保険薬局の高度薬学管理機能の報告と薬剤師の需要ついて

保険薬局の高度薬学管理機能の報告と薬剤師の需要ついて

 

厚生労働科学研究成果データベースに「かかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携に関する調査研究」と題して“高度薬学管理機能”に関する内容と、今後の薬剤師の需要・供給に関する予測が記されておりましたので読んでみました。

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高度薬学管理機能を有する薬局

いわゆる薬局を機能別に3分類して、「地域密着型」「抗がん剤などの特殊な調剤ができる高度薬学管理型」「最低限の機能を持つ薬局」という分類が厚生科学審議会の部会で話し合われておりますが、その中の「高度薬学管理機能を有する薬局」の一端が報告されております。

 

高度薬学管理機能を担うために「プロトコール」に基づく薬物治療管理を多種類の経口抗がん薬に適用して、その有用性を評価・検討されております。

 

具体的な「薬物治療管理」として、外来で経口抗がん剤「テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤」や「ゼローダ」を投与された患者さんに対して、プロトコールに基づきかかりつけ薬剤師・薬局と医療機関が連携を行うことにより、副作用の早期発見・患者の安心・安全、医師の負担軽減などに役立たせることが目的です。

 

医療機関と保険薬局との合意で作成されたプロトコールに基づき、医師と共同して患者対応を行う。薬剤師が在宅治療中の抗がん薬治療患者に関してテレフォンフォーローアップを実施し、患者から聴取した副作用をグレード評価し、的確な患者対応を行う。

 

テレフォンフォローアップ後のトレーシングレポートを病院の連携担当薬剤師に連絡し、迅速な対応が必要な事項がなければ、電子カルテへスキャナ取り込みを行うといった内容です。

 

 

テレフォンフォローアップ内容

 

嘔吐・悪心

ノバミン錠またはお手持ちの吐き気止めを飲むむこと

おかゆなどの消化の良いものを選んで食べるように促す

積極的な引水を促す

 

下痢

ロペラミド2mgを服用し、2時間経過しても下痢が継続する場合は、再度ロペラミド2mgの服用を指示する。

水分をしっかりとるように促す(電解質飲料も推奨)

おかゆなどの消化の良いものを選んで食べるように促す

水分がとれない/下痢以外の症状がある/周りにも下痢の人がいる/48時間以内に生ものを食べた/抗菌薬を飲んでいる

上記の場合は受診を指示する

 

食欲不振

おかゆなどの消化の良いものを選んで食べるように促す

食べたいもの、食べられるものから食事を開始する

積極的な引水を促す

 

口内炎

デキサルチン軟膏などの所持があれば使用を促す

外来日まで遠い場合はOTCの使用について情報提供する

うがいを行い、口腔内を清潔に保つ

刺激物や熱いものを避け、柔らかいものを摂取する

「地域連携薬局」が2022年度の調剤報酬に加味されるかどうか
「地域連携薬局」が2022年度の調剤報酬に加味されるかどうか2021年8月に施行された「地域連携薬局」という施設基準につ...

手足症候群(HFS)・ざ瘡様皮膚

患部へのステロイド軟膏の塗布を指示

保湿対策

水仕事、刺激物の接触を避けるなど日常生活のセルフケアを確認

 

皮膚乾燥

保湿対策

 

爪囲炎

患部へのステロイド軟膏の塗布を指示

清潔の保持(洗浄)

保湿対策

水仕事、刺激物の接触を避けるなど日常生活のセルフケアを確認

保護やテーピングテープの指導を受けている場合はその尊守状況を確認

 

疲労

無理をせず安静にする

 

皮膚色素過剰

直射日光を避ける

肌に優しい日焼け止めの塗布

 

末梢神経障害

患者対応・一般的アドバイスなし

 

高血圧症

毎日の血圧の測定を依頼し、モニタリングする

 

上記のような患者対応のプロトコールに基づいて薬物治療管理を行い、かかりつけ薬局と病院が連携して副作用の早期発見など、医療の質の改善を目的として取り組みが行われています。高度薬学管理型の調剤薬局はこのような業務を継続的に行うことが求められるのかもしれません。

 

 

薬剤師の需要供給予測

 

2018年現在で37.2万人の薬剤師が供給されており、37万人の薬剤師が需要されております。病院・薬局・ドラッグストアなどの就職先によって需要供給バランスは様々かとは思いますが、2018年現在ではおおむね「需要=供給」という感じで推移しています。

 

薬剤師は1年間で9000~10000人が国家試験を合格して薬剤師免許を取得しますので、このままのペースで薬剤師が増えていくと、2021年から2022年あたりで「需要>供給」といった構図が予測されております。

 

薬剤師の将来需要予測

 

中小の病院では、新卒薬剤師の確保が十分に行えていない現状があり、薬剤師の売り手市場が続くことが予想されています。

 

調剤薬局に関しては、見かけ上は薬剤師が充足しているものの、交通の便が悪い地域など地域偏在は生じている。地域への定着性の低いため、実際の薬剤指数に比して不足感が高い。

特に転職率の高い薬剤師は管理薬剤師を避けたがる傾向にある。

 

小さな個人薬局は存続、継承が難しくなってくる。地域から必要とされる薬局を各自が実践していかなければ、資本力に押されて、残らなくなるのではないかと危惧されています。

 

ドラッグストア

調剤併設型店舗数が約80%、正社員のうち約40%が薬剤師で、年代別でみると、20~30代が最も多く男女比は1対1である。薬剤師の採用については、有効求人倍率が6倍で、1人あたり6社の売り手市場の状況にあり、この傾向はまだしばらく続くと思われます。

 

 

病院・薬局・ドラッグストアすべてに記されているのですが、多職種と連携して業務を行う必要があるために、コミュニケーション能力をいかにして高めていくかがポイントとなっています。知識に基づいたコミュニケーション能力の底上げが、どの分野で働くにしても課題としてあげられています。

保険薬局の高度薬学管理機能の報告と薬剤師の需要ついて

 

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