財務省が考える令和時代の調剤薬局のありかたについて
2019年6月19日、財務省の財政制度等審議会において「令和時代の財政の在り方に関する建議(全314ページ)が公開されました。財務省が考える国家予算の使い方の指針のようなものかなぁと私は感じております。
病院や薬局が気にかけている2年に一度の診療報酬改定は「厚生労働省」が医師会等と話し合いの上で作成しており、財務省が提示する“案”がすぐに採用されることはない気がしております。しかし5年、10年といった長期的な視点で見ると、結果的に財務省案に近づく方向で診療報酬改定がなされているようにも感じることがあります。そこで「令和時代の財政の在り方に関する建議」の中から“調剤薬局関連”、“薬価制度関連”の内容を抜粋してみました。
ズラーっと読んでみて一番インパクトがあった文面は「病院の敷地内薬局の開設を推進すべき。」という一文でした。
財務省としては敷地内薬局はコストパフォーマンスが良いために「生き残るべき薬局」と考えているのかもしれません。
調剤薬局について
○薬剤師数は近年増加しており、国際的に⾒てもOECD諸国の中で最も多い。また、薬局の開設許可には需給⾯からの規制がなく、薬局数も増加。コンビニエンスストアの店舗数や郵便局、ガソリンスタンド(給油所数)よりも多い。
○通常の市場競争であれば、必要以上の供給増は収益の低下を招き調整が⾏われる。しかしながら、薬剤師数の増加により薬剤師⼀⼈当たりの処⽅せん枚数は減少している中で、調剤報酬の引き上げにより、薬剤師⼀⼈当たりの技術料が維持されている状況。
○調剤医療費のうち薬剤料等を除いた技術料部分の伸びは、医薬分業の進展による処⽅せん枚数の増加のみならず、処⽅せん1枚当たりの単価の増加により、⼊院医療費や外来医療費と⽐較して⼤きいものとなっている。
○調剤基本料は、基本的に集中率と処⽅せん受付回数に応じて設定されているが、2018年度診療報酬改定においてはいわゆる⼤型⾨前薬局に係る調剤報酬の引下げを実施。
○調剤料(内服薬)については、院内処⽅では投与⽇数や剤数にかかわらず1回の処⽅につき定額(9点︓90円)とされている⼀⽅で、院外処⽅では 投与⽇数や剤数に応じて点数が⾼くなるように設定されている。
○今⽇の業務の実態や技術進歩(PTP包装の⼀般化、全⾃動錠剤分包機の普及などの調剤業務の機械化等)を踏まえれば、調剤料の⽔準を全体として引き下げるとともに、投与⽇数や剤数に応じて業務コストが⽐例増することを前提にした調剤料の仕組みを⾒直すべき。累次の改定においても、こうした観点からの⾒直しはごく⼀部にとどまっており、更なる引下げを⾏うべき。
○薬剤師の業務を対物業務から対⼈業務中⼼へシフトさせていく中で、かかりつけ機能が必要となる患者の範囲やかかりつけ機能の評価⽅法なども含め、調剤基本料、調剤料及び薬学管理料といった調剤報酬全体の体系のあり⽅についても⾒直しを⾏っていくべき。
○薬局の多様なあり⽅や経営環境を踏まえた調剤報酬の評価を⾏う観点から、かかりつけ機能のあり⽅を改めて検討した上で、地域においてかかりつけ機能を担っている薬局を適切に評価する⼀⽅、こうした機能を果たしていない薬局の報酬⽔準は適正化が必要。その際、かかりつけ機能の評価 次第では受けるサービス以上に患者負担が増加することにも留意する必要。
○対物業務に関し、近年の技術進歩等を踏まえた投与⽇数や剤数に⽐例する調剤料設定の妥当性や、調剤業務のあり⽅の⾒直しによる業務効率化といった状況への対応も含め、引き続き調剤報酬の⾒直しを⾏っていくべき
・病院の敷地内薬局の開設を推進すべき。
薬価制度・保険制度関連
高額医療も含めた自己負担について、収入や資産に応じて変えるべき(高齢者も含む)。高額医療サービスの補助に ついて上限金額を定め、一定以上は自己負担比率を引き上げるべき
薬価引下げによって医療費を削減していては海外での開発にシフトし、国内で新たな開発が進まなくなる。
ジェネリック医薬品をさらに推進すべき
(使わない場合の診療報酬減算規定を設けるべき)。
OTC類似薬や有⽤性の低い医薬品の処⽅に係る⾃⼰負担率の引上げ、少額の外来受診に係る定額負担の導⼊介護の軽度者向け⽣活援助サービスに係る給付の在り⽅の⾒直し等
