おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

厚生労働省 診療報酬改定

ヒルドイド軟膏の負担金が増額。2024年10月から開始される長期収載品の選定療養の対象1095品目が公開、差額計算エクセルシートあり

投稿日:2024年11月16日 更新日:

2024年10月から開始される長期収載品の選定療養の対象1095品目が公開、差額計算エクセルシートあり

追記:2024年11月20日

選定療養が開始され、ジェネリック医薬品の普及率が拡大しています。

ヒルドイドの後発品のシェアは選定療養開始前の60%前後から80%まで拡大しました。先発医薬品の調剤金額は44%減少したことが報道されました。

また、モーラステープの後発薬品のシェアに関しても選定療養が開始されて10%アップしており、先発医薬品のモーラステープの調剤金額は2%減額されています。

 

 

追記:2024年11月16日

2024年10月から、調剤薬局で先発医薬品を希望された患者様の負担金が増額となる「選定療養」制度が開始されました。

日刊スポーツさんに、選定療養に関する記事を取り上げていただきました。

先発医薬品や後発医薬品を選ぶ権利は患者様にあります。後発医薬品の採用メーカーは、調剤薬局によって異なりますので、負担金の増額や、採用メーカーの特長について、ご質問がありましたら、ご利用の病院や調剤薬局にご質問なさってみてください。

 

厚生労働省は2024年10月から開始される長期収載品の選定療養の対象医薬品リストを公開しました。

総数は445成分、1095品目です。

長期収載品の選定療養とは、先発医薬品を希望する患者さんが、先発医薬品と後発医薬品の差額の25%を支払う制度です。先発医薬品を希望される患者さんにとっては医療費の増額となります。

ヒルドイドソフト軟膏やヒルドイドクリームなどは、一度に処方される量が多いため、負担金の増額が気になるケースも想定されます。

また、小児科では医療費助成が受けられるため、薬代は無料となるケースが多いですが、選定療養による負担金の増額分に関しては、支払う必要がありますので、小児科を受診して先発医薬品を希望された場合は、2024年10月以降、自己負担が発生します。

 

以下に、長期収載品の選定療養対象医薬品リストと、3割、1割負担の患者さんが先発機薬品を希望した場合の、負担額(円)の増額分をエクセルシートで作成しました。ご希望の方は以下よりダウロードしてください。

長期収載品とジェネリック医薬品との差額の4分の1を2024年10月から患者が払うルール(2023/12/21)

長期収載品への選定療養の導入をめぐる議論が決着しました。

長期収載品と後発医薬品の価格差の4分の1を患者さんの追加負担金とすることで合意しました。

医療機関や国民へルールを周知するために一定の時間が必要ということで、2024年10月から、このルールが適用されます。

対象医薬品は後発医薬品の上市後5年以上経過したもの、または後発品の置換率が50%以上のものとなり、約700成分が該当します。

さて、このルールにのっとっていくつかの薬について試算してみます。

ロキソニンテープ100mg:1枚当たりの薬価:21.4円

ロキソプロフェンNaテープ100mg:1枚当たりの薬価:17.1円

 

これまでロキソニンテープ100mgを63枚処方された方の薬剤料は

21.4円×63枚=1348円(10割負担の金額)

例えば1割負担の患者さんであれば130円、3割負担の患者さんであれば390円となります。

 

2024年10月以降は

21.4円×63=1348円(10割負担の金額)ここまでの計算は同じです。

21.4円(先発品の値段)ー17.1円(後発品の値段)=4円

4円×1/4=1円

1枚あたり1円が患者さん負担額に上乗せされます。ロキソニンテープ100mgが63枚処方されている場合は

1割負担の方で130円+63円、3割負担の方で390円+63円が支払額の総額と計算されます。

患者さんの負担額はあまり変わりませんね。

 

