SGLT2阻害薬はケトアシドーシスを発症するリスクが3倍
糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬は血糖降下作用加えて心血管リスクを低下させることが報告されており非常に有益な薬剤です。一方で、糖尿病ケトアシドーシスを引き起こす可能性が高いとして注意喚起がなされております。
糖尿病ケトアシドーシスとは、本来身体は糖をエネルギー源として利用しているのですが、血液中の糖分が少なくなってくると、糖の代わりに脂肪を分解してエネルギーを作り出します。この時に「ケトン」という物質が副産物として作られて、血液中を流れるのケトン体(酸性物質)が増え、血液が酸性に傾くとともに「高度の脱水症状・口喝・嘔気・腹痛・呼気フルーツ臭」といった症状を呈します。
SGLT2阻害薬の服用によって生じるケトアシドーシスは異常高血糖を伴わないという特徴があります。
カナダの研究グループは、DPP4阻害薬とSGLT2阻害薬を比較した場合に糖尿病ケトアシドーシスを引き起こす率について以下のように報告しています。
2013年1月~2018年6月まで、SGLT2阻害薬またはDPP4阻害薬を使用した患者を対象としてケトアシドーシスで入院した割合を調べた結果
年間37万454人中、521人がケトアシドーシスで入院していることがわかりました。(年間1000人あたりの発生率は1.40でした。
SGLT2阻害薬服用群は年間1000人あたりのケトアシドーシス発症率:2.03人
DPP4阻害薬服用群では年間1000人あたりのケトアシドーシス発症率:0.75人
ハザード比は2.85となります。
(SGLT2阻害薬はDPP4阻害薬と比較して2.85倍ケトアシドーシスを引き起こす率が高いという意味です)
薬剤ごとに見てみると
カナグル錠:3.58倍
ジャディアンス錠:2.52倍
フォシーガ錠:1.86倍
(いずれも年齢・性別によるリスク関連はない)
尚、インスリン既往がある場合、SGLT2阻害薬を使用した際のケトアシドーシスを引き起こす率は2.24倍、インスリン既往がない場合では3.96倍と高くなっています。
SGLT2阻害薬は血糖降下作用に加えて心血管リスク低減作用もあり非常に有益な薬剤ですので初回処方がなされた際は服用における注意点をしっかりとお伝えする必要があると感じました。
SGLT2阻害薬での心血管リスク低下について40万人規模でのデータ報告(CVD-REAL2試験)
中東・北米・アジア太平洋(日本を含む)の6カ国40万人超の2型糖尿病患者さんを対象としてSGLT2阻害薬による心血管イベントリスクの低下に関する報告がありました(CVD-REAL2試験)
対象および方法:日本・韓国・シンガポール・オーストラリア・イスラエル・カナダにおけるレセプトデータベースを活用し、2型糖尿病患者さん(74%は心血管疾患の既往なし)にSGLT2阻害薬または他の血糖降下薬を使用した時の心血管リスク(全死亡、心不全による入院、心筋梗塞、脳卒中リスク)を評価しています。(各群23万5064例ずつ)
SGLT2阻害の薬使用薬剤割合
フォシーガ錠:75%
ジャディアンス錠:9%
スーグラ錠:8%
カナグル:4%
デベルザ錠/アプルウェイ錠:3%
ルセフィ:1%
SGL2阻害薬を他の血糖降下薬と比較した時のハザードリスク
全死亡:0.51
心不全による入院:0.64
全死亡もしくは心不全による入院:0.60
心筋梗塞:0.81
脳卒中:0.68