「⾼度・⾼額な医療技術や医薬品への対応」 医薬品・医療技術について、安全性・有効性に加え、費⽤対効果や財政影響などの経済性の⾯からの評価も踏まえて、保険収載の可否 も含め公的保険での対応の在り⽅を決める仕組みとしていくべき
新規医薬品や医療技術の保険収載等に際して、費⽤対効果や財政影響などの経済性評価や保険外併⽤療養の活⽤
⽣活習慣病治療薬の費⽤⾯も含めた適正な処⽅の在り⽅について検討。
薬剤⾃⼰負担の引上げについて、諸外国の薬剤⾃⼰負担の仕組み(薬剤の種類に応じた保険償還率や一定額までの全額自己負担など)も参考としつつ、市販品と医療⽤医薬品との間の価格のバランス等の観点から検討。
薬価制度抜本改⾰の更なる推進(費用対効果評価の本格実施に向けた検討(~2018年度末)、毎年薬価改定の対象範囲(~2020年中))
調剤報酬の在り⽅について、対物業務から対⼈業務への構造的な転換の推進やこれに伴う所要の適正化を⾏う観点から検討。
医療・介護分野におけるITの活⽤、労働⽣産性の向上
(ロボット・IoT・AI・センサーの活用等)。
これまでに取り組んできた主な事項 これまでに取り組んできた主な事項
○医薬品の適正給付(下記を保険算定の対象外)
・単なる栄養補給⽬的のビタミン製剤の投与(2012年度)
・治療⽬的以外のうがい薬単体の投与(2014年度)
・必要性のない70枚超の湿布薬の投与(2016年度)
今後の主な改⾰の⽅向性 今後の主な改⾰の⽅向性
⾼額医薬品や医療技術が登場し更なる医療費の増加が⾒込まれる中、⾼額医薬品や医療技術を引き続き収載していく場合には、「⼩さなリスク」について、
○薬剤の⾃⼰負担の引上げ ・医薬品の有⽤性に応じた保険給付率の設定 ・OTC医薬品と同⼀の有効成分を含む医療⽤医薬品の保険給付の在り⽅の⾒直し(保険外併⽤療養 費制度を活⽤する⼿法も検討)
○少額の受診等に⼀定程度の追加負担 かかりつけ医・かかりつけ薬局等への誘導策とし て負担に差を設けることも検討などまた、費⽤対効果の低い医薬品等については、保険外 併⽤療養費制度の対象としつつ、⺠間保険の積極的な活 ⽤を促進していくことも併せて検討
【改⾰の⽅向性】(案)
○医薬品・医療技術については、安全性・有効性に加え費⽤対効果や財政影響などの経済性の⾯からの評価も踏まえて、保険収載の可否も含め公的保険での対応の在り⽅を決める仕組みとしていくべき。
○保険収載とならなかった医薬品等については、安全性・有効性があれば保険外併⽤療養費制度により柔軟に対応するか否かの検討も⾏うべき。その際、経済性の⾯からの評価に⾒合う価格までは保険適⽤と同等の給付を⾏う新たな受け⽫の類型(保険外併⽤療養費制度の柔軟化)を設定すべき
改⾰の⽅向性】(案)
○薬剤の種類に応じた保険償還率の設定や⼀定額までの全額⾃⼰負担といった諸外国の例も参考としつつ、市販品と医療⽤医薬品とのバランス、リスクに応じた⾃⼰負担の観点等を踏まえ、薬剤の⾃⼰負担引上げについて具体的な案を作成・実施すべき。
○その際、保険外併⽤療養費制度の柔軟な活⽤・拡⼤についても併せて検討を⾏うべき。
〇調剤業務の需要に⾒合わない供給増(薬剤師や薬局数の増加)が⽣じた場合の調剤技術料の引下げ
○薬価制度の抜本改⾰ ・⾰新性・有⽤性に着⽬した新薬創出等加算の⾒直しや、費⽤対効果評価制度の本格的導⼊等を実施
○調剤報酬 ・いわゆる⼤型⾨前薬局に対する評価の適正化を実施
○薬価・調剤報酬 ・毎年薬価調査・毎年薬価改定の実施など薬価抜本改⾰の残された課題を着実に進めるとともに、調剤報酬についても薬局の多様なあり⽅や経営環境を踏まえた⾒直しを実施
改⾰の⽅向性】(案)
○薬価制度の抜本改⾰のうち、残された検討課題について、スケジュールに沿って着実に検討を進めていくべき。
○イノベーションの推進に向けて、様々な施策も活⽤しつつ、創薬コストの低減、製薬企業の費⽤構造の⾒直しや業界再編に取り組むべき
改⾰の⽅向性】(案)
○2021年度における薬価改定の対象範囲については、⾦額ベースで⾒て国⺠負担の軽減に⼗分につながることとなるようなものとすべき