おじさん薬剤師の日記

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認知症

中国の製薬会社がアルツハイマー病の新薬“Oligomannate”を開発

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中国の製薬会社がアルツハイマー病の新薬“Oligomannate”を開発

 

2019年11月、中国の製薬会社“上海緑谷製薬”が軽度から中等度のアルツハイマー病治療薬“Oligomannate”を発売することが報道されました。新規作用機序のアルツハイマー病治療薬が発売されるのは17年ぶりです。

 

新薬“Oligomannate”=オリゴマナン酸は腸内環境での代謝異常を改善することで、アルツハイマー病の認知症スコアを改善することができる飲み薬です。腸内環境とアルツハイマー病ということで一見すると関係があるのかな?という疑問がわきましたので、詳しく調べてみました。

腸内環境とアルツハイマー病の関係について

 

腸内細菌は食事に含まれるたんぱく質を適切に代謝する働きがあるのですが、この代謝に異常が生じた場合、2種類のアミノ酸(フェニルアラニン・イソロイシン)の代謝がうまくいかず、血液中のフェニルアラニン・イソロイシン濃度が上昇してしまうことがマウスを用いた実験で報告されています。

 

さらに、血中のフェニルアラニン・イソロイシン濃度が高いマウスでは、脳浸潤末梢Th1免疫細胞の増殖・炎症ミクログリアの活性に寄与しており、アルツハイマー病患者(ヒト)における脳内の神経炎症の要因となっていることが報告されています。

 

Oligomannate(オリゴマンナン酸)とは

 

オリゴマンサン酸は腸内環境を改善し、フェニルアラニン・イソロイシンの代謝異常を修復することで血中のフェニルアラニン・イソロイシン濃度を低下させる働きがある治療薬です。マウスでの報告ですが、オリゴマンナン酸を投与されたマウスでは、脳Th1細胞の減少・ミクログリアの活性化を抑制に加えて、βアミロイド沈着・タウタンパクのリン酸化を減少させ、学習能力の低下を改善したことが報告されています。

 

注目すべきは、βアミロイドおよびタウタンパクの減少という部分です。βアミロイド・タウタンパク質はアルツハイマー病の原因ではないか?予想されているタンパク質の凝集です。この2つのタンパク質凝集を減少させることを目的として、各製薬会社が様々な研究を行っています。(モノクロナール抗体の開発など)

 

今回、中国で発売されるオリゴマンサン酸は直接的ではなく、間接的にβアミロイド・タウタンパク質のリン酸化を減少させている点が非常に興味深い点です。

oligomannate

oligomannate

中国における第三相臨床試験データ

 

被験者:軽度~中等度のアルツハイマー病患者818例

期間:36週間(252日)にわたりオリゴマンナン酸またはプラセボを服用しました。

 

結果:服用から4週間目より認知機能の改善が確認され、9カ月間(270日)の治療終了まで持続しました。

 

上記の試験で用いられた認知症スケールはADAS-Cog12 scoreという評価基準です。

0点~70点までの評価スケールで点数が高いほど認知症がすすんでいることを示しています。

 

オリゴマンナン酸を投与した群では、試験終了の36週時点でー2.7ポイントのADAS-Cog12スコアの減少が確認されました。プラセボ服用群は36週時点で-0.16ポイントの減少が報告されていますので、その差―2.54ポイントがオリゴマンサン酸による認知症改善効果ということになります。

 

ヒトの腸内環境は国や地域によって(食生活によって)様々に異なりますので、オリゴマンサン酸が、全世界のアルツハイマー病患者に同じように作用するかどうは不明ですが、まずは中国で発売された後の治療成績・効果について注目があるまるところです。

オリゴマンサン酸によるアルツハイマー病の治験データ

-認知症
-アルツハイマー病, オリゴマンサン酸, 中国, 治療薬

執筆者:ojiyaku


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