次に、てんかん治療薬「イーケプラ錠500mg」で同様に試算してみます。

イーケプラ錠500mg 1日2回 朝1錠、夕1錠 90日分処方された場合を考えます。

イーケプラ錠500mg:1錠当たりの薬価:138円

レベチラセタム錠500mg:1錠当たりの薬価:52円

 

イーケプラ錠500mg 180錠分の薬価は138円×180=24840円(10割負担の金額)

例えば1割負担の患者さんであれば2480円、3割負担の患者さんであれば7440円となります。

 

2024年10月以降の金額を試算します(2023年12月時点の薬価として計算します)

138円ー52円=86円

86円×1/4=21.5円

イーケプラ錠500mg1錠あたり21.5円の負担増となります。

上記のようにイーケプラ錠500mgが180錠処方されている場合は3870円の負担増となりますので、

1割負担の方であれば2480円+3870円、3割負担の方であれば7440円+3870円

となります。

先発品と後発品の薬価差が大きいこと、先発品の値段が高いこと、という2点を満たす場合、2024年10月以降の患者さん負担増はある程度のインパクトとなるでしょう。特に1割負担の方にとっては、驚かれえる方もいるかもしれません。

医療機関や薬局で患者様からクレームが出ないよう、ルールを改正するのであれば、国が率先して国民にルールの変更を周知してほしいものです。

長期収載品とジェネリック医薬品との差額を患者負担にする選定療養についての議事要旨(2023/12/18)

2023年12月15日、中医協総会が行われ、長期収載品の選定療養について診療側・支払側の発言の議事要旨が公開されました。

長島委員

長期収載品を使用した患者の自己負担引きあげは慎重に対応すべき。

先発品と後発品の薬価差が大きい場合、患者負担の変化もおおきくなるため、最初は4分の1程度の額として、患者への英ky項が少なるなるようにしたいと考える

 

森委員

同一薬剤でも薬剤によって選定療養となるケース、ならないケース、そもそも選定療養の対象となる薬剤、ならない薬剤が混在しており、それらの説明に現場での負担は薬剤の一部負担金が導入されたとおき以上に大きな負担となることが予想される。

出荷調整等の影響により薬局に在庫がない場合など、後発医薬品を提供することが困難な場合については、供給対象とすべきと考えますし、その班dなは薬剤師が行うべきと考えます。患者の負担増を最小限にとどめることが必要

 

池端委員

後発医薬品を促進することが目的であり、選定療養を聴取することが目的ではない。そのため選定療養の負担範囲はできるだけ少ない方がよい。4分の1が適当ではないかと感じています。薬局に後発品の在庫がない場合、当然これは選定療養の対象ではなく、保険給付の対象となるべき

 

同じ処方された医薬品が、A薬局、B薬局、C薬局おれぞれ選定療養になったり、ならなかったりする。あるいは時期によって今月は選定療養になったけど、来月はならなかったということが混在する可能性が高い。

松本委員

長期収載品と後発品の価格差の2分の1以下の範囲内で、患者が後発品を使用するインセンティブが働く水準とすべき。保険者としても、加入者に精度の周知を行う必要がある。患者の理解を得るための広報ツールの準備をよろしくお願いしたい。

 

鳥潟委員

後発医薬品の使用率に関して、限界が見えてきている状況と考えている。後発医薬品の供給不安をめぐる構造的課題の解決に向け、関連制度を大幅に見直すことを前提に、長期収載品と後発品の価格差はできる限り2分の1とする方向で検討を進めていただきたい。

 

飯塚委員

選定療養の負担の範囲について、選定療養の導入は、医療資源を特許切れの医薬品から革新的な新薬に配分するための重要な政策となります。資源の再分配が十分達成できる範囲、水準で実施をしていただきたい。

 

議事要旨を見る限り、選定療養の患者負担は2分の1と4分の1とで真っ二つに意見がわかれましたね。今後の動向も注視していきたいと思います。

 

