PTSD(心的外傷後ストレス障害)に対するメマリー錠(メマンチン)の効果について
心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患っている日本人女性10名を対象としたメマリー錠(メマンチン)の効果について報告がありました。症例数は多くはありませんが、有効性・忍容性に優れたデータが報告されておりましたので下記します。
げっ歯類(マウスなど)研究では海馬神経新生を増加させることが報告されており、恐怖記憶が形成した大人のマウスに週1回4週間にわたってメマンチンを投与し続けると、海馬神経新生の増加により恐怖記憶の忘却が促進されたことが確認されています。
(ヒトでの報告例はあまりありません)
今回の報告は日本人女性のPTSD患者10名を対象として、既存の治療薬にメマリー5mgを1日1回追加服用し、1週ごとに5mgを増加して、12週間服用を続けた時点におけるPTSDの重症度の変化を調査したものです。
メマリーの服用量
1日1回5mgからスタートして20mgまで増量可能というルールで臨床試験が行われましたが、12週時点(エンドポイント)における服用量は、ほとんどの患者が5~10mgの範囲内でした。
(20mg服用患者数:1名、15mg服用患者数:1名)
服用から12週時点でのPTSD重症度の変化
外傷後ストレス診断尺度(PDS)という指標でPTSDの重症度を評価しています。(値が大きければ重症度が高い)
治療開始前時点における被験者10名の平均PDSスコア:32.3±9.7
メマリー服用4週時点における被験者10名の平均PDSスコア:21.3±10.4
メマリー服用8週時点における被験者10名の平均PDSスコア:17.0±10.1
メマリー服用12週時点における被験者10名の平均PDSスコア:12.2±7.9
メマリー服用によりPDSスコアが32.3→12.2へ有意な改善が確認されました。
また侵入障害・逃避症状・過覚醒症状に関しても改善が確認されました。
被験者10名中6名が12週目にPTSD診断基準を満たさないまでに回復が確認されています。(寛解あり)
メマリー錠服用による副作用については、睡眠障害・眠気・体重変動・低血圧などの有害事象が確認されていますが、重篤ではないと報告されています。
PTSD症状を有する23~46歳の女性をターゲットとした報告でしたが、メマリーの服用量に関しては、1日1回20mgという量は多すぎる(許容量ではない)可能性が示唆されました。