2025年1月はインフルエンザが大流行しており、抗インフルエンザ薬が品薄となっている状況が続いています。
流行しているのはインフルエンザウイルスだけでなく、コロナウイルスやマイコプラズマなども、検査の結果、陽性となっている方もおり、非常に医療機関が混み合っているというニュースを目にします。
調剤薬局で働いている私の主観を申し上げますと
「10日ほど前に○○に感染して、熱や痰は治まっているんだけど、咳がつづいているんです。」
という患者さんが多くいらっしゃるように印象です。
患者様からすると、抗ウイルス薬や抗生剤をしっかり飲めば、バイ菌をやっつけることができて、完治すると考えますよね。発熱や倦怠感、緑色や黄色の鼻水などの症状がおさまっているにも関わらず咳だけが続く状況に不安を感じる方がおられます。
風邪をひいた後の咳が止まらない要因の一つとして、感染後咳嗽(かんせんごがいそう)という症状があります。
ウイルスや細菌が気道の粘膜を直接攻撃して、炎症がおこり粘膜がはれあがることがあります。
病院で処方された抗ウイルス薬や抗生剤を飲むことで、原因となるバイ菌をやっつけることには成功しましたが、バイ菌によって傷つけられた気道が改善するまでには時間を要し、わずかな刺激に対しても過敏に反応して咳が出やすい状況をまねきます。これが感染後咳嗽により咳が長引く要因と考えられています。
もう少し具体的に記載しますと、咳は異物を気道から排除するための防御反射としての役割があります。ウイルスに感染すると、気道に炎症が生じ、ウイルスを体外に排泄しようとして咳嗽反射が活性化されます。この気道粘膜の活性化はウイルスが消失した後も、気道に炎症が生じている間は維持されて咳が続くことが示唆されています。
過去の報告では短時間作用型の気管支拡張薬や抗コリン薬(気管が狭まるのを防ぐ薬)では、効果が薄く、吸入ステロイドは一部の患者さんで効果がある可能性があるものの、感染後咳嗽は時間経過とともに自然に治癒する症状であるため、有効性に関する証拠を得ることは困難ともいわれています。
その結果、現実的な治療方法として、ウイルス性咳嗽と同じ方法で抗アレルギー剤と吸入ステロイドによる治療を継続して、症状が軽減することを待つことが一つの治療戦略とされています。
また、風邪が治った後に咳が続くもう一つの例として後鼻漏が挙げられます。こちらは、鼻水が前ではなく後ろへ流れ込み喉の奥の方に流れてしまう症状です。喉や声帯を刺激して喉がヒリヒリするケースもあります。また夜間、横になっていると粘液が喉の奥の方から肺の方へ流れ込み、咳を誘発することがあります。また鼻づまりや副鼻腔炎など鼻がつまっている状況も後鼻漏を引き起こす要因です。
と、風邪の後に咳だけが続く要因について2つほど記しましたが、他にも様々な要因が挙げられますので、症状が続く場合は呼吸器科の受診をお勧めします。
ここで、咳が続いている小児の親御さんと薬局でお話しするときに、親御さんがよくおっしゃることをご紹介します。
風邪を引いた後の咳が続いているから病院を受診したら「喘息」といわれて、吸入薬がでました。これって喘息なんですか?ずっと吸入しなければならないんですか?
といった感じで、自分の子供が「喘息」と診断されたことにビックリされる親御さんがおられるんですね。
私はお薬をお渡しするときに、そのような親御さんへ、以下のようにご説明しています。
例えば親御さんがイメージされる「小児喘息」は具体的なアレルゲンがある疾患なんですね。例えばダニですとか花粉ですとか煙などの原因となる異物を吸い込むことによる生じる喘息が小児喘息のイメージです。
今回は風邪の後に咳が続く症状ですよね。この場合、原因となるウイルスは既に上気道にはいないケースがあります。でもウイルスが上気道で悪さをして、気道の表面を荒らしてしまったため、気道の炎症が続いていて、修理している段階かもしれません。
考えるべきことは、吸入薬をいつまで続けなければならいかではなく、正しく毎日使用して気道の炎症症状を改善させることです。そのために自己判断で吸入薬を中止・調節するのではなく、しっかり使い切ることが改善への近道だと私は考えます。
という感じでしょうかね。
親御さんを刺激することは良くないので、あまり言いませんが思春期の脳の認知発達に関する研究では、喘息を早期に発症した小児は長期にわたる炎症や、喘息発作による脳への酸素供給量の低下などが原因でエピソード記憶や、処理速度などの認知機能スコアが低かったというデータを米国が報告していますので、抑えられる咳は薬で抑えることが最善策であえると私は考えております。
薬屋だから薬を使うべきという考えではなく、小児・大人を問わず、健康に生活するために脳をしっかりと使うため酸素を供給することが望ましいと私は考えておりますことをご理解ください。
アメリカの研究チームが、子どもの喘息と記憶力低下の関連性を初めて明らかにしました。特に、喘息を早期に発症した子どもほど、記憶力の発達が遅れる傾向があることが示唆されました。
研究内容
研究の示唆
今後の課題
まとめ
この研究結果は、子どもの喘息が、単なる呼吸器疾患ではなく、子どもの発達に幅広い影響を与える可能性を示唆しています。喘息を持つ子どもたちの認知機能の発達をサポートするためには、さらなる研究と、医療者、教育者、保護者による連携が重要です。