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粘性のつよい鼻水と、サラサラの鼻水の違い(自分まとめ)

粘性のつよい鼻水と、サラサラの鼻水の違い(自分まとめ)

鼻水(鼻汁)は、鼻の粘膜から分泌される液体で、加湿、保温、異物の捕捉・除去といった重要な役割を担っています。

その性状(粘り気や色など)は、原因となる病気や体の状態によって変化し、病院を受診して診察を受ける際のてがかりとなります。

ここでは、粘性の強い鼻水とサラサラの鼻水の違いを、それぞれの原因となる代表的な疾患を例に挙げてみます。

1. サラサラの鼻水(水様性鼻汁・漿液性鼻汁)

特徴:

  • 水のように透明で、粘り気が少ない。

  • 鼻から垂れやすい。

主なメカニズム:

  • 異物の洗い流し: ウイルス、アレルゲン、ホコリなどの異物が鼻に入った際、それらを速やかに体外へ排出しようとする防御反応として、粘膜からの水分分泌が亢進します。

  • 血管透過性の亢進: アレルギー反応などでヒスタミンが放出されると、血管が拡張し、血管から水分(血漿成分)が漏れ出しやすくなり、サラサラの鼻水が増えます。

  • 気温が寒い: 冷たくて乾いた空気を肺に取り込むと負担になるため、鼻の中を鼻水という粘液で覆って、温度と湿度を調節しています。さらに呼気に含まれる水蒸気が外気に冷やされて水分となり鼻腔内に蓄積して鼻水となります。

代表的な疾患・状態:

  • 風邪(感冒)の初期

    • ウイルス感染の初期段階では、ウイルスを排出しようとする反応で、まず水っぽい鼻水が出ます。発熱や喉の痛みなどを伴うことが多いです。

  • アレルギー性鼻炎(花粉症など)

    • 花粉、ハウスダスト、ダニなどのアレルゲンに対する免疫反応です。ヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、くしゃみ、鼻詰まりと共に、大量のサラサラした鼻水が出ます。目のかゆみを伴うこともあります。

  • 血管運動性鼻炎(非アレルギー性鼻炎):

    • アレルギー以外の刺激(温度差、湿度変化、タバコの煙、香水、精神的ストレスなど)によって自律神経のバランスが崩れ、アレルギー性鼻炎に似たサラサラの鼻水やくしゃみが出ます。原因が特定のアレルゲンではない点が特徴です

ここでお示ししたようなサラサラの鼻水を止めるためには抗ヒスタミン剤が有用です。花粉症の時期にCMで見かけるアレジオンやタリオン、アレグラやクラリチンといった薬剤が鼻水止めの予防薬として用いられます。

 

2. 粘性の強い鼻水(粘液性鼻汁・膿性鼻汁)

特徴:

  • 粘り気が強く、ネバネバ、ドロドロしている。

  • 色が白濁したり、黄色や緑色を帯びたりすることがある。

  • 鼻をかんでもスッキリ出にくいことがある。

  • 鼻詰まりの原因となりやすい。

主なメカニズム:

  • 免疫細胞の活動: ウイルスや細菌と戦うために集まった白血球(特に好中球)の死骸や、細菌、破壊された粘膜細胞などが混ざることで、粘り気が増し、色がつきます(黄色や緑色は主に好中球に含まれる酵素の色)。

  • ムチンの増加: 鼻粘膜の細胞(杯細胞)から分泌されるムチン(粘液の主成分)が増加し、水分量が相対的に減ることで粘性が高まります。

  • 水分の不足: 体が脱水気味だったり、空気が乾燥していたりすると、鼻水中の水分が減り、粘り気が強くなります。

  • 線毛運動の低下: 炎症が長引くと、鼻粘膜にある線毛(異物を運び出す機能を持つ)の動きが悪くなり、粘性の高い鼻水が溜まりやすくなります。

代表的な疾患・状態:

  • 風邪(感冒)の治りかけ・悪化:

    • ウイルス感染から数日経つと、免疫反応が活発になり、白血球の死骸などが混じって粘り気のある黄色っぽい鼻水に変化することがあります。これは回復過程でも見られますが、二次的な細菌感染を起こすと、さらに粘性が増し、緑色になることもあります。

  • 急性副鼻腔炎:

    • 風邪などに続いて、鼻の奥にある副鼻腔(額や頬の骨の中にある空洞)に細菌やウイルスが感染し、炎症を起こした状態です。粘り気の強い、黄色や緑色の膿のような鼻水(膿性鼻汁)が特徴です。鼻詰まり、顔面痛(頬、額、目の奥など)、頭痛、嗅覚障害などを伴います。

  • 慢性副鼻腔炎(蓄膿症):

    • 急性副鼻腔炎が治りきらずに慢性化した状態、あるいはアレルギーなどが関与して長期間炎症が続く状態です。粘性の高い鼻水(時に悪臭を伴う)や後鼻漏(鼻水が喉に落ちる感覚)、鼻詰まり、嗅覚障害などが持続します。鼻茸(ポリープ)を合併することもあります。

  • 気管支炎・肺炎(鼻水が喉に流れる場合):

    • 下気道(気管支や肺)の感染症でも、喉に流れた粘性の高い痰(鼻水が喉に落ちたものを含む)が、鼻をかんだ時に出てくることがあります。咳や痰、発熱などを伴います。

  • 乾燥・脱水:

    • 病気ではなくても、空気が乾燥する環境にいたり、水分摂取が不足していたりすると、鼻水が濃縮されて粘り気が増すことがあります。

鼻水

まとめと注意点

  • サラサラの鼻水: 主に異物排除の初期反応やアレルギー反応で見られ、色は透明なことが多い。

  • 粘性の強い鼻水: 主に感染に対する免疫反応の結果(白血球の死骸など)や炎症の長期化で見られ、白濁、黄色、緑色などを呈することが多い。

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業

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ojiyaku