「地域連携薬局」が2022年度の調剤報酬に加味されるかどうか
2021年8月に施行された「地域連携薬局」という施設基準について、2021年時点では調剤報酬には影響しておらず、施設基準を満たしたからといって患者さん負担が増えることはありません。
実際、地域連携薬局の書類届け出先は「各保健所」であり、地域支援体制加算の書類提出先は「各厚生局」となっています。
2021年11月8日に財務省の財政制度分科会が議題としてあげた「社会保障について」という資料の中で「地域連携薬局」と「地域支援体制加算」について、”要件との整合性が明確でない。調剤報酬上の評価については、制度化された「地域連携薬局」に対して行うこととし、制度面の対応と調剤報酬上の評価とが相まって、かかりつけ薬局・薬剤師の発揮を促していくことが望ましい”
という見解をしめしました。
「地域支援体制加算」を算定している薬局は全国5万7950軒ある薬局の28%とされていますので、約16000軒の薬局が算定している加算です。
一方で「地域連携連携薬局」は2021年8月に出来上がった制度であり、要件を満たした薬局は全国で1500軒程度しかありません。
財務省としては「16000軒の薬局が加算点数38点を取るよりも、1500軒の薬局がとるべきだ」
ということを暗に主張しているという感じでしょうか。
上記はあくまでも、「財務省案」であり、厚生労働省がこれに対して反論することが常です。
しかし、「地域連携薬局」と「地域支援体制加算」は調剤薬局ではたらく薬剤師からみても「類似点が多い」と感じる制度ですので、「地域連携薬局」が次回以降の報酬改定で加算の対象となるかどうかは非常に注目が集まるところかと思います。
地域連携薬局・専門医療機関連携薬局の施設基準公開
2021年1月末に「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」の施設基準が公開されました。
調剤薬局を「地域連携薬局」・「専門医療機関連携薬局」・「何もしない薬局」という3区分に分けて評価しようという話題については、2019年3月に国会へ提出された案件であり、約2年の話し合いの元、法制化が行われ、2021年に入り施設基準が公開されました。
以下に公開されている詳細を記します。
地域連携薬局
2021年8月からスタートします。都道府県による認定制度の施設基準を満たす必要があり、地域の在宅緩和ケアを担う役割が期待されています。以下に施設基準を記します。
1:患者さんが座って服薬指導を受けることができ、間仕切り等で区切られた相談窓口がある(相談の内容が漏洩しないよう配慮された設備)
・必ずしもあらかじめ椅子を備え付けておく必要はない。
・他の利用者の待合場所とカウンターの距離を離す
・他の利用者の目線や動線に配慮した配置にする
・服薬指導の内容が他の利用者に聞き取られないよう配慮する
2:高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造であること。
・利用者の動線に手すりを設置する
・入口に段差がない
・車いすでも来局できる
3:地域包括ケアシステムの構築に資する会議へ参加する
・地域連携薬局として他の医療提供施設との連携体制を構築し、必要な情報提供に取り組むこと
・地域包括支援センターが主催する地域ケア会議
・介護線専門員が主催するサービス担当者会議
・地域の多職種が参加する退院時カンファレンス
など会議が該当します。
4:月平均30回以上、医療機関に勤務する薬剤師等に対して次に掲げる報告および連絡をした実績を有する
・患者さんの入院時に、入院前の服薬指導内容を医療機関へ提供する
・退院時カンファレンスに参加し、入院時の服薬情報や退院後の療養上の留意点等について必要な指示・情報提供を受ける
・患者さんの服薬状況や副作用の発生の有無などの服薬情報を医療機関に勤務する医師・薬剤師に提供する
・在宅医療における服薬状況等を把握し、医療機関に勤務する医師・薬剤師に提供する
上記の4例については、いずれかのみを行うのではなく、満遍なく実施することが望ましい
注意:患者さんの検査値のみの情報提供、お薬手帳の記載による情報提供、疑義照会は上記の30回にはカウントしません。
パブリックコメントより
