シムビコートのジェネリック医薬品ブデホル吸入粉末剤「JG」の効き目について

シムビコートのジェネリック医薬品ブデホル吸入粉末剤「JG」の効き目について

 

2019年12月、気管支ぜんそく治療薬シムビコートタービュヘイラ―のジェネリック医薬品「ブデホル吸入粉末剤JG」が発売開始となります。

 

2019年12月現在の薬価を確認したところ、シムビコート60吸入は1本あたり5935.3円(3割負担金:1780.6円)なのに対して、ブデホル吸入粉末剤60吸入JGは1本あたり2348.4円(3割負担金:704.5円)ですので、3割負担の患者さんであれば1本あたり1000円近く負担金が軽減されることになります。

 

日本国内において、気管支ぜんそく治療薬(配合剤)のジェネリック医薬品発売は「ブデホル吸入粉末剤JG」が初めてですので、どのような基準をクリアして販売に至ったか、実際の効き目が同じであることをどのように確認したのかについて調べてみました。

 

シムビコートとブデホル吸入粉末剤の外観

BudeForu

私個人的な感想ですが、ブデホル吸入粉末剤の外観が思っていた以上にシムビコートに似ているなぁと感じました。患者様向けの使用方法を確認しましたが、使い方も同じでした。(下部のグリップを反時計回りに止まるまで回して、時計回りに「カチン」と1回音がするまで戻す)

 

吸入時の送達量について

 

ブデホル吸入粉末剤60吸入JGを1回目から60回目(ラスト)まで吸入した時に、毎回しっかりと薬の成分を吸入できているかを確認するための試験として「送達量均一性試験」が実施されていました。

 

使用開始時の3回(1~3吸入)、中間期4回(28~34吸入あたり?)、使用終了時3回(58~60吸入)について平均送達量が評価されています。データを確認すると平均送達量は1吸入当たり基準値の85~115%を満たしていることがわかりました。

 

血中濃度について

ブデホル吸入粉末剤は吸入薬ではあるのですが、吸入後にどの程度体内に薬が入ってきたかを調べるには、やはり血中濃度(血液中に到達した薬の濃度)を確認するしかありません。先発品のシムビコートとブデホル吸入粉末剤を吸引後、その血中濃度を比較したデータがありましたので確認しました。

ブデゾニド(ステロイド)

ブデホル吸入粉末剤:Cmax:3.3986ng/ml、AUC:4.5924ng・hr/ml、Tmax:0.15

シムビコート:Cmax:2.8037ng/ml、AUC:4.3761ng・hr/ml、Tmax:0.13

 

ホルモテロール(β2刺激薬)

ブデホル吸入粉末剤:Cmax:0.0351ng/ml、AUC:0.0479ng・hr/ml、Tmax:0.11

シムビコート:Cmax:0.0314ng/ml、AUC:0.0452ng・hr/ml、Tmax:0.11

 

上記の血中濃度比較データを私なりに解釈します

 

ステロイド成分・β2刺激成分ともにブデホル吸入粉末剤はシムビコート比較してTmaxが類似していますので、吸入後同じくらい素早く効き目を発揮する

 

ブデホル吸入粉末剤はシムビコート比較してCmaxがステロイド成分で1.2倍、β2刺激成分で1.1倍の値を示していますので、吸入後同程度の治療効果を有する

 

ブデホル吸入粉末剤はシムビコート比較してAUCがステロイド成分で1.05倍、β2刺激成分で1.06倍の値を示していますので、吸入後に体内へ入ってくる薬の総量は同程度であることがわかりました。

 

吸入後の迅速な作用、効果、持続時間という三つの指標において、血中濃度の観点から見たデータでは同程度であることが示されています。

吸入8週時点におけるトラフFEV1値の変化量について

 

ブデホル吸入粉末剤の添付文書には臨床成績として、ブデホル吸入粉末剤を8週間使用した時点における臨床成績として「トラフFEV1の変化量」が記されています。

 

FEV1とは全力で息をすって(これ以上息を吸うことができない程度)、できるだけ速く息を吐きだしたときの、最初の1秒間に吐き出すことができる息の総量のことで、喘息治療やCOPD治療の指標として用いられます。

 

トラフとは「吸入直前」という解釈でいいかと思います。ブデホル吸入粉末剤は1日2回使用する吸入薬ですが、長時間効き目が続くタイプの吸入薬です。朝に吸入して、夕に吸入する直前の時点でも“効き目が持続している”ことがポイントとなります。そのため、この場合のトラフFEV1とは“夕にブデホル吸入粉末剤を吸入する直前”において、どのていど肺活量があるかという解釈でいいと思います。

 

以下にブデホル吸入粉末剤およびシムビコートを8週間使用した時点におけるトラフFEV1(体内に残っている薬の残存量が一番低い状態における瞬間肺活量)を比較します。

 

ブデホル吸入粉末剤(126例):0.065L±0.263

シムビコート(122例):0.101L±0.252

95%信頼区間(-0.101~0.029)

 

上記のデータをパッと見ると、ブデホル吸入粉末剤は0.065L、シムビコートは0.101L肺活量が増えているためシムビコートの方が少しだけいいのかな?と見て取れるのですが、そうではありません。

 

95%信頼区間という部分が“-0.101~0.0.29L“という部分がポイントです。

 

〇~△Lという数字の〇と△がどちらもゼロ以上であれば、統計的に見て2群間で差があるとえるのですが、ブデホル吸入粉末剤とシムビコートを比較したデータでは-0.101~0.029Lとゼロをまたいでいます(〇部分がマイナスデータです)。

 

この場合、統計的に“2つの薬には差がない“という解釈となります。

 

加えて、ブデホル吸入粉末剤とシムビコートとの群間差を計算すると

{(0.029)-(0.101)}÷2=-0.036

となりますが、この群間差が±0.185Lの範囲内であれば、ブデホル吸入粉末剤とシムビコートを吸入した際の、治療成績は同等と判定できるという指標がありますので、少しわかりにくい解釈で申し訳ないのですが、2つの薬は同じくらい効くということになります。

まとめ

国内初の気管支喘息治療薬「ブデホル吸入粉末剤」がシムビコートと比較してどのような評価基準を満たして製造されたかについて確認しました。

 

・外観・使用感は先発と同じ感じ

・1吸入当たりの送達率は平均値で85~115%をみたしている

 

・吸入後の血中濃度はシムビコートと比較して同じくらい早く・良く・長く効く

 

・治療成績はトラフFEV1を評価したところ差がない

 

という解釈となっていることを確認しました。

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業