2024年のノーベル生理学・医学賞が決まりました。遺伝子の働きを制御する役割を持つ小「マイクロRNA」の発見と機能を解明したビクター・アンブロス氏とゲーリー・ラブカン氏に授与することが発表されました。
そこで、今回はマイクロRNAとそれに関連する情報についてまとめてみました。
まず、マイクロRNAについてご説明する前に、マイクロRNAが働くための環境をご説明するために必要な用語について以下に記します。
役割: 遺伝情報を保存しています。
構造: 二重らせん構造からなります。
特徴: 遺伝子の設計図として機能し、細胞の核内に存在しています。
役割: DNAの遺伝情報をリボソームに運び、タンパク質合成のテンプレートとして機能します。
構造: 一本鎖のRNAからなります。
特徴: DNAから転写されて作られ、タンパク質をコードする情報を持ちます。
役割: アミノ酸をリボソームに運び、mRNAのコドンに対応するアンチコドンを持ちます。
構造: クローバーリーフ型の三次元構造を持ちます。
特徴: アミノ酸を運搬し、タンパク質合成に必要な材料を提供します。
役割: リボソームの構成要素として、タンパク質合成の場を提供します。
構造: リボソーム内でタンパク質と結合して存在しています。
特徴: リボソームの主要な構成成分であり、mRNAとtRNAの結合を助けます。
マイクロRNA(miRNA)
ここで、タンパク質を合成するリボソームについて解説を深めます。
細胞内でタンパク質を合成する小さな器官のようなものです。いわば、細胞内のタンパク質を作る工場というイメージです。このリボソームは、タンパク質とrRNAから構成されています。
上記の器官がはたらいて、私たちの体を構成するタンパク質が作り出されているわけですが、今回、ノーベル生理学・医学賞の受賞のきっかけとなったマイクロRNAは遺伝子の発現を制御する重要な働きを担っています。
サイズ:通常21~23個のヌクレオチドからなる非常に短いRNA分子です。
機能:タンパク質をコードせず、遺伝子の発現を調節するという特殊な機能を持っています。
構造:ヘアピン構造と呼ばれる特徴的な二次構造を持ちます。この構造が、マイクロRNAの機能に重要な役割を果たしています。
マイクロRNAは特定のmRNA分子に部分的または完全に相補的な配列を持っており、この相補的な配列を介して、マイクロRNAは標的mRNAに結合します。
マイクロRNAがmRNAに結合すると、リボソームがmRNAを読み取ってタンパク質を合成するプロセスが阻害されます。これにより、特定のタンパク質の合成が抑制されます。
また、マイクロRNAとmRNAの結合が強固な場合、mRNAは分解されます。これにより、mRNAがリボソームに到達する前に破壊され、タンパク質合成が完全に阻止されます。
マイクロRNAは、Argonauteタンパク質などと複合体を形成して、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)として機能します。この複合体がmRNAに結合し、翻訳抑制やmRNA分解を行います。
以上のことから、マイクロRNAは、細胞内の監視を行い、複数のmRNAの発現を調整して、細胞の機能を適切に維持するために重要な役割を担っていることがわかります。
マイクロRNAの発見当初は、線虫から発見されたわけですが、ヒトのような複雑な生き物には応用できないのでは?と考えられていましたが、ラブカン氏が2000年に動物界全体に存在する遺伝子でもマイクロRNAがあることを示し、ヒトでもマイクロRNAに対応する遺伝子が2000種類以上存在して、遺伝子調節に関与していることが明らかとなっています。