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腰痛に使う痛み止めの湿布と塗り薬の濃度について(2022/8/28)

腰痛に使う痛み止めの湿布と塗り薬の濃度について(2022/8/28)

患部の痛み止めには「湿布」がいいのか「塗り薬」がいいのか?

というご質問に対する回答は「人それぞれです」、「部位によって使い分けましょう」といった無難な回答としてます。

薬局での購入量から考えると「湿布」>「塗り薬」となっていますので、市場の規模から考えますと

メインで使用する痛み止め:痛み止めの湿布

であると私は感じています。

一方で

皮膚のかぶれ部位、膝などの稼働部位、人目につく首や肩:痛み止めの塗り薬

といった使い分けをすることが有益と感じています。

さて、ここまでが一般的なお話しです。

 

今回のテーマは「痛み止めで使う湿布と塗り薬の濃度」について記します。多少ギモンが残る内容となっておりますのでご配慮ください。

ボルタレン(成分:ジクロフェナク)について

ボルタレンゲル/ボルタレンローション

塗り薬のボルタレンゲル/ローションは1%製剤です。

 

ボルタレンテープ15mg/30mg

ボルタレンテープを皮膚に貼る粘着部分には痛み止め成分(ジクロフェナク)が含有されています。皮膚に触れる部分(有効成分を含み、適度な粘着力を有する)を「膏体(こうたい)」と呼びます。

ボルタレンテープ15mgの膏体に含まれる主成分:膏体1.5g(70㎠)あたり15mgが含有されています。15mg÷1.5g=0.01ですので、パーセント表示に直しますと1%となります。ボルタレンテープ30mgについても濃度は同様です。(30mg÷3.0g=0.01)

ボルタレンテープ15mg/30mgの膏体には1%の鎮痛成分が含まれていることがわかります。

 

以上のことからボルタレンテープとボルタレンゲル/ローションはどちらも皮膚に触れる部分の主成分(ジクロフェナク)濃度は1%であることがわかります。

私としては「特にギモンはありません」

 

患者様から「「ボルタレンテープ」と「ボルタレンゲル/ローション」はどちらが強い薬なの?」とご質問を頂いた場合の回答は

「含有する濃度は同じですので、使用直後はどちらも効き目は同じと考えます」

「効き目の持続時間に関してはテープ剤の方が長いですので、ボルタレンゲル/ローションで同程度の効果を期待するのであれば1日数回使用することをお勧めします」

 

ロキソニン(ロキソプロフェン)について

ロキソニンゲル/ロキソプロフェンNa外用ポンプスプレー

塗り薬のロキソニンゲル/ロキソプロフェンNa概要ポンプスプレーの濃度は1%製剤です

 

ロキソニンパップ/ロキソニンテープ

ロキソニンパップ100mgの膏体に含まれる主成分:膏体10g(140㎠)あたり100mgが含有されています。100mg÷10g=0.01ですので、パーセント表示に直しますと1%となります。

ロキソニンテープ100mgの膏体に含まれる主成分:膏体2g(140㎠)あたり100mgが含有されています。100mg÷2g=0.05ですので、パーセント表示に直しますと5%となります。

ロキソニンテープはロキソニンパップと生物学的に同等であることが証明されていますので、同じ効目です。

 

私としては「んっ?」となります。

ロキソニンパップとロキソニンテープについて、皮膚に触れる部分の主成分(ロキソプロフェン)濃度には5倍の差があります。しかしロキソニンパップ(1%)とロキソニンテープ(5%)はヒトが皮膚に貼った場合に血液中まで染み込む成分濃度(正確には活性代謝物濃度)が同程度であるため「同じ効目である」と日本国が承認しています。(アメリカやイギリスでは販売されておりません)

 

患者様から「ロキソニンテープ」「ロキソニンパップ」「ロキソニンゲル」はどれが強い薬なの?とご質問いただいた場合の回答は

「ロキソニンパップ、ロキソニンゲルの濃度はどちらも1%で同じですので使用直後の効き目は同じです」

「ロキソニンテープの濃度は5%であり、パップやゲルよりも濃度が高いように思えますが、皮膚にしみこむ主成分の効き目は同程度であることが確認されており効き目は同じです」

「持続時間に関してはロキソニンゲルを塗ってから6時間後の皮膚角層中の主成分濃度はロキソニンパップと同程度であることが報告されていますので、ロキソニンゲルを1日2~3回程度塗るとロキソニンパップと同程度の効果が得られると思います」

