調剤薬局で患者様にお薬をお渡しする際に、調剤報酬(ルール)に乗っ取って薬剤師が患者様へ確認しなければならないことはたくさんあります。
・残薬
・薬による副作用
・体調変化(食欲変動・排便状況・睡眠状況など)
・病院での検査結果で気になることはないか?
・飲み忘れはないか?(服用状況の確認)
・次回の予約日まで薬は足りるのか?
・薬に関して困っていることはないか?
・普段の生活で気になることはないか?
などなど
調剤薬局勤務の薬剤師は上記を確認しながら安心・安全な薬物治療が継続されることを確認する業務があります。
一方で、患者様の立場からすると、いつもと同じ薬を手にするためだけのために、病院を出て、薬局へ移動し、薬局で待たされて、お金を支払っていつもと同じ薬を受け取るという作業となります。病院での検査や診察を終えて、体調に変化がなく“一安心”となった患者様にとって、病院での支払い、薬局での支払い、薬の入手という作業は、いわば「本質」ではなく「消化試合」のようなカテゴリーのように思われます。
そのため、薬局でお薬をお渡しするために「〇〇様」とお声掛けした際に、お財布をだしながら「いくら?」というシチュエーションが生じます。患者様の行動としては当然のことなのですが、調剤薬局勤務の薬剤師としては「診療報酬上、患者様に確認しなければならいことがあるのに・・・」という気持ちとなってしまい、患者様との間に齟齬(そご)が生じます。
上記のようなVS(~に対する)という関係にしてしまうのは良くないと私は考えております。調剤薬局は生き残るために選ばれる必要がありますので、「患者様ファースト」という考えを私は念頭に置いております。
「いくら?」と言われた時の私の思考と対応を下記します。
スーパーやコンビニのレジで自分がお金を支払う状況を想定します。自分がお金を払う状況というのは、お金が財布から出ていくわけですから気分としては「負」の感情に傾きます。さらに“合計でいくらなんだろう”“手持ちのお金で足りるだろうか”“安ければいいのにな”といったことが脳裏をよぎるかもしれません。いわゆる“支払いの不安“は、少なからず感情をイライラ・ソワソワさせると私は考えており、この状況は“可能な限り短い方がよい”と私は考えます。
そのため、投薬時に第一声で「いくら?」とおっしゃる患者様には即答で「〇〇円です」と答えて、“支払いの不安”を取り除きます。この時点で支払い金額は確定しますので、患者様の心のイライラが軽減するのではないかと私は示唆しています。
ここから、私は以下の様に思考を広げます
一般的なスーパーでは、レジで支払いをした後、マイバックや買い物袋を持参して、「商品を自分で袋に入れる」という作業を行うことが多くなりました。たまにお店の定員さんが商品を袋にいれてくれ店へ行くと「助かるなぁ」と感じる時代になった気がします。
つまり
「商品を店のスタッフが袋に入れている時間」=お客様が「助かる」=「プラスの気持ち」
人は「プラスの気持ち」の時は、心を開いてくれるのではないか、会話を楽しむ時間となるのではないかと私は感じおり、商品をビニール袋に入れる時間というのは双方とって「お話タイムチャンス」となる可能性を秘めているのでは?と私は考えております。
「いくら?」という患者様への対応に話を戻します。
「いくら?」とおっしゃった患者様へ、即答で「〇〇円です」と私はお答えすると患者様は財布から釣銭トレイへお金支払います。患者様の手からお金が離れた瞬間から患者様の「負」の感情が「プラスの気持ち」へ移行することが多いと私は感じておりますので、
・おつりをお渡しする作業
・領収書をお渡しする作業
・薬をビニールふくろにつめる作業(とくにこの作業中にお話しを広げたいです)
・ビニール袋を患者様へ手渡す作業
上記の作業中はいわば「プラスの気持ち」の患者様へ、お声掛けしやすい時間と私は経験しております。上記の4つの作業を淡々と行いながら、薬剤師として確認すべき案件をそれとなく聞き、薬や生活に必要情報をお伝えするよう心がけております。この手順で投薬業務を行うようになってから、患者様がイライラしたり怒ったりするようなケースに遭遇することが減っている気がするので、「いくら?」という患者様への一つの対応例なのかなぁと感じております。