キプレス・シングレア(モンテルカスト)はアトピー性皮膚炎に対する適応症がありません。さらに効果があるかどうかもわかりません。海外の報告を確認したところ、中等度から重度のアトピー性皮膚炎を患っている小児または成人を対象としてモンテルカストを適応外(オフラベル)として使用したデータを調べてみました。
モンテルカスト服用によりかゆみ症状が改善したと記されていたのは4報告あり、別の2報告ではモンテルカスト服用により抗ヒスタミンの内服と、局所ステロイド軟膏と同程度にかゆみが改善したという報告もありました。
一方でモンテルカストは、「かゆみ症状に効果がなかった」と報告している5つの論文も確認しました。
~かゆみ効果がないと報告した論文~
2~6歳の小児54人に対してモンテルカストを8週間服用した後に2週間の休薬期間を設けて、その後8週間プラセボ(偽薬)を飲んでモンテルカストとプラセボの効果を比較したところ統計的に差が出なかった。
中等度~重度のアトピー性皮膚炎患者さんを対象として各種免疫抑制薬の効果を確認したところシクロスポリンAは効果的ですが、アザチオプリンは有効性が低く第二選択肢程度、メトトレキセートは第三選択肢といった感じです。ミコフェノール酸、モンテルカスト、免疫グロブリンについては限定的なエビデンスしかないため推奨には至らなかった。
実際、免疫抑制薬はアトピー性皮膚炎の治療薬として有用ですが、ロイコトリエン阻害剤は非常に低いレベルで効果を示す、または効果がないかを調査する必要があるとしるした報告もあります。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11988144
モンテルカストは喘息及び鼻炎のための薬物であり、その作用は気道に対する局所的なものである。気道外のアレルギー症状(結膜炎、口腔内症状、湿疹および蕁麻疹)についてはプラセボ治療とモンテルカスト治療との間に差がなかった。
中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者(16~60歳)を対象として8週間モンテルカスト10mgまたはプラセボを飲んだ時のアトピーの重症度を比較したところ、統計的な有意差はなかった。プラセボ群の方が若干改善がみられた。
中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者59人を対象としてプラセボまたはモンテルカスト10mgを4週間服用したところ、有効性は確認できなかった。
モンテルカストとアトピー性皮膚炎に関するデータを確認した私の個人的な感想としましては、2001年ころに「中等度から重度のアトピー性皮膚炎にモンテルカストが補助的役割として効果があるのでは?」という感じのパイロット試験が行われて、その後数年間は“あくまでも補助的”というニュアンスを残しつつ効果がある感じのデータが散見されました。
その後2010年~2018年現在までに報告された―データでは「効果がない」「プラセボと比較して有意差がない」といった感じのデータが多いように感じられました。
そのため私としては「おそらくシングレア・キプレス(モンテルカスト)にはアトピー性皮膚炎に対して効果はない(非常に弱い)んだろうなぁ」という感想を持ちました。