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湿布薬って海外では売られていないわけですが、本当に効果はあるのでしょうか?

湿布薬って海外では売られていないわけですが、本当に効果はあるのでしょうか?

アメリカやイギリスでは「痛み」に対しての対処は「飲み薬」や「患部を冷やす」といった対応が一般的であり、日本で頻繁に処方される「痛み止めの貼り薬」は医薬品としてありません。

西欧諸国で痛み止めの湿布が存在しない理由は「効果を証明するもの(エビデンス)がないから」です。いわゆる冷湿布をはって「冷っとして気持ちい」を求めるのであれば、患部を冷やせばいいだけの話であり、「鎮痛成分(NSAIDS)を含有している必要はないよね」ということになってしまいます。

そこで今回は「湿布薬って海外では売られていないわけですが、本当に効果はあるのでしょうか?」について、以下に私個人の考えを示します。

海外では湿布は無いけど「痛み止めの塗り薬」は少し販売されています

西欧諸国にて、皮膚に痛み止め成分「NSIADS」を貼って使用する習慣はないわけですが、塗るというルールは少しあるようです。

実際に、痛み止め成分「NSAIDS」を含有する塗り薬「cream/gel」を調べてみると

・イブプロフェンゲル10%(Ibuprofen 10% Gel)

・ジクロフェナクゲル1%(diclofenac gel1%)

といった製品が海外で使用されていることがわかります。

ということは、膝や足がいたと時に痛み止め成分「NSIADS」を患部に塗るということは、たまにあるのかもしれません。

とはいえ、NSAIDSの塗り薬に関する報告を「Pubmed」で調べてみましたが、報告件数は非常に少なく「ほとんどない」といって差し支えない例数と私は感じました。

 

この背景として、諸外国ではNSAIDSの飲み薬による胃腸障害の報告数が多いため、安易にNSAIDSを使用しないという風潮があるのかもしれません。

注意)「NSAIDS」の使用による胃腸障害の副作用頻度は用量依存的であり、使用すればするほど胃腸障害のリスクが高まります。アメリカではNSAIDS使用患者の10~20%に消化器症状が報告されており、年間に10万人以上が入院し、1万6500人が死亡していると言われています。

上記はあくまで、「NSAIDSの飲み薬」に関する胃腸障害報告についてですが、アメリカでは痛み止めをいっぱい飲むため、いっぱい副作用がでる状況であることがわかります。

 

では、塗り薬に関してはどのような用量設定があるのでしょうか、日本国内と海外での「ボルタレンゲル1%」の使用量について比べてみます。

日本でのボルタレンゲル1%の使用量

1日数回使用する

1回の使用目安

・肩・ひじ・ひざ:2~3cm(1cm=0.3g換算で0.6~0.9g程度)

・腰:3~5cm(1cm=0.3g換算で0.9~1.5g程度)

また、インタビューフォームには腰背部(25cm×30mg)に1日3回、1回2.5g(8cm相当)を使用した場合と、1日1回、1回7.5g(25cm相当)を使用した場合で、同程度の血漿中濃度が確認されており、問題となる蓄積性は無いもと思われるというデータが記されています。

 

海外でのボルタレンゲル1%の使用量

足・膝・足首:1日4回、1回4g(13cm相当)を塗布し、患部にすりこむ。1日当たり16g(53cm相当)を超えないこと

手・手首・肘:1日4回、1回2g(6cm相当)を塗布し、患部にすりこむ。1日あたり8g(27cm相当)を超えないこと。

 

体に使用するトータルの最大使用量:1日32gまで

 

上記が日本国内および海外におけるボルタレンゲル1%の使用目安です。

 

私は日本の使用量が一般的と捉えているため、海外の使用量を見て「多いなぁ」と感じました。私はボルタレンゲル1本25gチューブを扱うことが多いのですが、膝が痛いからって25gチューブのうち16g(半分以上)を海外では1日で使ってしまうのかぁ・・・おおすぎません?と感じてしまいました。

それだけ使えば痛みは治まるのでしょうが、血中にしみこむボルタレンの量も多くなるでしょうから・・・継続していれば胃腸障害もでるかもなぁといった感想です。

pap

さて、ここで今回のテーマである「痛み止めの湿布が海外で売られていない理由」について、ボルタレンゲル1%とボルタレンテープ1%について個人的な考えを下記します。

(日本国内で販売されているボルタレンテープ製剤は1%です)