質問:地域の他の医療提供施設に対する医薬品の適正使用に関する情報の提供実績には、特養等に対する処方内容の疑義照会も含めるのか。
回答:個別の処方内容の照会は、薬剤師が調剤にあたり確認すべき事項であり、当該対応は実績に含まれません。
5:他の薬局に対して報告及び連絡することができる体制
・薬剤服用歴・残薬などの服薬状況や副作用の発生状況等に関する情報を報告、連絡すること
6:地域の利用者に対し安定的に薬剤を供給するための調剤及び薬剤の販売業務体
・開店時間外の相談に対する体制
・休日及び夜間の調剤応需体制
・在庫として保管する医薬品を必要な場合に他の薬局開設者の薬局に提供する体制
・麻薬の調剤応需体制
7:無菌性剤処理を実施できる体制
・居宅等で療養を受ける利用者への調剤として無菌性剤処理が必要な薬剤が想定されるため、無菌性剤処理を実施できる体制を備えていること。
・自局または共同利用により無菌性剤処理を実施できるようにしておくことが望ましい
・日常生活圏域に無菌性剤処理が可能な他の薬局がない場合は、適切な実施薬局を紹介すること等の対応でも差し支えない
(ただし、その場合は紹介できる薬局をあらかじめ確保し、円滑に実施できるよう具体的な手続きを手順書等に記載しておくこと)
8:医療安全対策の実施
・薬局ヒヤリハット事例集・分析事業への参加
・製造販売業者による市販後調査への協力
など
9:継続して1年以上常勤として勤務している薬剤師の体制
・週当たり32時間以上、継続して1年以上常勤として勤務していること
・健康サポート薬局に係る研修を修了した者として終了証の交付を受けた常勤の薬剤師が半数以上いること
10:居宅等における調剤及び指導を行う体制
・月平均2回以上在宅を行っている
・複数の利用者が入居している施設を訪問した場合は、調剤の業務並びに情報の提供および薬学的知見に基づく指導を行った人数に関わらず1回とする
・同一人物に対する同一日の訪問は、訪問回数に関わらず1回とする
・高度管理医療機器又は特定保守管理医療機器の販売業の許可を受けている
上記が地域連携薬局の施設基準の概要となります。医療機関への情報提供が月平均30回以上、在宅回数が月平均2回以上、健康サポート薬局に係る研修修了者が半数以上といった複数のハードルが課せられています。
専門医療機関連携薬局の基準等
1:利用者が座って情報の提供及び薬学的知見に基づく指導を受けることができる個室その他のプライバシーの確保に配慮した設備を有すること
2:高齢者、障害者等の円滑な利用に適した構造であること。
3:抗がん剤治療に関する専門的な医療の提供等を行う医療機関との間で開催される会議に継続的に参加させていること。
4:過去1年間において、抗がん剤治療を受けている患者のうち半数以上の者の薬剤および医薬品の使用に関する情報について、医療機関に勤務する薬剤師そのたの医療関係者に対して報告および連絡した実績があること
5:開店時間外の相談体制、休日及び夜間における調剤応需体制、麻薬調剤応需体制がある
6:常勤薬剤師の半数以上が継続して1年以上常勤として勤務している
7:専門性の認定を受けた常勤の薬剤師を配置していること
・専門性の認定に関して、いかに掲げる基準に適合するものとして厚生労働大臣に届け出た団体であること
①学術団体として法人格を有している
②会員数が1000人以上である
③専門性の認定に係る活動実績を5年以上有し、当該認定の要件を公表している法人である
④専門性の認定を行うにあたり、医療機関における実地研修の終了、学術雑誌への専門性に関する論文の掲載又は当該団体が実施する適正な試験への合格その他の要件により専門性を確認している。
⑤専門性の認定を定期的に更新する制度を設けている
⑥当該団体による専門性の認定を受けた薬剤師の名簿を公表している
専門医療機関連携薬局については、現時点ではガン治療に関する薬局のみが対象となっております。外来がん治療認定薬剤師やがん薬物療法認定薬剤師などの認定が必要要件となっており、取得までに3~5年の実務が必要となります。
以下は2019年3月25日に記した内容です。
調剤薬局を機能別に3分類する案を厚生労働省へ提案
特定の機能を備える薬局の認定制度が閣議決定
2019年3月19日追記
