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心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)が公開

心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)が公開

 

心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)が2019年3月29日に発表されました。診療ガイドラインは、PDFファイル(全123ページ)で公開されておりますので閲覧可能です。

心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)

今回は、「心筋症治療」における治療薬について抜粋してみました。

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・非閉そく性肥大型心筋症ではβ遮断薬・カルシウム拮抗薬(ワソラン・ヘルベッサー)が肥大型心筋症の拡張障 害に起因する自覚症状を改善する対症療法として使用されるが,確立したエビデンスは多くない。

 

・β遮断薬は 心拍数の減少(陰性変時作用)によって拡張時間を延長し,運動時の頻拍に伴う左室拡張末期圧の上昇を抑制することが確認されているが、左室心筋障害(拡張相肥大型心筋症への移行)を抑制することはできず,生命予後の延長に結びつくエビデンスはない。

 

・β遮断薬はβ受容体サブタイプの選択性,内因性交感神経刺激作用(ISA)の有無,膜安定化作用( MSA)の有無,α遮断作用の有無により分類されている.β1選択性か非選択性のどちらがより適しているかは現在のところ明らかではないが,気管支喘息などの合併例ではβ1選択性のβ遮断薬が好ましい。

 

・α遮断作用やISAを有しているものは適応とはならず,組織移行性のよいβ遮断薬の選択を考慮すれば水溶性より脂溶性が推奨される。

 

β遮断薬とCa拮抗薬のどちらを優先して使用すべきか、併用、単剤のどちらが有効かについて明確なコンセンサスは得られていない。

β遮断薬

・陰性変力作用および陰性変時作用を有しており,左室内圧較差を軽減する効果が期待される

・安静時の圧較差よりも労作時の圧較差を軽減する効果が期待できる

 

・通常,初回は低用量から始め,効果,副作用の点を十分考慮して,可能なかぎり最大投与量まで増加させることが望ましが、現実的には症例ごとに最終投与量を決めることになる

 

・明確なエビデンスはないが,α遮断作用(血管拡張作用)を有しないβ1選択性のβ遮断薬使用が望ましい

Ca拮抗薬

カルシウム拮抗薬は,β遮断薬が何らかの理由(副作用など)で投与できない症例に投与する。

 

ワソラン(ベラパミル)

・心筋細胞内カルシウム過負荷を抑制し,弛緩特性を改善する

・拡張早期の冠血流 改善により,運動負荷時の心筋虚血を改善させる

・冠拡張作用,冠スパズムの抑制作用を有し,肥大心の心内膜下虚血を改善させる

・陰性変力作用により収縮性を悪化させ,心不全が増悪する可能性もあり注意を要する

ヘルベッサー(ジルチアゼム)

・ほとんどエビデンスがなく、β遮断薬およびワソランが投与できない症例に対してのみ選択を考慮する

・左室等容拡張時間の短縮,最大左室充満速度(PFR)増加,左室圧下降の時定数(Tau)の改善など,拡張機能を改善させる。

(ワソランと同等の自覚症状・運動耐容能の改善・心筋虚血の改善が認められる)

 

ニフェジピンを含むジヒドロピリジン系Ca拮抗薬(アダラートなど)

・血行動態が悪化する症例が報告され,肥大型心筋症に対する有用性は乏しいと考えられている(強い血管拡張作用があり、左室内圧較差を増加させるため使用すべきではない)

ACE阻害薬、ARB

非閉そく性肥大型心筋症においては、心筋線維化抑制効果(マウス)に関する報告があり、有効な手段となる可能性があるが、長期予後改善効果は確立しておらず、エビデンスに乏しい。

 

閉そく性肥大型心筋症においては、ACE阻害薬・ARBのような血管拡張作用を有する薬剤の使用は望ましくない

 

Naチャネル阻害薬(Ia群不整脈薬)

・強い陰性変力 作用を有し左室内圧較差を軽減する効果を有する

・海外ではリスモダンが使用され,日本国内ではシベノールが使用されることが多い

・リスモダン・シベノールは運動時だけでなく安静時の圧較差を減少する効果も強い

・リスモダンでは長期予後改善効果が報告されている

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業