長期収載品とジェネリック医薬品との差額を患者負担にする政府原案(2023/12/7)

長期収載品とジェネリック医薬品との差額を患者負担とする政府原案が開示されました。

厚生労働省の議員向け資料によると「銘柄名処方の場合であって、患者希望により先発品を処方・調剤した場合や、一般名処方の場合は、長期収載品の使用について、選定療養としてはどうか」という案が提示されてます。

つまり、ざっくりとした解釈では「患者希望ならば選定療養として差額を患者負担とする」という解釈です。

尚、医師が医療上の必要性を考慮して銘柄別処方(後発品への変更不可)とした場合は、保険給付の対象とする方針です。

医療上の必要性があると認められる場合については、処方段階で明確になる仕組みを検討するとしています。銘柄別処方の場阿においても、患者希望により長期収載品を処方・調剤した場合や、一般名処方で長期収載品を調剤した場合は選定療養となる方針です。

ただし、薬局で後発品の在庫がない場合、後発品の提供が困難な場合は保険給付の対象とする考えとしています。

選定療養の負担割合については、一定割合の案を提示しており「2分の1」「3分の1」「4分の1」の3案を挙げ、実際の患者負担がどう変わるかを検討しています。

選定療養の対象品目は上市後5年、または置き換え率50%以上を想定しており、成分数で900製品が想定さてています。

 

例えば1錠当たり100円の先発医薬品と、50円のジェネリック医薬品を選定療養で調剤する場合、窓口負担3割の患者さんを想定すると

ジェネリック医薬品希望の患者さんでは50×0.3=15円の支払い

先発希望の患者さんでは100×0.3+(50×0.25~0.5)=42.5~55円の支払いとなります

となります。

先発医薬品希望の患者さんは従来30円ですむところが42.5~55円へ増額となります。

3割負担の方で先発医薬品が1錠100円という想定で上記の負担増ですので、例えば30日処方の場合は

ジェネリック医薬品希望の方の場合15×30=450円であるのに対し、

先発医薬品希望の方の場合、令和6年度に選定療養制度か開始すると42.5~55円×30=1275~1650円という負担額となります

ジェネリック医薬品を選んだ場合と比較すると先発医薬品希望の方では負担金額が3~4倍増える試算となります。

薬局でお薬をお渡しする場合は、ジェネリック医薬品から先発医薬品かどちらを希望するか患者さんへ確認しておりますが、選定療養が制度化された場合は、負担金額の増額分を踏まえて、患者様へジェネリック医薬品へ変更希望を確認する必要がありそうです。

 

オーソライズドジェネリック(AG)の在り方について(2023/12/3)

2023年12月4日、厚生労働省は「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」を開催し、その中でオーソライズドジェネリック(AG)の在り方について議論を行いました。

AG薬は、いわるる先発メーカーの子会社等が先発品と同じ手法で作った「後発医薬品」であり、添加物や製造方法が同じ製品です。

AG薬を採用基準としている医療機関は53.4%、薬局が51.6%と言われており、AG薬の製造数量は年々増加しています。既にジェネリック医薬品が発売されている市場に、後追いでAG薬が発売されるケースも多々あります。

AG薬の意義としては、後発医薬品の供給不安が続く中で、安定供給を続けることができており一定の役割を果たしていると評価されてます。

一方で、「AG薬は形を変えた長期収載品依存である」という指摘も上がっています。また、本来であれば先発医薬品は特許期間中に新薬の売り上げっで開発費を回収するとともに、新たな新薬の創出に向けた投資を行い、後発品が販売された後は市場から撤退すること」と厚生労働省は述べています。

AG薬に関しては、研究開発型の収益構造はないとも述べています。

ただし、直近の後発医薬品供給不安が広がる状況下においては、AG薬の規制を行うことは困難であるため、AG薬の動向を注視するという内容でとどまっているのが現状での見解のようです

 

