唆されています。

 

ドネペジル経皮吸収型製剤を「興和」がライセンス契約、製造販売承認申請(2022/4/22)

アリセプトD錠の経皮吸収型製剤についての情報です。

ドネペジル経皮吸収型製剤について、興和薬品が独占的販売権に関するライセンス契約を締結しました。ドネペジル経皮吸収型製剤に関しては「帝国製薬」が2022年1月に厚生労働省に製造販売承認申請を行っておりましたが、興和薬品は帝国製薬の承認取得後に、上記のライセンス契約に基づき、国内での独占販売を開始するとしています。

認知症進行抑制に関しては、アリセプトD錠やそのGE錠が使用されていますが、嚥下困難や胃腸障害などの副作用によって治療継続が難しい方が多くおられます。

同一成分の貼付剤が発売されることは、治療の選択肢が増えることとなりますので、患者様にとって有益であると感じます。

興和薬品「ドネペジル経皮吸収型製剤」のライセンス契約締結

 

お昼寝の時間&回数とアルツハイマー型認知症の進行には双方向の関係がある

高齢者を対象として、お昼寝の時間・回数とアルツハイマー型の進行に関する興味深いデータを拝見しましたので、以下に概要を記します。

昼寝とアルツハイマー型認知症の関係について

参加者:1065(平均年齢:81.4歳、男女比:女性76.6%)

1日の平均昼寝時間:46.6分

昼寝の頻度(回数):1.8回(0.9回~3.35回)

夜の総睡眠時間:5時間40分

 

昼寝の判定方法

利き手ではない方の手首に測定器を着け、午前9時~午後7時までの間に、眠った時間・回数を「昼寝」と定義しています。(平均10日前後、上記の測定を行い、昼寝の平均値を算出しています)

 

昼寝に関するデータ

・昼寝の時間と昼寝の回数には正の相関があり、昼寝の時間が長い人は昼寝の回数も多いことがわかりました。

・昼寝の時間・昼寝の回数は年齢と正の相関があり、年を重ねるほど昼寝の時間・回数が増えることがわかりました。

・昼寝の時間・頻度について男女による性差はありませんでした。

 

調査データ開始時、1065人が参加し、そのうち812人は認知障害なし、209人が軽度認知障害、44人が認知症と診断をうけていました。

調査期間中に

「認知症障害なし」であった812人のうち384人が軽度認知障害を発症し、146人がアルツハイマー型認知症を発症しました。

「軽度認認知障害」であった209人のうち101人がアルツハイマー型認知症を発症しました。

 

調査期間中に、昼寝の時間は加齢とともに1年あたり11.31分増加が確認されました。非常に興味深いことに、軽度認知障害と診断をうけた被験者では1年あたりの昼寝の時間が24.66分の増加が確認されました(2倍)。さらに、アルツハイマー型認知症と診断をうけた被験者では1年あたりの昼寝時間が68.35分と6倍程度まで増加したことが確認されました。

 

同様に、昼寝の回数に関しても、加齢とともに1年あたり0.35回の増加が確認されました。軽度認知障害と診断をうけた被験者では1年あたりの昼寝の回数が0.67回へ増加し、アルツハイマー型認知症と診断をうけた被験者では1年あたりの昼寝の回数が1.25回へ増加したことが報告されました。

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昼寝の時間とアルツハイマー型認知症発症についてのリスクをデータ

・調査開始時点ではアルツハイマー型認知症ではなかった被験者のうち6年以内にアルツハイマー型認知症を発症した割合は24%であった

 

・1日1時間以上の昼寝(長時間昼寝)をする人は、1日1時間未満の昼寝(短時間昼寝)をする人と比較して、認知症発症リスクが1.4倍増加する

 

・1日1回以上昼寝をする人は、1日1回未満の昼寝をする人と比較して、アルツハイマー型認知症を発症するリスクが1.4倍増加した

 

・年を1歳とることで、認知症発症リスクは1.12倍に増える

 

筆者らは上記のデータを踏まえ、「アルツハイマー型認知症の進行が昼寝の時間・回数を2倍以上に増加させて老化を加速させると同時に、昼寝の時間・頻度が増加することがアルツハイマー型認知症の発症リスクをさらに高める」とまとめています。

つまり、「昼寝」と「アルツハイマー型認知症」は相互に症状を進行させる要因であると示唆しています。

ここで少し余談ですが、「昼寝をするから夜眠れなくなるのではないか」「夜に睡眠薬を飲んでぐっすり眠れれば、昼寝の時間を減らすことができるのでは?」といった改善策がイメージできそうですが、「昼寝とアルツハイマー型認知症」に関しては、そうではないようです。

 

