2019年8月1日追記
日本人アルコール依存症患者さんを対象としたセリンクロ錠の効果に関する情報が開示されましたので下記致します。
被験者:アルコール依存症患者(日本人)
心理社会的治療と並行してセリンクロ錠20mg服用群(206例)、セリンクロ錠10mg服用群(154例)、プラセボ(効果のない錠剤)服用群(234例)を24週間使用した際の、大量飲酒摂取日数、総アルコール摂取量について調査が行われました。
結果
1カ月間の大量飲酒摂取日数の変化(プラセボ群との比較)
セリンクロ錠20mg服用群:-4.34日
セリンクロ錠10mg服用群:-4.18日
12週時点での総アルコール摂取量(g/日)(プラセボ群との差)
セリンクロ錠20mg服用群:-10.38g
セリンクロ錠10mg服用群:-11.08g
12週時点での肝機能の変化値
セリンクロ錠20mg服用群
γ-GT:-0.19
ALT:-0.07
セリンクロ錠10mg服用群
γ-GT:-0.16
ALT:-0.05
上記、日本人を対象としたデータ報告を見ると、セリンクロ錠を飲むことで総飲酒量・大量飲酒日数が低下し、少量ではありますが肝機能の改善が確認されております。
日本人アルコール依存症患者を対象としたセリンクロ錠の効果
2018年11月12日追記
セリンクロ錠が2018年11月9日の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において、アルコール依存症患者における飲酒量低減薬の適応症を承認されました。セリンクロ錠の海外での使用状況を確認してみると、2017年8月時点で42の国や地域で承認されています。
セリンクロ錠10mgは大塚製薬とルンドベック(デンマーク)が共同開発した医薬品です。“アルコール依存症患者の飲酒量を減らす“というこれまでにない薬理作用がポイントとなった製剤です。
アルコール依存者の脳内にはβエンドルフィン・エンケファリン(内因性オピオイド)と呼ばれる物質が放出されており、この物質がオピオイド受容体にくっつくと“お酒を飲みたい”という欲求が増すといわれています。
セリンクロ錠10mgは脳内のオピオイド受容体にβエンドルフィンやエンケファリンがくっつくことを妨げる効果があります(オピオイド受容体拮抗・調節作用)。セリンクロ錠が作用すると飲酒量が少なくなることに加えて、“お酒を飲みたい”という欲求(主観的な渇望)も低下するため飲酒量が減ると考えられています。
セリンクロ錠の半減期:10.8時間
セリンクロ錠の代謝・排泄:肝臓で代謝されたのち腎臓で排泄されます。用量依存的な肝臓への負担が少ないという報告があります。
アルコールを飲みたいと感じたときにセリンクロ錠を”頓服”することでアルコール依存を減少させる効果が報告されています。
これまでの禁酒薬とセリンクロ錠との違いをまとめます。
禁酒薬です。シアナマイドやノックビン原末とアルコールを同時に飲むと体内でのアルコール分解が抑制されて5~10分後には顔面潮紅、熱感、吐き気を感じます。いわゆる“お酒が弱い人がお酒を飲んだ状態”となります。しかし、これらの薬には“お酒を飲みたい”という欲求を減らす効果はありません。
断酒維持の補助薬です。脳内の興奮性神経物質の量を抑えることで、飲酒欲求を抑制する働きが推察されている製剤です。本人に断酒意思がある方に対して断酒維持効果を高める作用があります。
アルコールを飲むと太る理由/満腹中枢セロトニン2C受容体(5HT2C受容体)との関係について
“内因性オピオイド(βエンドルフィン・エンケファリン)”がオピオイド受容体にくっつくと「お酒を飲みたい!」という欲求が生まれ、飲酒量も増えます。セリンクロ錠10mgを飲むと、この欲求量が低下するため飲酒量も減ると考えられます。
すでにセリンクロ錠が販売されているヨーロッパでは、重度のアルコール依存症患者において、男性では1日60g超、女性では1日40g超のアルコール量を低減させる適応をもつ飲み薬として認可されています。
報告1
データによると、何も飲まなかった群のアルコール減少量が-7.6g/日であったのに対して、セリンクロ錠を服用した群のアルコール減少量が-14.3g/日となり、セリンクロ錠の効果が確認されます。(被験者:1322人)
報告2
セリンクロ錠を6か月間服用したデータによると、月当たりの飲酒日数は、23日から9日に減少しています。また毎日のアルコール消費量は102gから42gへ減少すると報告されています。(尚、プラセボ(偽薬)を飲んだ群では月あたりの飲酒日数が2.7~3.7日減少し、アルコール摂取量は10~18g減少しています)
参考:60g相当のアルコール量
ビールジョッキ50mlを3杯
日本酒:160mlを3本
ワイングラス200mlを3杯
アルコール依存症患者さん660名を対象として1日セリンクロ錠10mg投与群、1日セリンクロ錠20mg投与群、プラセボ群(何も飲まなかった群)に分けて、24週間投与した時の飲酒量の低減を検討しています。
結果はセリンクロ錠10mgおよび20mgを服用した群は何も飲まなかった群に比べて有意に総飲酒量の低下が確認されました。飲酒量低下作用は24週時点まで効果が持続しました。
主な有害事象は悪心・めまい・傾眠・頭痛などが報告されているものの、これらの症状は軽度または中程度であり短期間であると報告されています。(ヨーロッパにおける副作用報告より)