長期収載品の薬剤費を自己負担とする議論が白熱(2023/12/3)

後発医薬品を希望しない患者さんが先発医薬品を希望した場合、後発医薬品と先発医薬品との差額を患者さんに支払ってもらいましょう。というルールが厚生労働省でおおむね合意し、ルール作りがスタートしています。以下のそのルール作りにおける論点を記します。

尚、厚生労働省は2023年度内に基本的なルールの方向性を定めるとしていますが、制度の導入時期に関しては言及していません。

「先発医薬品を希望する患者さんに、後発医薬品と先発医薬品との差額を支払ってもらうこと」を以下の分では「選定療養」と表現します。

 

まず、厚生労働省は「医療上の必要性がある」と判断される場合は「選定療養」にせず、これまで通り先発医薬品を使用しても保険給付を続ける考えを示しています。

例えば、医師が長期収載品(先発医薬品)を処方して後発医薬品変更不可にチェックを入れた場合は、選定療養から除外する理由をレセプトに明記する方法が模索されています。医師が後発医薬品不可とする理由としては、患者希望であったり、症状が安定しているためなどの理由が考えられます。

一例では「てんかん」治療を行っていて、症状が安定している患者さんに対しては、無理に後発医薬品を推奨せず現在使用している薬(長期収載品)を続けるようなケースが想像されます。

 

また、長期収載品をどのタイミングで「選定療養」の対象品目とするかについては、「後発品が発売されて5年目」であるとか、「後発日の置き換え率が50%を超えたら」などのタイミングが提案されています。

また、後発医薬品の価格が3価格帯に分かれている現状においては、長期収載品と後発医薬品の薬価差も3種類生じてしまうわけですが、この場合の金額としては、

「長期収載品」ー 「一番値段の高い後発医薬品」=患者負担

となる意見がでていました。

上記以外で想定されることとしては、調剤薬局では「後発品が入荷できない」問題が継続的に発生しています。この背景としては後発医薬品メーカーの不正により正しい薬が作られていなかった過去をうけて、出荷再開の目処が立たずに市場の出荷量が減少している品目が多数存在することが要因として挙げられます。

このような状態で「選定療養ルール」が施工されてしまうと、後発医薬品を希望しているが入荷できないため先発医薬品でお薬をお渡しして、差額が患者さん負担となってしまい不満が爆発しますね。

また、生活保護世帯に対しては医療費負担がないわけですが、「先発品を希望する」生活保護世帯に対しては「選択療養ルール」が適応されるのか否かも興味があるところです。

いずれにしても、選定療養ルールを設けるのであれば、医療を受ける方へわかりやすい説明が必要と感じます。

長期収載品と後発医薬品との差額を患者負担とするルール(P.36)

 

長期収載品と後発品との差額を一部患者負担とするルールがおおむね合意(2023/11/10)

2023年11月9日、厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会において、長期収載品と後発医薬品との差額分について、一部を患者負担とするルールがおおむね合意されました。

厚生労働省は薬剤費について患者自己負担の見直し案として

・薬剤定額一部負担

・薬剤の種類に応じた自己負担の設定

・OTC類似薬の保険給付見直し

・長期収載品の保険給付の在り方の見直し

を提示していましたが、そのうちの一つ「長期収載品の保険給付の在り方の見直し」について議論を行いました。

長期収載品と後発品の差額分全てを患者負担とする「参照価格制」にすることに関しては、「患者負担が大きくなる」という反対意見がでたことから、どの程度を「患者負担」とするかは、今後の議論で詰めていくとしてます。尚、2024年度の制度改定でこのルールを実施するかについては未定としています。

選定療養費制度を使用すると法改正をしなくても、長期収載品と後発医薬品との差額分を患者から徴収できます。また患者負担割合をどの程度にするかの範囲設定についても現行制度で行えるということです。

 

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-厚生労働省, 診療報酬改定
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執筆者:ojiyaku

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