特定の機能を備える薬局の認定制度の導入などを含む”医薬品医療機器等法(薬機法)”などの改正案が閣議決定されました。政府は改正案を今国会に提出し、せいりつを目指すことになります。以下に薬局関連の案について記します。
地域連携薬局
・入退院時の医療機関との情報連携
・在宅医療
・ついたてなどで患者のプライバシーに配慮した構造設備
・地域包括ケアに関する研修をうけた薬剤師を配置
専門医療機関連携薬局
・ついたてや相談スペースの設備などプライバシーに配慮した構造設備
・医療機関との治療方針の共有・合同研修実施
・専門性の高い薬剤師の配置
・がんなどの専門的な薬学管理に関して、他の医療提供施設と連携して対応
上記の機能を有する薬局は都道府県知事の認定により機能別の名称表示を可能とし、更新は1年ごとに行うとされています。
薬剤師による服用期間中のフォローアップ
薬剤師による患者の服用期間中のフォローアップの義務化が薬機法と薬剤師法で明記されます。薬剤師に対して、調剤時だけでなく、服用期間中の継続的な薬学管理が義務付けられ、得られた患者情報や服薬指導内容などのを記録することも義務化する(現場の負担がふえないよう配慮あり)
薬剤師の監督下で薬剤師以外のものが実施する業務
薬剤師業務の効率化を踏まえ、薬剤師自らが実施すべき業務と薬剤師の監督下で薬剤師意外の者が実施できる業務について、有識者の意見を参考に整理する
上記以外には医薬品関連として、添付文書の製品への同梱廃止と電子化、医薬品などの直接の容器・被包・小売用包に標準化規格に基づくバーコード表示の義務化
以下は2018年11月8日「薬局・薬剤師の在り方」に関する厚生科学審議会での話し合いの概要です。
2018年11月8日、厚生科学審議会平成30年度第8回医薬品医療機器制度部会において、「薬局・薬剤師の在り方、医薬分業のあり方」について話し合いが行われました。
その中で調剤薬局を機能別に3分類する方針が決定され、厚生科学審議会の部会に提案されました。
調剤薬局を3分類
高度薬学管理型
プライバシーが確保された個室を配置
専門性の高い薬剤師の配置
抗がん剤など特殊な薬剤を確保する態勢
医療機関・薬局との連携体制の整備・研修の実施
(癌などの薬物療法を受けている患者に対し、医療機関との蜜な連携を行いつつ、高い専門性にも続き、より丁寧な薬学的管理や特殊な調剤に対応できる)
厚生科学審議会平成30年度第8回医薬品医療機器制度部会議事次第
地域密着型
他の薬局との輪番制による休日夜間の体制
訪問での服薬指導(在宅訪問の実施)
無菌調剤の態勢
プライバシーに配慮した相談スペース
入退院時の医療機関との情報共有・連携体制
麻薬調剤の対応
無菌調剤設備
一定の研修を終えた薬剤師の配置
(地域で在宅医療への対応や入退院時をはじめとする他の医療機関、薬局などとの服薬用法の一元的・継続的な情報連携において主体的な役割を担う)
最低限の機能を持つ薬局
上記の条件を満たさない調剤薬局
薬局・薬剤師のあり方、医薬分業のありかたについて
・平成29年時点で処方箋受取率(院外処方箋率)は72.8%に達しています
・調剤薬局の店舗数は平成8年時点では4万軒でしたが、平成28年時点では5万9000軒にまで増加しています。
・調剤薬局で勤務する薬剤師の人数は平成8年時点では7万人でしたが、平成28年時点では17万2000人にまで増加しています。
院内処方として医薬品を医療機関で受け取るよりも、院外処方として薬局で受ける取る方が、患者の負担額が大きくなるが、負担の増加に見合うサービスの向上や分業の効果などが実感できないとの指摘もあることが以前から話題としてあがっていました。
これらの背景を踏まえ、2014年に施行された医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)の改正を支持する声があがりました。(薬機法とは薬事法が改正されたものです)
この会議により「薬剤師が医薬品の服用期間を通じて必要な服薬情報の把握や薬学的見地に基づく指導を行うこと」を法令上義務付けることや「服薬指導でえられた情報を医師へ提供することを努力義務とすること」を法令上努力義務とすることも提案されています。
これらの背景を加味して、調剤薬局を機能別に3分類する案が浮上しました。今回の部会で提案された案については、2019年通常国会の医薬品医療機器法の改正案として提出され審議される見通しです。