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10代後半から20代の若者の片頭痛、世界的に増加の一途を辿っている現状と対策

10代後半から20代の若者の片頭痛、世界的に増加の一途を辿っている現状と対策

片頭痛は、日常生活に大きな支障をきたす神経系の疾患です。特に、成長期である10代後半から20代の若者(AYA:Adolescents and Young Adults)にとって、学業や仕事、人間関係など、様々な活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

今回、1990年から2021年までの30年以上にわたる世界的なデータを分析した研究結果から、AYA世代の片頭痛の現状と課題、そして今後の対策について詳しく解説します。

片頭痛の負担は増加傾向:世界的なデータが示す現状

この研究によると、1990年から2021年の間に、10代後半から20代の若者の片頭痛による負担は大幅に増加しています。

  • 新規患者数: 23.5%増加

  • 患者総数: 24.82%増加

  • 健康寿命の損失(DALYs): 24.94%増加

しかし、年齢調整後の罹患率(ASR)は比較的安定しており、片頭痛の根本的な原因は変わらず、現在の治療法では全体的な負担を大きく軽減できていない可能性が示唆されています。

2021年には、世界で約3億408万人もの10代後半から20代の若者世代が片頭痛に悩んでおり、新たに3442万人が発症、健康寿命の損失は1122万年に達しています。

地域差が顕著:特に負担が大きい地域と要因

片頭痛の負担は地域によって大きく異なります。

  • 罹患率・発症率ともに高い地域: 熱帯ラテンアメリカ

  • 診断率が高い地域: 西ヨーロッパ

熱帯ラテンアメリカでは、高温が片頭痛の誘発に関与している可能性が指摘されています。また、気候変動による気温上昇や大気汚染も、片頭痛の悪化に影響を与えていると考えられます。加えて、医療へのアクセスが限られていることも、負担を大きくする要因となっています。

一方、西ヨーロッパでは、医療インフラが整っており診断率が高いものの、慢性的なストレス、食生活、長時間の画面を見る習慣などが片頭痛のリスクを高めていると考えられます。

今後の予測:負担は減少しない可能性

2022年から2035年までの予測では、年齢調整後の罹患率、発症率、健康寿命の損失はわずかに減少すると予測されています。しかし、患者の絶対数は増加し続けると予想されており、片頭痛の負担は依然として十分にコントロールできていない状況が続く可能性があります。

社会経済的状況と片頭痛の関連性:格差が課題

社会経済的発展度(SDI)によっても片頭痛の負担は異なり、高SDI地域では健康寿命の損失が集中し、格差が拡大しています。

  • 高SDI地域: 環境汚染、座りっぱなしの生活、ストレスなど、生活習慣の変化が片頭痛のリスクを高めている。

  • 低SDI地域: 医療へのアクセスが限られているため、診断や治療が遅れやすく、片頭痛の負担が軽視されがち。

性別による違い:女性の負担が大きい現状

片頭痛の負担は、女性の方が男性よりも一貫して高い傾向にあります。これは、女性ホルモンの変動が片頭痛の誘発に関与していることや、女性特有の社会的なストレスなどが影響していると考えられます。

しかし、近年では男性の片頭痛の発症率も増加しており、これは医療へのアクセス向上や、男性の健康意識の変化などが影響している可能性があります。

年齢による違い:10代前半が発症しやすい傾向

AYA世代の片頭痛は、年齢によって発症しやすい時期が異なります。

  • 10代前半: 発症率が最も高い。ホルモンバランスの変化、学業のプレッシャー、思春期特有のストレスなどが影響していると考えられます。

  • 10代後半~20代: 発症率は低下するものの、慢性化しやすい傾向があります。

今後の対策:包括的なアプローチの必要性

片頭痛の負担を軽減するためには、以下の対策が重要です。

  1. 医療へのアクセス向上: 特に低所得地域において、医療へのアクセスを改善し、早期診断・治療を可能にする。

  2. 性別に応じた対策: 女性のホルモンバランスや社会的なストレス、男性の仕事や生活習慣など、性別に応じたリスク要因を考慮した対策を講じる。

  3. 学校での啓発活動: AYA世代を対象に、片頭痛の予防や早期発見、適切な対処法などを学ぶ機会を提供する。

  4. 生活習慣の改善: 睡眠、食事、運動、ストレス管理など、生活習慣の改善を促す。

  5. 研究の推進: 片頭痛の病態解明や新たな治療法の開発を推進する。

  6. 気候変動対策: 気候変動による気温上昇や大気汚染など、環境要因への対策を講じる。

まとめ:片頭痛対策は、社会全体で取り組むべき課題

片頭痛は、個人の健康だけでなく、社会全体に大きな影響を与える疾患です。10代後半から20代の若者世代の片頭痛対策は、医療、教育、環境など、様々な分野が連携して取り組むべき課題と言えるでしょう。

