神経発達症に伴う入眠困難改善薬として販売されている「メラトベル顆粒小児用」が、発売から1年が経過し、2021年6月1日からは投与制限なく長期処方が可能となります。(発売から1年以内は14日制限というしばりがありました)
しかし、製造販売元のノーベルファーマ株式会社は、2021年6月1日の投与期間制限解除後に、生産計画を大きく上回る需要増の兆しがみられることから、2022年3月末日まで出荷調整することを同ホームページに公開しました。
既存の納入先については、2021年4~5月の納入数量に基づいて出荷調整を行うということです。
2021年4月~5月の納入数量に基づくとは、メラトベル顆粒小児用が2週間分しか処方できなかった時の出荷量しか購入できないということです。もちろん新規で処方される患者さんの薬は加味されておりません。
諸々の事情により出荷調整をホームページに公開する製薬会社は多数ありますが、以下の文言を目にしたのは初めてです。
「既に本剤の服用を開始されている患者様に限定して、1回の投薬期間を4週以内にてご処方いただけますようお願い申し上げます」
これまで2週間に1回受診して薬が処方されていた方に対して、今後は4週に1回の受診間隔でよいと前向きに考えるといいのかなぁとも思える文章ですが、意地悪に読み取ると「既存の患者さんは逃さないために処方を続けてください」とも見て取れる文章に思えます。
小児期の神経発達症に伴う入眠困難改善薬として“メラトベル顆粒小児用”が2020年6月23日発売開始となりました。
メラトベル顆粒小児用は、ヒトの体内で作られて睡眠を促すホルモンである“メラトニン”を有効成分として作られた入眠改善剤です。メラトベル顆粒小児用はメラトニン受容体(MT1)に作用して、睡眠を促すと同時に、メラトニン受容体(MT2)に作用して睡眠・覚醒を含む体内時計を調整する働きがあります。
神経発達症・ADHDの小児では、「夜に寝付けない」という慢性的な睡眠不足と不規則な体内時計が原因となって多動・興奮・過活動などを示すことがあり、十分な睡眠が得られないことで上記の症状が悪循環となるケースが報告されています。
そのため神経発達症の治療の選択肢の一つとして、睡眠障害を改善することも基本的な治療方針の一つとなっています。
これまで、メラトニン含有製剤はありませんでしたので、メラトニン受容体に作用する薬として「ロゼレム錠8mg」を粉砕して処方されるケースを目にしてきました。
(例:ロゼレム8mg 0.3錠/1×就寝前など)
しかし、ロゼレム錠には低出生体重児、新生児、乳児、幼児または小児に対する安全性は確立していない(使用経験がない)ことが添付文書に記されていることや、錠剤を粉砕した場合のバラツキ、安定性、粉砕調剤に要する時間がかかることなどが課題となっていました。
小児にはメラトベル顆粒小児用として1日1回0.5g(1mg)を就寝前に経口投与する。
症状に応じて適宜増減するが、1日1回2g(4mg)を超えないこと。
併用禁忌薬として:デプロメール(ルボックス)/一般名:フルボキサミンが記載されています。神経発達症の小児ではフルボキサミンが処方されるケースも目にしますので併用には注意が必要です。
(注:メラトベルとデプロメールを一緒に飲むと、メラトベルの効き目が10倍以上にUPすることが報告されています)
国内第Ⅱ/Ⅲ相試験データ
6~15歳の自閉スペクトラム症を伴う睡眠障害患者を対象として2週間調査したデータによると、メラトベル顆粒0.5g服用群(65人)、メラトベル顆粒2g服用群(65人)、プラセボ(偽薬)服用群(66人)として、寝つきを比較した結果
プラセボ群:-5分
メラトベル顆粒0.5g服用群:-22分
メラトベル顆粒2g服用群:-28分
統計的に有意に、寝つきが早くなっていることが報告されています。
国内第三相試験
6~15歳の神経発達症に伴う睡眠障害患者を対象としてメラトベル顆粒を最大26週間(6カ月)服用したところ、メラトベル顆粒を飲み始めて2週間後から寝つきが改善しはじめ、投与期間を通じて“ ―27.5分~ ―31.5分”寝つきが改善したことが報告されました。
主な副作用:傾眠(4.2%)、頭痛(2.6%)、肝機能検査値上昇(1.0%)
神経発達症に伴う睡眠障害の治療としてメラトベル顆粒を服用すると、服用開始から2週間程度した時点で、寝つきが20~30分程度早くなる。
デプロメール/ルボックス(フルボキサミン)使用者がメラトベル顆粒を服用すると、メラトベル顆粒の効き目が10倍以上UPしてしまう可能性があるため併用禁忌
メラトベル顆粒の血中濃度は服用から20~30分後にピークとなる。