ジャディアンスによる心臓・腎臓保護作用は服用中止後も効果が持続(2024/11/10)
SGLT2阻害薬、ジャディアンス錠の効果について
研究の背景:
ジャディアンス錠が、慢性腎臓病(CKD)の患者さんに良い影響を与えるかを調べるため、オックスフォード大学の研究チームが「EMPA-KIDNEY試験」を行いました。
慢性腎臓病に対するジャディアンス錠の腎保護作用は、服用中止後も継続する
研究の内容:
慢性腎臓病患者さんを2つのグループに分け、1つのグループにはジャディアンス錠を、もう1つのグループには偽薬(プラセボ)を投与し、その効果を2年間調べました。
さらに、その後の2年間は薬の投与を止め、患者さんの様子を観察しました。
結果:
試験中、ジャディアンス錠を投与されたグループは、病気の進行や心臓の問題が少ないという結果がえられました。具体的にはプラセボ群と比較して、ジャディアンス錠を飲んでいた群では、腎疾患進行または心血管死となる割合が、ハザードリスクが0.79(0.72~0.87)ということで、ジャディアンス錠を服用していた方がイベント発生リスクが低下することがしめされまあした。
- 統合期間中における腎疾患進行発生頻度はジャディアンス錠を服用群で23.5%、プラセボ服用群で27.1%
- 統合期間中における死亡または末期腎不全の複合発生頻度はジャディアンス錠を服用群で16.9%、プラセボ服用群で19.6%
- 統合期間中における心血管死の発生頻度はジャディアンス錠を服用群で3.8%、プラセボ服用群で4.9%
薬を投与しなくなってからも、ジャディアンス錠を投与されたグループは引き続き病気の進行速度や心血管リスクがが減少していました。
結論:
ジャディアンス錠は、慢性腎臓病患者さんの腎臓・腎臓を保護する効果が期待されます。
さらに、薬の投与を止めた後も、最大12ヶ月間その効果が続くことが確認されました。
SGLT2阻害薬による腎保護作用の一端が解明(2024/11/3)
大阪大学の研究により、SGLT2阻害薬による腎保護作用のメカニズムの一端が解明されました。
SGLT2阻害薬ってなに?
SGLT2阻害薬は、糖尿病の治療薬としてよく知られているお薬です。このお薬は、腎臓で糖を再吸収するのを邪魔することで、余分な糖を尿と一緒に体外に出すはたらきがあるお薬です。
腎臓を守る?
最近の研究で、このSGLT2阻害薬が、糖尿病の治療薬だけでなく、腎臓の病気(慢性腎臓病:CKD)も悪化させないことがわかってきました。さらに、腎臓に急なダメージを受けた時(急性腎障害:AKI)にも効果があるかもしれないと考えられています。
なぜ腎臓を守れるの?
どうしてSGLT2阻害薬が腎臓を守れるのか、その詳しい仕組みはまだ完全には解明されていませんでした。今回の研究では、大阪大学の研究チームが、その謎を解き明かす手がかりを見つけました。
用語解説
- アルブミン: 血中にたくさん含まれるタンパク質。
- オートファジー: 細胞内の不要なものを分解してリサイクルするシステム。
研究内容
- 高脂肪食のマウス: 高脂肪食を食べさせると、腎臓の近位尿細管にリン脂質がたまって腎臓の内圧が高くなってしまいます。イメージとしては高脂肪食をたべたマウスでは腎臓にゴミが溜まってしまい、働きが悪くなってしまうという感じです。
- SGLT2阻害薬の効果: SGLT2阻害薬を飲ませると、腎臓内部の圧力が下がり、腎臓に溜まったゴミが減り、腎臓の働きが改善することがわかりました。
- オートファジーの大切さ: オートファジーというシステムがうまく働かないと、腎臓のゴミが溜まりやすくなってしまうことがわかりました。
- SGLT2阻害薬とオートファジー: SGLT2阻害薬は、オートファジーを助けることで、腎臓のゴミを減らしていると考えられます。
まとめ
SGLT2阻害薬は、腎臓内部の圧力を下げるとともに、オートファジーというシステムを助けることで、腎臓を守っていると考えられます。この研究成果は、将来、腎臓の病気の治療に大きな進歩をもたらすかもしれません。
SGLT2阻害薬は痛風発作のリスクを低下させる(2023/9/10)
SGLT2阻害薬の使用が痛風発作の低下と関連しているという報告が米マサチューセッツ総合病院の研究で報告されました。
被験者:痛風発作を有する2型糖尿病患者
検討期間:2014年1月~2022年6月