 

ボルタレンテープのインタビューフォームを確認したところ、ラットにおいてボルタレンゲル1%を1日4回(6時間ごと)塗布した場合と、ボルタレンテープを使用した場合とで、効果は同等であったという記載があります。(どちらも1日総量のジクロフェナクナトリウムとして0.5mg使用した場合)

上記の例を踏襲し、1日で使用するボルタレンの成分「ジクロフェナク」の量をテープ剤とゲル剤で同量とすれば効果も同程度と仮定して以下を考えてみます。

ボルタレンテープ30mg(1%)を1日1回24時間貼付した場合のジクロフェナクの量:30mgとします。(吸収されずに膏体に残存する成分量はわかりません)

ボルタレンゲル1%を1日4回、1回に2.5cm(7.5mg)を使用した場合のジクロフェナクの量は30mgとなります。

これでボルタレンテープ30mgとボルタレンゲル%の1日のジクロフェナクの使用量が同程度となります。

ここで、日本のボルタレンゲル1%の使用量を再度確認してみましょう。

1回の使用目安

・肩・ひじ・ひざ:2~3cm(1cm=0.3g換算で0.6~0.9g程度=ジクロフェナク量として6~9mg)

・腰:3~5cm(1cm=0.3g換算で0.9~1.5g程度=ジクロフェナク量として9~15mg)

となっていることから、上記の仮定で示しました”1回に2.5cm(ジクロフェナク量として7.5mg)”を使用することは日本における使用量に該当することがわかります。

つまり、ボルタレンゲル1%を1回に2.5cm(ジクロフェナク量として7.5mg)使用する国においては、ボルタレンテープ30mgも同程度に有効であることが示唆されます。

 

一方で、海外におけるボルタレンゲル1%の使用量を主成分「ジクロフェナクの量」として再度計算してみると

足・膝・足首:1日4回、1回40mg(13cm相当)を塗布し、患部にすりこむ。1日当たり16g(53cm相当)を超えないこと:ジクロフェナク量として160mg

手・手首・肘:1日4回、1回20mg(6cm相当)を塗布し、患部にすりこむ。1日あたり8g(27cm相当)を超えないこと。:ジクロフェナク量として80mg

 

どうでしょう。日本と比較して海外で1日に使用するジクロフェナクの量は3~5倍であることがわかるかと思います。

日本の「ボルタレンテープ30mg」と言う製品は24時間かけて30mgのジクロフェナクを貼付部位に届けるよう設計されています。

海外において、ボルタレンゲル1%を1日4回、1回にジクロフェナクとして40mgを塗布している方(1日トータルでジクロフェナクを160mg使用している方)にとって、ボルタレンテープ30mg(24時間にかけて30mgを染み渡らせる薬)は「効かない薬/弱い薬」と思うのではないでしょうか。

仮にですが、ボルタレンテープ160mg(24時間かけて患部にボルタレン160mgを染み渡らせる薬)が、試作されたとしたら、海外でボルタレンゲル1%を愛用いている方にとって”有益な貼り薬”となる可能性はあると私は考えます。

いかがでしょうか。上記が私が個人的に考える「海外でNSAIDS湿布が販売されていない理由、効果を証明するエビデンスがない理由」です。

海外ではおめにかかることはありませんが

ボルタレンテープ/ロキソニンテープ/モーラステープ/セルタッチパップ/カトレップパップ

などのNSAIDS含有湿布薬(テープ剤)を定期的に使用して鎮痛効果が得られている方は、「皮膚にしみこむ主成分の濃度」で効果があるということですから、もっと強い薬は必要ないとも言い換えることができます。

ボルタレンテープ/ロキソニンテープ/モーラステープ/セルタッチパップ/カトレップパップ

を貼っても「全然、腰の痛みが取れない」方は、患部を改善するための治療を行うか、生活スタイルを見直すか、より強い薬に切り替えるなどの対策が必要です。

最後になりましたが、今回のテーマ「湿布薬って海外では売られていないわけですが、本当に効果はあるのでしょうか?」の私の出した答えは

今使っている貼り薬で効果があれば、いいじゃない!

今使っている貼り薬で効果がないなら、治療方針を変えるか、使用薬剤を見直すか、使用量を増やすことを検討してみてはどうですか?

ということで、「その方次第でございます」ということで着地させていただきます。

 

 

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業