という回答となります。

注意)ロキソニンテープ(5%)とロキソニンパップ(1%)の効き目がなぜ同じなのか?に関しては、テープ剤とパップ剤のインタビューフォームが全く同じ内容であるため比較することができず、詳細を確認することができません。

sippu

セルタッチ(フェルビナク)について

フェルビナクローション

フェルビナク製剤については市販薬もあるため、さまざまな濃度の製品があります。

ナパゲルンローション3%

スミルローション3%

塗り薬(ローション)に関しては3%が主流です。

 

セルタッチ(フェルビナク)

セルタッチパップ70mgの膏体に含まれる主成分:膏体14g(140㎠)あたり70mgが含有されています。70mg÷14g=0.005ですので、パーセント表にに直しますと0.5%となります。

セルタッチテープ70mgの膏体に含まれる主成分:膏体2g(140㎠)あたり70mgが含有されています。70mg÷2g=0.035ですので、パーセント表示に直しますと3.5%となります。

セルタッチテープ70mgを1日2回貼付する場合とセルタッチパップ70を1日2回貼付する場合とで生物学的同等性が認められています。

また、セルタッチパップ70mgとナパゲルンローション(フェルビナク3%)とを比較したデータによると、筋肉痛の改善度合いについてセルタッチパップとナパゲルンローションは中等度以上の改善度合いが同程度であるというデータがセルタッチテープのインタビューフォームに記載されています。

 

ということで、セルタッチパップ(0.5%)とセルタッチテープ70mg(3.5%)とフェルビナクローション(3%)が筋肉痛に対して同程度の効果であると説明できます。

こうなってくると、皮膚に直接接触する主成分の濃度には、特に意味がないのかな?とも思えてきます。

 

フェルビナク製剤に関して、市販薬の濃度を見てみると

市販薬:フェイタス5.0(フェルビナク5%製剤)

市販薬:ロイヒ温湿布の膏体に含まれる主成分:膏体100gあたり700mgが含有されています。700mg÷100g=0.007ですので、パーセント表示に直しますと0.7%となります

市販薬:フェルビナクローション3%

市販薬:フェイタスローション3%

市販薬:エアーサロンパスDX:3%

という感じで、医療用医薬品の3.5%を超える「フェイタス5%」というテープ剤も販売されているようです。(ローション剤は3%が主流です)

 

貼り薬の濃度に関しては、セルタッチパップ(0.5%)とセルタッチテープ(3.5%)の「効き目が一緒ですよ」とインタビューフォームに記されている実情があります。セルタッチテープ3.5%とフェイタス5%がどの程度の差があるかと言われるとよくわかりません。

サリチル酸メチル製剤

サリチル酸メチルローション

スチックゼノールA:18.5%

市販薬:サロメチール(軟膏):1g中にサリチル酸メチル190mg+サリチル酸グリコール10mg:サリチル酸として20%相当

サリチル酸メチル含有湿布

MS冷湿布:の膏体に含まれる主成分:膏体100g(700㎠)あたり2gが含有されています。2g÷100g=0.02ですので、パーセント表にに直しますと2%となります。

サロンパス:膏体100中にサリチル酸メチル10g:10%

サロンパスA:膏体100中にサリチル酸メチル6.29g:6.29%

サロンパス30:膏体100g中にサリチル酸グリコール5g:5%相当

トクホン:膏体100g中にサリチル酸メチル7.3g:7.3%

クールリフェンダ:膏体100中にサリチル酸メチル1g:1%

ロイヒつぼ膏:膏体100g中にサリチル酸メチル6.7g:6.7%

 

上記のようにサリチル酸メチル製剤に関しては、軟膏・ローションタイプでは20%前後、湿布剤では5~10%前後の含有量が一般的のようです。

どれも同程度に効くのでしょう。。。。。

 

文頭に記しましたが、今回のテーマ「痛み止めで使う湿布と塗り薬の濃度」については”多少ギモンというかモヤモヤが残る内容”となりました。

皮膚の厚さは人それぞれ、皮膚から吸収される薬剤の量も人それぞれ、中程度に痛みが緩和されたと感じ割合も人それぞれ、含有する他の成分(メントール・カンフルなど)もそれぞれです。

私個人的な感想ですが「皮膚から吸収される痛み止め成分に関しては、数%程度の濃度さは誤差範囲なのかなぁ」という感じです。

 

 

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業