この研究結果を参考に、より効果的な対策を講じ、10代後半から20代の若者世代のQOL(生活の質)向上を目指していくことが重要です。

 

 

片頭痛患者に対するCGRP受容体拮抗薬の飲み薬の有用性について(2023/8/10)

日本では片頭痛の治療薬として月に1回注射を行う「CGRP受容体拮抗薬)という治療が2021年から開始され、一定の評価を得ている印象ですが、海外では「CGRP受容体拮抗薬の飲み薬」が使用されています。今回は経口CGRP受容体拮抗薬(atogepant)を12週間使用した際の治験でーが公開されましたので以下に記します。

第三相試験期間:2019年3月11日~2022年1月20日

地域:日本を含む16の国と地域

被験者:18~80歳 1年以上片頭痛病歴を有する慢性片頭痛患者(778例)

atogepant30mgを1日2回服用した群:225例

atogepant60mgを1日1回服用した群:257例

プラセボ群:261例

結果

1カ月当たりの平均片頭痛日数が治療前と比較して、どの程度減ったかを評価しています。

治療前の段階では1カ月当たりの片頭痛回数は平均で19日前後でした。

12週間の服用後、1カ月当たりの片頭痛回数の変化

atogepant30mgを1日2回服用した群:-7.5日

atogepant60mgを1日1回服用した群:-6.9日

プラセボ群:-5.1日

プラセボでも5日間も減るのかい!と突っ込みたくなりますが、その気持ちはぐっと抑えましてプラセボ群との最小二乗平均差を算出しています。

最小二乗平均差とはプラセボ群とatogepant群との片頭痛回数において、バラツキを抑えつつ明確な差があることを示すために算出します。

atogepant30mg群:-2.4

atogepant60mg群:-1.8

となり、いずれもプラセボと比してマイナスの結果となりました。つまりプラセボよりも有意に片頭痛の回数を減らすことができたことが示されました。

有害事象に関しては、atogepant服用群で便秘の副作用が10%(プラセボ群は3%)、吐き気の副作用が8~10%(プラセボ群は4%)、体重減少が6%(プラセボ群が2%)

と報告されました。

経口抗CGRP受容体拮抗薬の有用性について

日本人を対象とした抗CGRP抗体(片頭痛治療薬)の有効性について

2021年以降、片頭痛治療薬として使用されている抗CGRP抗体治療薬について、日本人を対象とした有効性についてまとめた報告がありましたので下記します。

CGRP抗体薬の動向(日本のリアルワールド)

日本頭痛学会、神経学会学術大会の演題より抗CGRP抗体の有効性・安全性について報告した13演題をまとめたデータです。

 

抗CGRP抗体の販売開始時期

2021年4月:エムガルティ皮下注発売(ガルカネズマブ)

2021年8月:アジョビ皮下注発売(フレマネズマブ)、アイモビーグ皮下注発売(エレヌマブ)

 

被験者:平均年齢41.6~48.3歳、女性比率:67~100%

慢性片頭痛(CM)の割合:49%

 

有効性について

1カ月当たりの片頭痛または片頭痛の疑いが生じた日数(MHD)を指標とした報告

反復性片頭痛(EM):4.5~7.7日の減少

慢性片頭痛(CM):5.6~11.6日の減少

 

1カ月当たりの片頭痛が生じた日数(MMD)を指標とした報告

5.2~9.2日の減少

 

相対リスクとしては33~83%と報告され、半数以上の患者で50%RRを達成したという報告もありました。

 

エムガルティからアジョビまたはアイモビーグへ切り替えた14症例についても報告がありました。全例が慢性片頭痛患者を対象としており、そのうち10例(67%)は薬剤使用過多による頭痛(MOH)を併発していました。切替により片頭痛が生じた日数は30%以上減少した症例が6例(40%)あり、他剤への切り替えも選択肢の1つであることが述べられています。