被験者は調査期間中、手首に24時間にわたり測定器をつけて生活しており、昼寝時間だけでなく夜間の睡眠時間も計測されています。今回のデータの有用な点として「夜間の睡眠の量・質を調整したうえで、昼寝とアルツハイマー型認知症には相互相関がある」と結論づけている点です。

 

言いかえますと、夜間の睡眠状況の変化とアルツハイマー型認知症発症との直接的な関連は観察されなかったにもかかわらず、「昼寝の時間・回数の増加とアルツハイマー型認知症の進行には相互の関係が確認された」という点がポイントとなります。

 

筆者らは上記の理由として、アルツハイマー型認知症発症が進行すると、脳内におけるタウタンパク質の量が増し、覚醒促進ニューロンの病的損傷による覚醒不全が昼寝の増加を加速させるのではと記します。アルツハイマー型認知症や軽度認知障害の患者では、脳波計による微細な睡眠パターンが計測されるというデータも報告されており、「昼寝時間の延長」と「アルツハイマー型認知症の進行」は双方向の関係があるのではと示唆しています。

昼寝とアルツハイマー型認知症の関係について

 

メマンチンやドネペジル、ガランタミンなどの認知症治療薬を飲んでいる患者様のご家族から「お昼ご飯を食べた後、目を離すと昼寝をしています」「午前も午後もウトウトと昼寝をしています」といったお話しを伺うことが多々あるのですが、そのようなご家族の話を詳しく伺うと、「昼寝は何度もします。夜も眠れています。」という回答が多いように日ごろ感じていました。

 

「我慢できずに何度も昼寝をするが、夜も眠れる」のは脳に異常タンパク(タウタンパク・アミロイドタンパク)が蓄積したことによる「覚醒神経損傷」「覚醒ニューロンOFF」と考えると合点がいきます。

 

若いころに「今日は昼寝をしたから、夜に全然眠れない」といのは脳が元気な証拠なんだろうなぁと思い返しました。

頭痛と認知症の関係について

2001年~2020年までに公表された頭痛と認知症のリスクについての研究12件、46万5358例をたいしょうとした解析によると

頭痛歴はアルツハイマー型認知症のリスクを35%上昇させる

頭痛歴は血管性認知症のリスクを72%上昇させる

頭痛歴を有する女性は男性よりも認知症リスクが32%高い

頭痛が認知症の発症に関して、独立したリスク因子であることを示唆している

上記のメタ解析が報告されました。(2022/2/11)

頭痛歴と認知症発症リスクについて

アルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」の効果について

2022/1/13追記)

米国公的医療保険を管轄するCMSは2022年1月11日に、エーザイと米国バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」について、臨床試験参加者のみの保険適用を認める指針案を発表しました。

これにより「アデュカヌマブ」の公的保険適用が一部の人に限られることとなるため、普及の妨げとなるみこみです。

今回の決定は暫定的なものであり、30日間のパブリックコメントを募る期間が設けられております。最終決定は2022年4月11日に下される見込みです。

アデュカヌマブの承認申請に関しては、承認された当時から効果について疑問の声があがっていました。

 

以下は2021年10月に記載した記事です

軽度アルツハイマー病患者に対しては4週に1回アルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」を投与したデータが公開されました。

投与量は低用量(3~6 mg/kg)または高用量(6~10 mg/kg)のいずれかとして、4週に1回静脈内投与がおこなわれました。最大で1年半(20回)の投与を行ったEMERGE試験の結果です。

アデュカヌマブを1年半投与した臨床データ開示

アデュカヌマブを投与することにより、患者1人当たり生涯にわたりる質調整寿命(QALYs)をプラセボと比較して0.65増加させることが確認されました。さらに、介護者のQALYsを0.09減少させることも報告されました。認知症治療は本人だけでなく介護者の負担も大変ですので、介護者の負担軽減が確認されたことは有益なデータと感じます。

 

また、アデュカヌマブの投与により、アルツハイマー型認知症に移行する生涯確率が低下し、中等度アルツハイマー型認知症へ移行するまでの期間は、プラセボ群が4.92年だったのに対して、アデュカヌマブを投与した群では7.5年に延長することが確認されました。

 

また、施設入所に移行する生涯確率に関しても、

アデュカヌマブを群:25.2%対プラセボ群29.4%

と低下しているうことが確認され、社会生活を送る期間の中央値が1.32年増加したことが示されました。

 

アデュカヌマブは現在アメリカにて医薬品として認可されておりますが(信憑性を疑う医療従事者もおります)、日本では認可されておりません。また年間の薬剤費が600万円を超える治療であるため、費用対効果および、医薬品として認可し続けることが妥当かについて検討が行われている製剤と私は解釈しております。

 

 

