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ソリタT配合顆粒3号とスポーツドリンクの吸収率の違いについて

ソリタT配合顆粒3号とスポーツドリンクの吸収率の違いについて

2022年6月23日追記

気温の高い日が続き、小児の熱中症に関するニュースを度々目にするようになってきました。熱中症対策としてこまめな補水を心がけることが大切ですね。

経口補水液「オーエスワン」に「アップル風味」500mlペットボトル、300mlペットボトルが2022年7月4日より発売開始となります。

軽度から中等度の脱水、風邪による体調悪化などの際にこまめに摂取することが有益かと思います。

オーエスワンにアップル風味登場

OS1

ソリタT配合顆粒3号は小児や高齢者の脱水防止や熱中症・嘔吐・下痢・食事摂取困難な場合における電解質の補給維持を目的とした内服用の電解質製剤(経口保水液)です。ソリタT配合顆粒3号4gを100mlの水または微温等に溶解して摂取します。

 

薬局でソリタT配合顆粒を患者様へお渡しする際に「ソリタT配合顆粒はバランスよくミネラルと水分を補給することができる薬です。」とお伝えすることがあるのですが、患者様から「スポーツドリンクみたいなものですか?」という質問をうけることがあります。そこで、今回はソリタT配合顆粒3号が水分や電解質を補給する上でどれほど有用なのかを調べてみました。

経口保水療法の重要性について

1970年代、インドの難民キャンプでコレラが大流行した際に、下痢・嘔吐による脱水で3人に1人の方がなくなりました。この状況において経口保水療法を実施した結果30%の死亡率が3.6%にまで改善されました。この報告を機に脱水症における保水の重要性が見直されました。

経口保水液の重要性について

経口保水液の電解質バランスについて

ヒトが腸管からもっとも効率的に水分を吸収するためには

「ナトリウム:ブドウ糖=1:1~2」(モル濃度比)

という比率が重要となります。これは小腸においてNaと食事の消化産物を共輸送により効率よく体内へ取り込むための比率です。この栄養素を吸収する過程で水も一緒に管腔から体内へ吸収しますので、ナトリウムとブドウ糖の比率が水分吸収の主因となります。

 

上記に加えて、経口保水液は血清浸透圧(280mOsm/L)よりも低い濃度の場合に、小腸における水・電解質の吸収率をUPさせることが確認されています。

 

以下にソリタやOS-1、代表的なスポーツドリンクのナトリウム/ブドウ糖比と浸透圧を記します。

小児がステロイドをなめる・少量たべるとどうなるか→なんともなりません

ソリタT配合顆粒3号4gを水100mlに溶かした場合

ナトリウム濃度:35mmol/L

ブドウ糖濃度:96mmol/L

となりますので、モル濃度比率では1:2.7

浸透圧:204mOsm/L

 

経口保水液“OS-1”

ナトリウム濃度:50mmol/L

ブドウ糖濃度:100mmol/L

となりますので、モル濃度比率では1:2(ちょうどピッタリ)

浸透圧:270mOsm/L

アクエリアス

ナトリウム濃度:15mmol/L

ブドウ糖濃度:不明

果糖ブドウ糖液糖47g/Lと理論値が記されていましたので、半分がブドウ糖と仮定すると

ブドウ糖=23.5g/L=130.6mmol/L

となりますので、モル濃度比率は不明ですが、ナトリウム濃度に比べてブドウ糖濃度が非常に高い(10倍ほど?)ことが想定されます。

浸透圧:281mOsm/L

チック症状に対する薬物療法

ポカリスエット

ナトリウム濃度:21mmol/L

ブドウ糖濃度:不明

砂糖35~54g/L、果糖ブドウ糖液糖8~27g

と理論値が記されていましたので、砂糖の半分、果糖ブドウ糖液糖の半分がブドウ糖と仮定しますと

ブドウ糖=62g/L=344mmol/L

となりますので、モル濃度比率は不明ですが、ナトリウム濃度に比べてブドウ糖濃度が非常に高い(15倍ほど?)ことが想定されます。

浸透圧:324mOsm/L

ソリタT配合顆粒3号のインタビューフォーム

医薬品であるソリタT配合顆粒3号や経口保水液であるOS-1はナトリウム/ブドウ糖比や浸透圧が非常に理想的な値を示しているのに対して、いわゆる“スポーツドリンク”は味を重視するため糖分の量が多く、吸収面が考慮されていないことが明確にわかります。

ソリタT配合顆粒3号のインタビューフォームには、ラットの腸管にソリタ、スポーツドリンクそれぞれを0.5ml/minの速さで灌流した時に腸管から吸収した水分量を測定したデータが示されています。

 

水分吸収量

ソリタT配合顆粒3号:約120μL/g/min

スポーツ飲料:20μL/g/min

 

あくまで腸管に各液剤を流した時の吸収量ですが、ミネラルのバランスや濃度により6倍近くの差が生じることが確認できます。

(水分の吸収に比例してナトリウムの吸収量もソリタT配合顆粒3号で高値を示しています)

 

また、別の報告で輸液療法と経口保水療法による水・電解質の補給効果の比較試験を確認してみると、同等という報告を多数目にすることができます。

(報告はいずれも適切な濃度の経口補水液によるデータであり、ミネラルウォーターやスポーツドリンクでは意味がありません)

 

以上のことから、小児の熱中症や嘔吐・脱水による経口補水を目的とするのであればOS-1やソリタT配合顆粒3号といった適切な経口補水液が非常に有用であることがわかりました。夏場の熱中症対策としてスポーツドリンクを水で半分に薄めて摂取することは、有用な予防対策かと思います。しかし、過度の脱水状態・嘔吐・下痢を繰り返す症状が続くのであれば切な経口補水液を摂取すべきだと私は感じました。

経口保水液の重要性について

 

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業