alexandra (1)
2年に1回行われる診療報酬改定で公開される文章や、厚生労働省が公開する文章ってわかりにくいと感じたことはありませんか?
職場でこのような会話すると
「頭の良い人たち(厚生労働省職員)がつくった文章って複雑だよね」
「わからないところは疑義解釈を待とうかな」
「診療報酬改定説明会で詳細説明があるでしょ」
といった感じで、厚生労働省が作成した文章には、どこかしら製作者の意図を読み取れない部分があるものです。
ただ、製作者側(厚生労働省)としては「360度、どこから見ても誤解の無い文章」を作成した結果、「言い回しが複雑で、わかりにくい文章」となってしまっていることが実情なんだろうなぁと私は推測しております。
ここでポイントとなるのは、複雑な文章は「読み手によって理解度が異なり、場合によっては製作者の意図を誤解するケースがある」という実情があることです。
先日、ロンドンブーツの田村淳さんが出演されるamebaで公開されいてるyoutubeで「アレクサンドラ構文・アミラーゼ構文」という文章を理解することに関する動画が公開されていました。
文字は読めるけれども、文章が読めない(意味が分からない・意味を誤解する)という状況を測るために、新井紀子氏が呼応案した読解力を測定するための指標です。
文章の読み込みが浅い・正しく理解できない状況を「機能的非識字(きのうてきひしきじ)」と表現していました。
以下にその例題として挙げられている「アレクサンドラ構文」を示します。
alexandra (1)
Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名前Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。
問題:この文脈において、以下の文中の空欄に当てはまる最も適当なものを以下から選べ
Alexandraの愛称は( )である。
① Alex
② Alexander
③ 男性
④ 女性
答え
↓
① Alex
同じような例題として「アミラーゼ構文」というのもありましたので以下に示します。
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
問題:この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。
セルロースは( )と形が違う。
①デンプン
②アミラーゼ
③グルコース
④酵素
答え
↓
① デンプン
どうでしょうか、アレクサンドラ構文・アミラーゼ構文読み解けたかどうかは別にして、このように、一見すると誤解をしてしまいかねない文章が、私たちの身の回りにはゴロゴロ転がっていることが実情なんですね。
アミラーゼ構文は教科書に載っている文章ということですので、生徒の力量が問われそうです。
ここで注目すべき点は、「機能的非識字」という言葉があるように、文章の読み取りは個人差があり、身の回りの職員が同じ文章を読んだ時に、
「文章を作成した製作者の意図をどこまで読み解けたか?」については個人差が大きいということ想定しておくことです。
上記でご紹介した例題に加えて、「日本速読解力協会」や「教育のための科学研究所」が公開している「識字能力」に関する例題をさらに添えます。
例題1
キリスト教の宗派は、まず中世にカトリックとロシア正教に分かれ、その後、近世にカトリックからプロテスタントが分離したことで、おおむね3つに分かれる。
上記の分をもとに考えた時、以下の四択から正しいものを1つ選びなさい
①:キリスト教の宗派であるカトリックとプロテスタントは、ロシア正教から分かれた。
②:中世から近世にかけて3つに分かれたカトリック、プロテスタント、ロシア正教はキリスト教の宗派である。
③:キリスト教の宗派のカトリックとロシア正教は中世に分かれ、近世になるとカトリックはさらに3つに分かれた。
④:中世に3つに分かれたキリスト教の宗派は、近世にカトリックからプロテスタントが分離した。
答え
↓
②
例題2
オーストラリアの国旗にはイギリスの国旗が含まれるが、それはかつてオーストラリアがイギリスの植民地だったためである。
上記の文章をもとに考えた時、正しいものを以下の4択から選びなさい
①:オーストラリアはかつてイギリスの植民地であったため、イギリスの国旗を用いている
②:オーストラリアはかつてイギリスの植民地であったため、国旗にイギリスの国旗を含んでいる。
③:イギリスの国旗にオーストラリアの国旗を含むのは、植民地だったことに理由がある。
④:イギリスがオーストラリアの植民地だったことは現在の国旗のデザインに関係している。
答え
↓
②
例題3
エベレストは世界で最も高い山だ。
上記の文に係れたことが正しいとき、以下の文に書かれたことは正しいか?「正しい」「まちがっている」「これだけでは判断できない」のうちから答えなさい
エルブス山はエベレストより低い
答え
↓
正しい
すばやく文章をよんで正しく理解する「識字」に興味をお持ちの方は「6問でわかる読解力・読み解くチャレンジ」のリンクを以下に添付しますのでチャレンジしてみてください。
文字は読めるけれども、文章が読めない(意味が分からない・意味を誤解する)状況や、文章を読み解く深さや正確性には個人差があるという現状は、共同作業をする上で非常に大切な要素です。
機能的非識字はおそらく、1日や2日で改善できる案件ではないと思いますが、すくなくとも自分の状況を認識するとともに、周りにスタッフにも周知してもらうことがリスク回避になると思うんですね。
厚生労働省が公開した文章を読むときに、「一応確認何ですが、〇〇の部分の意味合いって、こういう意味であってますか?」といったように記載内容の確認を行うことは、共通理解をする上で、保険医療というルールの上で業務を行うにあたり、非常に大切なポイントであると私は感じております。
そしてなにより、自分の識字レベルを自覚することや、身の回りのスタッフに知ってもらうこと、さらに周囲のスタッフの識字レベルをザックリと把握しておくことが、リスク回避という観点からも大切であると私は考えます。