 

 

 

日本人を対象とした片頭痛の実態調査(2022/7/18)

片頭痛とは

周期的な頭痛発作を特徴とする慢性疾患です。

頭痛発作は片側性で脈打つように起こります。中等度から重度の強さで、4~72時間持続する方もおります。

片頭痛は頭痛以外にも、悪心・嘔吐・羞明・閃輝暗点などの視覚異常を伴うケースもあります。

 

日本人2万1480人を対象としたオンライン調査による片頭痛の実態調査に関する報告がありましたので読んでみました。

 

尚、同様の調査は1997年に全国電話調査にて行われた報告があります。1997年時点での報告は以下の通りです。

緊張型頭痛の有病率:15.6%

片頭痛の有病率:8.4%

片頭痛の男女比率

男性:6.3%

女性12.9%

片頭痛を発症する年齢:30~40歳代が最も多い

片頭痛で病院を受診したことが無い人の割合:69.4%

処方薬を服用している割合:5.4%

市販薬の鎮痛剤を服用している割合:56.8%

 

上記が1997年時点での片頭痛に関する全国電話調査の回答です。

それ以後、2001年に片頭痛の頓服薬として”トリプタン製剤(セロトニン1B/1D受容体作動薬)が日本国内で承認されました。

2021年には片頭痛の予防薬として「カルシトニン遺伝子関連ペプチドに対する抗体」として抗CGRP抗体の注射も保険適用されています。

上記のように、この20年で片頭痛治療における治療薬の選択肢は非常に増えている様に感じます。

以下に2020年時点における日本人を対象とした片頭痛の実態調査結果を記します。

日本人を対象とした片頭痛実態調査2020年11月データ

被験者:19~74歳、健康増進支援サービスアプリ「Kencom」に任意登録した方:2万1480人

調査期間:2020年11月1日~11月30日までの1カ月間

調査結果

片頭痛の有病率:3.2%(691人/21480人)

1997年の片頭痛有病率が8.4%と報告されており、今回の調査結果が3.2%と低い値であった背景として、自己記入式のアンケートであり、面接形式のアンケートではないため、片頭痛有病率が過小評価されているのではないか?と筆者らは感がています。

さらに、Kencomへの登録者は一般的な方と比較して健康意識が高いと考えられるため、有病率が低い結果となったのではないかと筆者らは考察で述べています。

 

性別による片頭痛発症率

男性:1.7%(272人/15802人)

女性:7.37%(419人/5678人)

男女比:女性片頭痛有病率は男性の4.4倍

(1997年時は女性の片頭痛有病率は男性の3.6倍)

 

片頭痛を発症する年齢:男女ともに30~40歳代で最も多い

 

片頭痛で病院を受診していない割合(医師に相談していない):81%

 

処方薬を服用している割合:6.1%

アセトアミノフェンとNSAIDS:29.8%

トリプタン製剤:5.9%

 

処方薬と市販薬の両方を使用している:31.8%

市販薬の鎮痛剤を服用している割合:57.8%

痛みが我慢できないほどつよくなるまでは医療機関を受診しないという回答が得られています。

 

片頭痛発作が起こりやすい時期

・疲労を感じた時

・台風などの悪天候の時

・季節の変わり目

・月経(女性回答者の52.6%)

migraine-JPN

慢性片頭痛予防薬「抗CGRP抗体」の有効性比較データ

追記:2022年2月7日

小児の片頭痛予防にリボフラビン

リボフラビンを小児に10mgまたは40mgという少量を投与することで編ずつ予防に有効、筋緊張型頭痛を併発していない片頭痛の患児に有効性が高いと報告がありましたので記します。

リボフラビンを3カ月間服用し投与前と投与後の片頭痛回数を比較したデータによると、投与前の月平均片頭痛頻度が5回前後であったのに対し、リボフラビンを定期服用することで月平均の片頭痛頻度が4回程度までへったことが示されました(ガイドラインより)

