Categories: 過敏性腸症候群

イリボ―錠のはたらきを患者様へお伝えする

イリボ―錠のはたらきを患者様へお伝えする

 

ストレスが原因で生じる下痢症状を軽減・改善する薬に「イリボー錠」があります。イリボー錠の適応名「下痢型過敏性腸症候群」と記されていますが、インタビューフォームには“「ストレスによって誘発されるは排便亢進(トイレに行く回数が増える)や大腸輸送亢進(下痢が増える)あるいは痛覚閾値低下(お腹が痛くなる)を改善する効果が確認されている“と記されています。今回はストレスによって生じる下痢症状について機序を確認し、イリボー錠の効果について調べてみました。

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ストレスによって誘発される下痢について

 

脳がストレスを感じることと、腸管の動きが活発になって軟便・水様便の回数が増えることについての機序を調べてみました。

 

健常人がストレスを受けた場合、顕著な大腸運動の変化は見られないのですが、過敏症腸症候群を患っている患者様の場合、ストレスが原因によって小腸における蠕動運動のきっかけとなる分節運動が開始され、その後腸管運動が促進されることが報告されています。

 

上記の内容を詳しく見てみると、ヒトがストレスを受けた場合、脳内の視床下部および下垂体という部分からストレスに応答する神経内分泌物質(CRH、ACTH)が放出されることが確認されています。この神経内分泌物質が腸管に連絡することで、健常人においては大腸運動が引き起こされることがあるのですが、過敏性腸症候群患者さんではこの反応が顕著であるために大腸運動に起因する軟便・水様便が生じてしまうことになります。さらにストレスによる中枢神経への影響が、痛みに対する閾値を低下させてしまうため、腹痛を感じやすくなる状況となります。

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ヒトの気分をコントロールするホルモンにセロトニンとう物質があります。ヒトの体の中に存在するセロトニン量のうち2%は脳内の中枢神経に分布し、90%は消化管粘膜に存在するといわれています(残り8%は血小板中にあります)

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ストレスによって誘発される神経内分泌物質(CRH)は消化管粘膜に広く分布するセロトニンを遊離します(一方で、ストレスによって脳内のセロトニン分泌は抑制されるようです)。腸管内にあるセロトニン5HT3受容体・4受容体が遊離されたセロトニンによって刺激を受けてアセチルコリンの分泌を促し、腸管運動活発になることが確認されておりますが、この一連の経路に関して過敏性腸症候群患者さんでは顕著に表れることが示唆されます。

(消化管内におけるセロトニンと下痢についての具体例として、何も食べていないマウスのお腹にセロトニンを投与(腹腔内投与)すると、下痢が誘発されることが確認されています。イリボーインタビューフォームより)

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イリボー錠の効果について

 

イリボー錠は腸管において、セロトニンのターゲット部位である5HT3受容体を塞ぐことで、腸管周辺に遊離しているセロトニンが作用することを抑制します。セロトニンが受容体に結合できませんので、アセチルコリンが分泌されず、腸管の運動が抑えられますので排便回数が減少します。

 

イリボー錠の有用な点は、飲むとすぐに作用することです。服用から1時間以内に効果が現れ、6~8時間ほど効き目が持続します。ストレスがかかるタイミングが予想されるようならそこから逆算して使用することもできます。頓服としての適応は無いですが、下痢性過敏性腸症候群を感じた時にイリボー錠を服用すれば迅速な効果が現れるかと思われます。

(空腹で服用しても食後に服用しても効き目は同じです)

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イリボー錠の副作用

 

イリボー錠を飲むと、腸管内におけるセロトニン指導による腸管運動が抑制されます。そのためリラックスしている状態でも胃腸の働きが思わしくないという状況となりますので、お腹が張ったり(腹部膨満感)、便が固くなったり、便秘がちになることがあります。

 

例えば、朝食後のイリボー錠を服用後、昼ご飯としてお腹いっぱい昼食を摂ると、お腹の張りや腹痛・胃部不快感を感じるケースがあるかもしれません。

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業

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ojiyaku