以下はマウスを用いた実験です.
慶應義塾大学による報告によると、マウスの腎動脈をクリッピングして腎血流を一時的(10分間)に遮断して、腎機能を低下させたマウスモデルに対して、フェブリク錠を投与したところ、ATP回復促進作用による腎障害抑制効果が見出されたことが報告されました。
一般的に、組織へ流れる血液量が足りなくなる“虚血状態”になると、組織のエネルギー源であるADPからATPへのリン酸化の低下が生じ、ミトコンドリア機能障害が起こります。ミトコンドリアは酸素を利用して電子伝達系・酸化的リン酸化といったATPエネルギーを合成する役割を担っていますので、血液の流れがとまって酸素の供給が途絶えると、ATPを合成することができなくなります。
ATPの合成がストップすると、ATP→ADP→AMP→アデノシンとIMP→イノシン→ヒポキサンチン→キサンチン→尿酸とどんどん分解が進んでしまいます。
ATPには細胞のエネルギー源となるだけなく血管拡張作用・血流改善作用がありますので、虚血状態となった細胞内にATPを留めておくだけでも細胞にとっての保護効果が期待されます。
腎虚血状態のマウスモデルにおいて、フェブリク錠を投与したマウスはATPから尿酸へ分解していく経路をフェブリク錠が阻害し、プリンサルベージ経路を介したATP回復促進作用によって腎保護(腎機能低下抑制作用)を示したことが報告されました。
上記はマウスによる実験データではあるものの、急性腎障害(一時的に腎機能が低下する状態)を繰り返すことが慢性腎臓病へ移行するリスクが高いことが報告されています。
筆者らは「急性腎障害マウスモデルがフェブリク錠服用によってATPを再合成し腎保護効果をもたらしたデータがヒトでも有用かどうか検証したい」と記しています。