リボフラビンが片頭痛に効果を示した作用機序としては、片頭痛患者のミトコンドリアが機能低下しているという説があるようです。ビタミンB2は体内に吸収されると、フラビンモノヌクレオチド (FMN) 、およびフラビンアデニンジヌクレオチド (FAD) に変換され、ミトコンドリアのエネルギー代謝に関わる補酵素として働き、機能低下したミトコンドリアを回復すると推測されています。

「頭痛の診療ガイドライン2021」より

 

慢性片頭痛予防薬「抗CGRP抗体」の有効性・安全性に関する比較データが公開されました。

慢性片頭痛患者を対象として、「抗CGRP抗体投与群」と「A型ボツリヌス毒素製剤又はトピラマート投与群」とを比較したデータです。(5634例)

結果

eptinezumab 300mg単回投与(国内未承認薬)

プラセボ群と比較して月間片頭痛日数の改善効果が最も優れていた

片頭痛回数:-2.6日(-4.43~-0.77)

 

フレマネズマブ:アジョビ皮下注

奏効率が最も高かった。

(奏効率とは、薬物療法により効果を感じた患者さんの割合のことです。)

対プラセボ比で2.96倍

 

エレヌマブ:アイモビーグ皮下注

急性片頭痛治療薬の使用回数が最も少なかった。

 

ガルカネズマブ:エムガルティ皮下注

継続治療における脱落率がも最も低かった。

 

筆者らは上記4つの抗CGRP抗体製剤は、慢性片頭痛の予防治療としては従来の予防薬と比較して優れた有効性・安全性を示しているとまとめています。

片頭痛予防に対する抗CGRP抗体の有効性について

片頭痛発作予防薬「エムガルティ皮下注」が2021年4月26日(月)発売開始

片頭痛発作の発症抑制を適応症とした「エムガルティ皮下注」(第一三共発売)が2021年4月21日薬価収載されました。

販売包装は

「エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター(1ml)」:45165円(2021年4月現在)

「エムガルティ皮下注120mgシリンジ(1ml)」:44940円(2021年4月現在)

発売日は2021年4月26日(月曜日)となります。

エムガルティ皮下注の効能は以下の「カルシトニン遺伝子関連ペプチド」をターゲットとしております。

片頭痛発作時に三叉神経の抹消で発現される「カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)」という物質があるのですが、このCGRPには血管を拡張させる作用が確認されており、多くの炎症関連物質の産生・分泌を促して、炎症組織の充血・浮腫・疼痛を引き起こす要因と考えられています。

血液中のCGRP濃度の上昇と片頭痛発作との関連も認められており、CGRPを投与すると大部分の片頭痛患者に片頭痛発作が誘導されることが確認されています。

エムガルティ皮下注はCGRPに結合して、生理活性を阻害する(CGRPが働くことができないように作用する)ことで、片頭痛発作を抑制することが期待された製剤です

エムガルティ皮下注は1回使い切りの製剤で、初回に2本(240mg)を投与し、それ以降は月1本(120mg)を皮下投与する製剤です。

(初回に2本投与することで、速やかに定常状態に到達します)

エムガルティ皮下注が2021年4月26日発売開始(第一三共)

 

片頭痛発作予防薬「エムガルティ皮下注」が新薬として国内製造販売承認取得(2021年1月22日)

日本イーライリリーおよび第一三共は同ホームページにて、片頭痛発作の発症抑制薬としてヒト化抗CGRPモノクロナール抗体製剤「エムガルティ皮下注」の国内製造販売承認取得に関する情報が公開されました。

国内承認された製剤はエムガルディ皮下注120mgオートインジェクターまたは皮下注120mgシリンジの2規格です。

 

エムガルディ製剤の効き目としては、片頭痛発作時にカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)と呼ばれるタンパク質濃度が上昇することが報告されており、エムガルディはカルシトニン遺伝子関連ペプチドと選択的に結合して活性を抑えることで片頭痛発作を抑制することが期待されている製剤です。1カ月に1回投与することで発作を予防することが期待されます。

新規作用機序の片頭痛発作治療薬「エムガルティ」の国内製造販売承認取得に関するお知らせ

 

以下、2020年12月3日の記事です。

2020年12月2日の厚生労働省薬食審医薬品第一部会にてエムガルティ皮下注が医薬品として承認されました。

エムガルティの効果は「片頭痛発作の発症抑制」としていますが、投与対象患者や医療機関の要件については今後作成される最適使用推進ガイドラインで明らかとなる見通しです。

