調剤報酬改定2026年度改定版 答申を解説
2026年度(令和8年度)の調剤報酬改定は、調剤薬局にとって非常に大きな変化を伴います。特に、お薬代の計算方法がシンプルになる一方で、特定の病院にべったりの薬局や、ジェネリック医薬品の取り扱いに消極的な薬局には厳しい内容となっています。
今回の改定案について、資料に基づき、詳しく解説します。
1. 調剤基本料の見直し:薬局の「基本料」が決まる複雑なルール
調剤基本料は、薬局の門を叩いたときにかかる「基本料金(入場料のようなもの)」です。今回の改定では、薬局の独立性を高めるため、処方箋の受付回数や特定の病院への依存度(集中率)によって、点数が細かく、そして厳しく設定されました。
改定のポイントと具体的な数値
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調剤基本料1(一般的な街の薬局): 45点 → 47点へ引き上げ
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調剤基本料2(特定の病院に依存している薬局):29点→30点へ引き上げ
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特定の病院からの処方箋割合が85%超〜で、かつ月間の受付回数が1,800回超〜の薬局が、新たにこの「低い点数」の対象になります。( 同一の敷地内又は建物内に複数の保険医療機関が所在するときは、当該複数の保険医療機関を一の保険医療機関とみなす。)
- 特定の医療機関からの受付回数が4000回超
- 受付回数が4000回超かつ上位3つの医療機関の集中率が70%超
- 都市部の新規開局薬局への制限: 政令指定都市に開局する場合、特定病院からの割合が85%超で、月600回を超える場合は、基本料2を算定することになります。(水平距離五百メートル以内に他の保険薬局がある場合に限る。)さらに、以下のいずれかに該当した場合であって集中率が85%超となった場合には「門前薬局等立地依存減算」としてマイナス5点となります。
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A:病院の敷地の境界線から100m以内の区域に他の薬局が2つ以上存在する
B:薬局の周囲50mに、他の薬局が2以上所在する
C:薬局の周囲50mに所在する他の保険薬局が「門前薬局等立地依存減算」に該当する
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調剤基本料3(大手チェーン薬局):
- イ:グループ3.5万回~40万回:85%超えまたは不動産契約:25点
- ロ:グループ40万回~:85%超えまたは不動産契約:20点
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ハ:グループ40万回~:85%未満:35点 → 37点へ引き上げ。
- 「300店舗以上」という基準の撤廃: これまでは店舗数も基準でしたが、今後は純粋に「グループ全体の処方箋受付回数」で判断されるようになります。
調剤基本料の引き上げについては
調剤基本料1と3(ハ)が+2点、基本料2および3(イ、ロ)がプラス1点となります。
また、物価高対応として
3カ月に1回に限り、調剤物価対応料として1点が加算されます。また、令和9年6月以降は加算点数が2点に増えます。
また、賃上げ対応として
調剤ベースアップ評価料:4点
勤務する職員の賃金の改善を図る体制につき、届け出た薬局において調剤した場合に処方箋1回について4点を加算します。令和9年6月以降は8点に増えます。
【重要】経過措置について
令和八年五月三十一日において、現に処方箋の受付回数が一月当たり千八百枚以下であるとして届け出ている保険薬局であって、その後も一月当たりの処方箋の受付回数が継続的に千八百枚以下であるものについては、当面の間、第十五の一の適用に当たっては、特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合を八割五分以下とみなす。
2. 特別調剤基本料Aの見直し:病院の敷地内薬局へのメス
病院の敷地内に建つ薬局(敷地内薬局)は、利便性が高い一方で、病院との癒着が懸念されてきました。
改定のポイント
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へき地などの特例: 地方公共団体が所有する土地で、周囲に薬局がない場合に限り、特別調剤基本料Aではなく「調剤基本料1」を算定できる救済措置が新設されました。
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オンライン診療施設との関係: 薬局と同じ敷地内にオンライン診療の受診施設を設置する場合も、特別調剤基本料Aの対象となる規定が設けられました。
【重要】経過措置について
告示前日において当該保険薬局の所在する建物内に保険医療機関(診療所に限る。)が所在している保険薬局については、告示日以降、新たに他の保険医療機関と不動産取引等その他の特別な関係を有しない場合又は当該保険医療機関(診療所に限る。)が所在し続ける場合に限り、当該保険薬局については、当面の間、第十五の一の(6)のイに該当しないものとする。
3. 地域支援体制加算の見直し:後発品加算の廃止と統合の背景
今回の改定で最もドラマチックな変化の1つが、この加算です。名称も「地域支援・医薬品供給対応体制加算」に変更されます。
改定の背景:なぜ統合されたのか?
これまでは「ジェネリックをたくさん使えばボーナス(後発医薬品調剤体制加算)」という仕組みでしたが、昨今の「薬が足りない(供給不安定)」という問題を受け、単に安い薬を使うだけでなく、「地域で薬を融通し合い、在庫を確保する責任」を薬局に持たせることになりました。そのため、後発品加算は廃止され、この地域支援体制加算の中に組み込まれました。
改定のポイント
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加算1: 32点 → 27点
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加算2: 40点 → 59点
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加算3: 10点 → 67点
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加算4: 32点 → 37点
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加算5:59点
地域支援体制・医薬品供給対応体制加算の1(27点)については既存の後発医薬品調剤体制加算(1、2、3)が一本化された加算となります。後発医薬品調剤体制加算1が21点、2が28点、3が30点でしたので、地域支援体制・医薬品供給対応体制加算の1(27点)という点数は加算2が近い点数となります。
地域支援体制・医薬品供給対応体制加算の1(27点)の算定要件
・地域における医薬品の安定供給を確保するために必要な体制を有していること
・後発医薬品の調剤割合が85%以上であること
加算2~5
実績項目(1年間の受付回数1万回あたり〇回)については公表されておりません。
医療DX推進体制整備加算(1,2,3)→電子的調剤情報連携体制整備加算(月1回だけ):8点
3区分だった医療DX加算が電子的調剤情報連携体制整備加算(月1回だけ)に名前をかえて統合されました。マイナ利用率は開示されていません。
【重要】経過措置について
令和8年(2026年)3月31日時点で、旧「後発医薬品調剤体制加算1~3」を届け出ていた薬局は、令和9年(2027年)5月31日までに限り、新しい基準を満たしているとみなされます。約1年間の準備期間があります。

4. 調剤管理料の見直し:日数区分が4つから2つへ激変!