比較試験として、糖尿病治療薬のDPP4阻害薬またはSGLT2阻害薬で糖尿病治療を行っている被験者において痛風の再発頻度を検証しています。
結果
痛風の再発リスク
SGLT2阻害薬服用群:1000人あたり年間52.4件
DPP4阻害薬服用群:1000人あたり年間79.7件
リスクハザード比としては0.66
となり、1年間で1000人あたりで言うとSGLT2阻害薬を使用している群の方が27人も痛風発作を回避していることになります。
また、痛風発作による救急外来を受診した頻度もSGLT2阻害薬服用群で半数程度(リスクハザード比:0.52)、リスク差は -3.4人でした。
副次評価項目として心筋梗塞の発症割合が検討されており、ハザード比は0.69、リスク差は年間で-7.6人となり、SGLT2阻害薬服用群で低リスクである結果が示されました。
尚、脳卒中リスクに関しては、ハザードリスクは0.81であるものの有意差は示されませんでした。
SGLT2阻害薬はケトアシドーシスを発症するリスクが3倍
糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬は血糖降下作用加えて心血管リスクを低下させることが報告されており非常に有益な薬剤です。一方で、糖尿病ケトアシドーシスを引き起こす可能性が高いとして注意喚起がなされております。
糖尿病ケトアシドーシスとは、本来身体は糖をエネルギー源として利用しているのですが、血液中の糖分が少なくなってくると、糖の代わりに脂肪を分解してエネルギーを作り出します。この時に「ケトン」という物質が副産物として作られて、血液中を流れるのケトン体(酸性物質)が増え、血液が酸性に傾くとともに「高度の脱水症状・口喝・嘔気・腹痛・呼気フルーツ臭」といった症状を呈します。
SGLT2阻害薬の服用によって生じるケトアシドーシスは異常高血糖を伴わないという特徴があります。
カナダの研究グループは、DPP4阻害薬とSGLT2阻害薬を比較した場合に糖尿病ケトアシドーシスを引き起こす率について以下のように報告しています。
2013年1月~2018年6月まで、SGLT2阻害薬またはDPP4阻害薬を使用した患者を対象としてケトアシドーシスで入院した割合を調べた結果
年間37万454人中、521人がケトアシドーシスで入院していることがわかりました。(年間1000人あたりの発生率は1.40でした。
SGLT2阻害薬服用群は年間1000人あたりのケトアシドーシス発症率:2.03人
DPP4阻害薬服用群では年間1000人あたりのケトアシドーシス発症率:0.75人
ハザード比は2.85となります。
(SGLT2阻害薬はDPP4阻害薬と比較して2.85倍ケトアシドーシスを引き起こす率が高いという意味です)
薬剤ごとに見てみると
カナグル錠:3.58倍
ジャディアンス錠:2.52倍
フォシーガ錠:1.86倍
(いずれも年齢・性別によるリスク関連はない)
尚、インスリン既往がある場合、SGLT2阻害薬を使用した際のケトアシドーシスを引き起こす率は2.24倍、インスリン既往がない場合では3.96倍と高くなっています。
SGLT2阻害薬は血糖降下作用に加えて心血管リスク低減作用もあり非常に有益な薬剤ですので初回処方がなされた際は服用における注意点をしっかりとお伝えする必要があると感じました。
SGLT2阻害薬での心血管リスク低下について40万人規模でのデータ報告(CVD-REAL2試験)
中東・北米・アジア太平洋(日本を含む)の6カ国40万人超の2型糖尿病患者さんを対象としてSGLT2阻害薬による心血管イベントリスクの低下に関する報告がありました(CVD-REAL2試験)
対象および方法:日本・韓国・シンガポール・オーストラリア・イスラエル・カナダにおけるレセプトデータベースを活用し、2型糖尿病患者さん(74%は心血管疾患の既往なし)にSGLT2阻害薬または他の血糖降下薬を使用した時の心血管リスク(全死亡、心不全による入院、心筋梗塞、脳卒中リスク)を評価しています。(各群23万5064例ずつ)
SGLT2阻害の薬使用薬剤割合
フォシーガ錠:75%
ジャディアンス錠:9%
スーグラ錠:8%
カナグル:4%
デベルザ錠/アプルウェイ錠:3%
ルセフィ:1%
SGL2阻害薬を他の血糖降下薬と比較した時のハザードリスク
全死亡:0.51
心不全による入院:0.64
全死亡もしくは心不全による入院:0.60
心筋梗塞:0.81
脳卒中:0.68