片頭痛予防薬「エムガルティ皮下注」が医薬品として承認されました。

 

エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター、同皮下注120mgシリンジ

片頭痛に関与していると考えられている”カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)”と呼ばれるたんぱく質にエムガルティが結合することで、カルシトニン遺伝子関連ペプチドが、その受容体へ結合することを妨げるという効果が期待される製剤です(抗CGRP抗体)。

海外では2020年7月時点で「片頭痛の予防」という効能効果にて欧米を含む40以上の国で承認されています。

「反復性群発頭痛の治療」でも米国を含む5か国で承認されています。

 

用法用量

「通常、成人にはガルカネズマブとして初回に240mgを皮下投与し、以降は1か月間隔で120mgを皮下投与して用いる」

以下は2019年8月10日に記したエムガルティ皮下注に関する報告内容です

片頭痛の急性期の治療および予防治療としてのrimegepant(CGRP受容体拮抗薬)の効果

 

臨床第三相試験が行われている片頭痛急性期治療薬rimegepantについて有用性を示すデータが開示されました。

 

Rimegepantは低分子カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗薬という薬理作用で、日本国内で使用されている片頭痛治療薬とは異なる効果で片頭痛の急性期の治療・予防治療を目的とした製剤です。

 

・痛みの緩和作用は服用から15分後から観察され、投与60分~48時間にかけて片頭痛症状の軽減作用が確認されています。Rimegepantは薬の効き目が長い(半減期が長い)という特徴があり、臨床試験データによるとrimegepantで治療された被験者の大部分が、投与24時間以内にレスキュー薬(追加の片頭痛治療薬)を必要としなったことが開示されております。

 

具体的な臨床報告としてはrimegepnat服用群(669例)とプラセボ(偽薬)服用群(682例)において投与2時間時点における頭痛症状の改善率を比較した第Ⅲ相試験において

片頭痛症状改善率

rimegepant服用群:19.6~21%改善(普通錠・OD錠によるデータ)

プラセボ服用群:11~12%改善

 

投与2時間時点における吐き気・羞明・音過敏の消失率

rimegepant群:35~37.6%(普通錠・OD錠によるデータ)

プラセボ群:25.2~27%

 

上記のデータより、rimegepant服用群は急性片頭痛症状およびそ苦痛症状を有意に改善したことが示されています。

 

服用後の有害事象

 

悪心

rimegepant服用群:1.8%

プラセボ服用群:1.1%

 

尿路感染症

rimegepant服用群:1.5%

プラセボ服用群:1.1%

 

肝機能検査に関してはプラセボ群と比較してrimegepant服用群で肝毒性を示すような兆候は見られず、忍容性が良好であることが示されてたとしています。

低分子カルシトニン遺伝子関連ペプチドとは

 

低分子カルシトニン遺伝子関連ペプチドは三叉神経節ニューロン(顔の感覚神経)や後根神経節といった神経に存在し、細胞体だけでなく、末梢側や中枢側の神経終末にも存在することから神経伝達物質と考えられております。

rimegepant-effect

片頭痛病態に関連した低分子カルシトニン遺伝子関連ペプチドの作用は、硬膜の刺激によって低分子カルシトニン遺伝子関連ペプチドが放出されることが報告されております。片頭痛発作中の頸静脈で低分子カルシトニン遺伝子関連ペプチドの濃度が上昇することが報告されております。さらに、片頭痛患者へ低分子カルシトニン遺伝子関連ペプチドを投与すると片頭痛用発作が誘発されることが報告されております。(投与後6~12時間の間に片頭痛発作が誘発された報告あり)

 

上記の報告より、現状で低分子カルシトニン遺伝子関連ペプチドの作用としては

・血管平滑筋弛緩作用

・肥満細胞の活性化(ヒトではおこらないかも?)

・サテライトグリア細胞の活性化

・三叉神経の機能変調・神経伝達

 

上記のような作用が示唆されております。

片頭痛治療薬rimegepantは片頭痛誘発因子である低分子カルシトニン遺伝子関連ペプチドが、その受容体にくっつくことを妨げる働きがありますので、片頭痛の発症・誘発を抑え、予防的な効果もあることが示唆されます。

rimegepant関連情報

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業