エーザイ「早期アルツハイマー病治療薬”レカネマブ”」を米国FDAへ段階的申請プロセス開始(2021/9/29)

エーザイはアルツハイマー病の治療薬「レカネマブ」について、米国FDAに対し、段階的申請のプロセスを開始したことを発表しました。迅速承認制度を活用するとしています。

同社が開発したレカネマブは、アルツハイマー病の一因と考えられている”可溶性アミロイドβ凝集体(プロトフィブリル)”(異常たんぱく質の凝集したもの)に対するヒト化モノクロナール抗体(異物と認識してくっつく抗体)という生物製剤です。

臨床Ⅱb相試験データ

アミロイドβの脳内蓄積が確認された早期アルツハイマー病患者856人を対象としたデータによるとレカネマブ10mg/kgを2週間に1ど、18カ月間投与したところ、PET画像にて脳内のアミロイドβ蓄積量がベースライン(投与開始時点)では平均1.37ユニットであったものが、0.306ユニットに減少し、被験者の80%以上で脳内アミロイド陰性化が確認されたとしています。

また、脳内アミロイドβ減少の程度と、アルツハイマー病の臨床症状の有効性評価(ADCOMS、CDR-SB、ADAS-cog)による悪化の抑制度合いは相関している発表しています。

エーザイが早期アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」をFDAへ早期申請

アルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」が米国で承認される(2021/6/8)

2021年6月7日、米国食品医薬品局「FDA」はアルツハイマー病治療薬として「アデュカヌマブ」を迅速承認しました。

アデュカヌマブとはアルツハイマー病の原因の一因と考えられる「アミロイドβ」を標的とする抗体医薬品です。アデュカヌマブを投与された被験者の脳内では、脳内のアミロイドβとアデュカヌマブ抗体がくっついて、マクロファージや好中球が「アミロイドβ+アデュカヌマ」を貪食する(食べる)ことにより、脳内のアミロイドβが除去されるという薬理作用を示します。

アルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」が米国で医薬品として承認される

 

早期アルツハイマー病患者を対象とした治験データによると、アデュカヌマブを投与した群では投与しなかった群と比較して約1年半後の認知機能の低下率が22%抑制されたことが示されています。

FDAは承認に際し、投与することでの効果を明確にするために、あらたなランダム化比較試験の実施を求めています。効果が確認されなければ、承認を取り消すことも視野にいれています。

投与量については、4週に1回、1mg/kgからスタートして10mg/kgへ徐々に増量していきます。半年ほどかけて維持量である10mg/kgへUPしていきます。

10mg/kgを維持量とした場合の年間薬剤費は日本円で613万4240円です(米国価格)。

早期アルツハイマー患者を対象と考えたとしても、日本の保険医療で、この医薬品を賄うと考えると恐ろしい金額にも思えます。

日本国内では2020年12月にバイオジェンが承認申請を厚生労働省に提出しています。

以下に、アルツハイマー病に対するアデュカヌマブの臨床データおよび、承認に至るまでの経緯を記します。

 

アルツハイマー病治療薬“アデュカヌマブ”を米国FDAが受理(2020/8/20)

米バイオジェンエーザイはアルツハイマー病治療薬候補「アデュカヌマブ」の申請がが米国食品医薬品局(FDA)に受理されたことを公開しました。

アルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」がFDAに受理される

 

アデュカヌマブの受理に関しては、優先審査の指定を受けており、審査終了目標日は2021年3月7日に定められています。

FDAは、迅速審査のもと、可能であればこの申請について早期に審査を完了する予定であると述べています。

アデュカヌマブは脳内のアミロイドβの除去を作用機序としており、臨床結果の改善をもたらすことが報告された薬剤です。

アルツハイマー病治療薬“アデュカヌマブ”を米国FDAへ申請(2020/7/8)

米バイオジェンとエーザイは7月8日、アルツハイマー病治療薬として臨床試験を行っていたアデュカヌマブ(抗アミロイドβ抗体)について、米国FDAへ医薬品としての申請を行いました。FDAは60日以内に申請の受理を判断する予定となっています。申請が受理された場合は、FDAによって承認審査が行われます。(承認が認可されれば抗アミロイドβ抗体としては初の医薬品となります)

 

臨床試験結果において、アデュカヌマブはアルツハイマー病における脳内アミロイドβを除去することで、臨床症状の悪化を抑制することが報告されています。軽度認知障害患者および軽度アルツハイマー病の患者を対象とした臨床試験では、アデュカヌマブ投与群において、記憶・見当識・言語などの認知機能悪化が有意に抑制され、金銭管理・家事(掃除・買い物・洗濯)や単独での外出などの日常生活動作の悪化抑制が確認されたと報告されています。