これまで、内服薬の「調剤管理料」は、薬を出す日数によって「7日分以下」「8〜14日分」「15〜28日分」「29日分以上」の4段階に分かれていました。これが今回、2段階に統合されます。
改定の内容(1剤につき)
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長期処方(28日分以上):60点
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それ以外(27日分以下):10点
解説:何が変わる?
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現行: 7日分なら4点、14日分なら28点、28日分なら50点、29日分なら60点。
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改定案: 1日分でも27日分でも一律「10点」、28日分以上なら「60点」。
短い日数の処方では少し点数が上がり、2週間分程度の処方では点数が下がることになります。
在宅薬学総合体制加算の見直し
在宅薬学総合体制加算1:15点→30点
直近1年間の在宅訪問実績24回→48回へ増加
服薬管理指導1イの届け出
詳細は不明ですが、「地域支援・医薬品供給対応体制加算」についての在宅実施件数が年24件のままなのか48回に増えるのかは注視すべきポイントです。
在宅薬学総合体制加算2:50点→イ:在宅1人区分100点、イ以外50点
在宅関連報酬
・在宅算定日の間隔が6日間から、週1回に変更
訪問薬剤管理医師同時指導料:150点(6カ月に1回)
複数名薬剤管理指導訪問料:300点
5. 重複投薬・相互作用等防止加算等の見直しと新設
薬の飲み合わせチェックや残薬確認の評価が、より実戦的な内容に生まれ変わります。
新設:調剤時残薬調整加算
患者の家にある「飲み残した薬(残薬)」を確認し、医師に連絡して調整した場合の評価です。
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イ:在宅患者へ処方箋を交付される前に医師へ残薬を提案して処方反映された処方箋を応需した場合:50点(在宅患者などの場合)
- ロ:在宅患者に対して処方日数の変更を行った場合:50点
- ハ:かかりつけ薬剤師が当該患者に対して行った場合:50点
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それ以外:30点
[算定要件]
患者又はその家族等から収集した情報等に基づいて残薬が確認された患者において、処方医の指示又は処方医に対する照会の結果に基づき、残薬の調整のために7日分以上相当の調剤日数の変更が行われた場合は、調剤時残薬調整加算として、次に掲げる点数をそれぞれ所定点数に加算する。ただし、保険薬剤師が患者の服薬状況等により必要性があると判断し、処方医の指示又は処方医に対する照会の結果に基づき、6日分以下相当の調剤日数の変更が行われた場合には、その理由を調剤報酬明細書に記載することで算定可能とする。
新設:薬学的有害事象等防止加算
重複投薬を防止し、処方が変更された場合に加算されます。
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イ:在宅患者へ処方箋を交付される前に医師へ残薬を提案して処方反映された処方箋を応需した場合:50点(在宅患者などの場合)
- ロ:在宅患者に対して処方日数の変更を行った場合:50点
- ハ:かかりつけ薬剤師が当該患者に対して行った場合:50点
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それ以外:30点
[対象患者]
調剤管理料を算定する患者であって、処方医に確認すべき点(残薬に係るものを除く。)がある処方箋が交付された患者
[算定要件]
薬剤服用歴、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律(平成元年法律第64号)に基づく電磁的記録をもって作成された処方箋の仕組みを用いた重複投薬の確認等に基づき、処方医に対する照会(残薬調整に係るものを除く。)の結果、処方に変更が行われた場合は、薬学的有害事象等防止加算として、次に掲げる点数をそれぞれ所定点数に加算する。
6. 吸入薬指導加算の見直し:インフルエンザ薬の追加
喘息などの吸入薬の使い方は難しいため、丁寧な指導が評価されます。
改定のポイント
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対象の拡大: インフルエンザウイルス感染症の吸入薬も対象に含まれます。
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算定の間隔: これまでの「3ヶ月に1回」から、「6ヶ月に1回」へ変更となります。
7. 服用薬剤調整支援料の見直し:1,000点の衝撃
多くの薬を飲んでいる患者(ポリファーマシー)の薬を整理する取り組みへの評価です。
1回1万円の仕事ということですが・・・ノーコメントとします。
改定の内容
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服用薬剤調整支援料2:1,000点(現行は110点程度)
8. 長期収載品の選定療養:あえて先発品を選ぶ「お代」
特許が切れた古い薬(先発品)を使い続けたい場合、患者の負担が増える仕組みです。
改定の内容
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先発品とジェネリックの価格差の「2分の1」を、保険外の自己負担として支払うことになります(現行は4分の1案から引き上げ)。
9. まとめ
今回の改定は、薬局に対して「特定の病院に頼るのをやめ、地域のために薬を確保し、在宅医療に深く関わり、薬剤師としての専門性(対人業務)を発揮すること」という強いメッセージとなっています。
また、首都圏を中心とした人口過密地帯に新規で開局する薬局の収益体形が縮小されるという改定となりました。
大手チェーンか個人薬局かを問わず、従来の「処方箋を待って調剤するだけ」のスタイルでは経営が厳しくなり、より能動的な地域貢献が求められる時代へと突入します。