エーザイがアルツハイマー病治療薬アデュカヌマブをFDAへ申請

 

アルツハイマー病治療薬“アデュカヌマブ”が医薬品となりうるか?(2019/12/12)

 

米バイオジェンとエーザイが開発しているアルツハイマー病治療薬“アデュカヌマブ”は2019年3月時点では効果がない可能性があるとして治験が中止された経緯がありました。日本国内でも先が兼審査指定制度の対象品目の指定が取り消されていました。

血液検査でアミロイドβタンパク質の蓄積状況が90%の精度で確認できる

しかし、大規模データ(3285人)の解析を行った結果、高用量のアデュカヌマブ(10mg/kg)1カ月に1回投与した群がプラセボ群と比較して“23%の症状の悪化抑制”が示され、主要評価項目を達成したことが報告されました。

 

記憶などの認知機能や生活機能、家族や介護者からの情報をもとにした情報などの評価基準としては

MMSE(ミニメンタル試験):15%抑制

ADAS-Cog13:27%抑制

ADCS-ADL-MCI(家族・介護者からの生活情報):40%抑制

いずれもアデュカヌマブを投与した群で一貫して悪化抑制効果が示されています。

 

アミロイドプラーク沈着のイメージングではアデュカヌマブを投与した群はプラセボ群と比較して投与26週および投与78週時点でアミロイドプラーク沈着の減少が確認されています。アルツハイマー病臨床試験会議での報告によると、早期のアルツハイマー病患者らを対象にした治験データによると、薬を使用しなかった群(550人)に比べて、アデュカヌマブを使用した群(550人)では、約1年半後、認知機能の低下が22%抑制された。

aducanumab

aducanumab

アデュカヌマブによる主な副作用:頭痛症状

アデュカヌマブの臨床Ⅲ相試験報告概要

エーザイが早期アルツハイマー予防薬”BAN2401”の国内臨床治験開始(2021/1/24)

製薬大手のエーザイは早期認知症予防薬(注射製剤)としてBAN2401の国内臨床試験を行うことを公開しました。被験者は55~80歳の男女でアミロイドβタンパク質の脳内蓄積が確認されているものの、無症状の方を対象としています。2~4週に1回、4年間の投与による認知症発症率の違いが研究されます。

BAN2401とは

BAN2401はアミロイドβタンパク質の凝集体(認知症患者の脳内に蓄積しているタンパク質)に対するヒト化モノクロナール抗体です。BAN2401のイメージとしては、アミロイドβタンパク質に選択的にくっつく抗体という感じです。一般的に抗体がくっついたタンパク質は”異物”と認識されて、マクロファージによって貪食されます(マクロファージが処理・除去します)。BAN2401はアミロイドβタンパク質(神経毒を有すると考えられています)にくっついて、無毒化し、脳内から除去させることで、認知症の発症を遅らせることができるのでは?と考えられている化合物です。

(エーザイが、他方で研究しているアデュカヌマブとは異なります)。

臨床試験

世界1400人を対象として4年間の投与を行い新薬となりうるかについて研究が行われます。

被験者:アミロイドβタンパク質がの脳内に蓄積しているものの、認知症を発症していない無症候患者55~80歳の男女1400人をプラセボ群とBNA2401投与群にわけて調査されます

対象国:米国・日本・カナダ・オーストラリア・シンガポール・欧州

投与期間:2~4週に1回点滴、4年間(216週)

主要評価項目:アミロイドPET検査による脳内アミロイド蓄積変化

副次評価項目:タウPET検査による脳内タウ蓄積変化

この臨床試験は米国にて2020年7月14日に治験開始が行われており、日本では2021年2月に治験が行われる予定です。

 

一般的に、軽度認知障害が認められる10~15年ほど前の時点から、脳内にアミロイドβタンパク質が蓄積されていくことが報告されており、アミロイドβタンパク質の蓄積量がある一定量を超えた段階で、脳の萎縮・認知機能の低下が発症することが示唆されています。BAN2401の優れている点は軽度認知障害が確認される前段階でアミロイドβタンパク質の除去を可能にすることで、脳萎縮や認知機能低下を遅らせることが期待されている点です。

 

現時点での世界における認知症患者数は5000万人といわれていますが、2050年には約3倍の1億5000万人を超えることが試算されています。日本国内でも2025年には730万人が認知症患者となることが予想されており、認知機能の低下を早い段階で予防・遅延させることが、有益な治療方針となります。

早期認知症予防薬BAN2401の国内臨床試験開始

-治験, 認知症
-PANTHOS, アミロイドβ, アルツハイマー病, アルツハイマー病の原因, エーザイ, 効果

執筆者:ojiyaku


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