2026年度の診療報酬(短冊)が公開!「後発医薬品調剤体制加算の廃止」と「調剤管理料が2区分へ」がポイント

2026年度の診療報酬(短冊)が公開!「後発医薬品調剤体制加算の廃止」と「調剤管理料が2区分へ」がポイント

2026年1月23日の中医協総会にて、2026年度調剤報酬改定の具体的な骨子(短冊)が公開されました。今回の改定は、「対物から対人へ」の更なる加速と、「医療DXへの完全移行」、そして「門前・医療モールへの厳しい適正化」が色濃く反映されています。

特筆すべき注目ポイントをまとめました。


1. 調剤基本料の見直し:立地依存からの脱却と「面分業」の推進

今回の改定の大きな柱の一つが、薬局の立地に依存する構造を是正し、薬剤師の専門性をより発揮できる「面分業(特定の医療機関に頼らない処方箋受付)」を評価することです。

調剤基本料1・3のハの引き上げ

特定の病院の前にある「門前薬局」よりも、地域に根ざして幅広い医療機関から処方箋を受け付ける薬局を評価するため、調剤基本料1(42点→引き上げ)および調剤基本料3のハ(32点→引き上げ)の点数が見直されました。これにより、特定の病院に依存しない経営努力がより報われる形となります。

特定の医療機関への集中率に関する制限の強化

いわゆる「門前薬局」への評価は厳しくなっています。

  • 集中率による区分追加: 特定の医療機関からの処方箋集中率が85%超〜95%以下の薬局で、受付回数が月1,800回超〜2,000回以下のものは、より点数の低い「調剤基本料2」を算定することとなりました。

  • 都市部の新規開局制限: 都市部に新規開設する薬局で、集中率が85%を超え、月600回を超える受付がある場合も「調剤基本料2」が適用されます。

一 北海道札幌市
二 宮城県仙台市
三 埼玉県さいたま市
四 千葉県千葉市
五 東京都千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区及び江戸川区
六 神奈川県横浜市、川崎市及び相模原市
七 新潟県新潟市
八 静岡県静岡市及び浜松市
九 愛知県名古屋市
十 京都府京都市
十一 大阪府大阪市及び堺市
十二 兵庫県神戸市
十三 岡山県岡山市
十四 広島県広島市
十五 福岡県北九州市及び福岡市
十六 熊本県熊本市

  • 特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合が85%を超え、95%以下である保険薬局であって、同一グループの保険薬局における処方箋の受付回数の合計が1月に3万5千回を超え、4万回以下のものは調剤基本料3のイを算定することとする。

 

  • 新規開設する保険薬局について、既に多数の保険薬局が開局している地域(特に、病院の近隣)又は医療モール内に立地する場合は減算とする。

 

  • へき地等において、地方自治体の所有する土地に所在する診療所の敷地内に所在する保険薬局であり、周囲に他の保険薬局がない場合は、特別調剤基本料Aを算定せず、調剤基本料1を算定する旨の規定を設ける。

 

  • 特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合の計算に当たっては、同一建物内又は同一敷地内に複数の保険医療機関が所在している場合、当該複数の保険医療機関を1つの保険医療機関と見なすこととする(医療モールに所在する複数の保険医療機関を1つの保険医療機関とみなす。)。
  • 集中率へのメス: 特定医療機関の処方箋割合が85%を超える場合の減算対象(基本料2)が拡大。

  • 医療モールへの影響:「医療モール内の複数クリニックを1つの医療機関とみなす」というルールが導入されます。これにより、モール内薬局の多くが集中率超過による減算(基本料2への移行)を余儀なくされる可能性があります。

  • チェーン薬局の評価: 同一グループの処方箋回数に応じた区分(基本料3)の基準が細分化・変更されます。

調剤報酬改定


2. 地域支援体制加算から「地域支援・医薬品供給対応体制加算」へ

従来の「地域支援体制加算」は、その名称が**「地域支援・医薬品供給対応体制加算」**へと変更されました。これは、単なる地域活動だけでなく、昨今の医薬品供給不足に対応できる体制を評価する意図があります。

安定供給への対応が必須に

改定後、この加算を算定するためには、以下の要件が新たに加わりました。

  • 医薬品の安定供給体制: 自薬局で在庫が切れていても、近隣薬局と連携して在庫を融通し合う体制、または処方医と連携して代替薬を提案できる体制が求められます。

  • 後発医薬品(ジェネリック)の使用割合: 一定以上の後発品使用割合(例:80%や90%以上など、区分による)を維持しつつ、供給不足時には適切に情報を公開していることが評価の対象となります。

○ 令和8年6月以降に開設する保険薬局又は改築若しくは増築する保険薬局においては、面積が16平方メートル以上の調剤室を有すること。
○ セルフメディケーション関連機器を設置していること。
○ 薬事未承認の研究用試薬・検査サービスを販売又は提供していないこと。
(実績について)
○ 調剤時の薬剤一元管理による疑義照会や残薬調整に係る評価項目を一定程度算定していること。
○ かかりつけ薬剤師による服薬指導を一定程度実施していること(服薬管理指導料1のイを算定していること。)。
○ 服用薬剤調整支援料2の見直しに伴い、実績要件の項目から服用薬剤調整支援料を削除すること。

加算区分の5段階化

従来の4段階から5段階(加算1〜5)へと細分化されました。それぞれの薬局の機能(夜間休日対応の実績、麻薬の取り扱い、在宅実績など)に応じて、よりきめ細かく評価される仕組みになっています。


3. 調剤管理料の簡素化:日数の「4区分」から「2区分」へ

対人業務の質を適切に評価するため、内服薬の調剤日数に基づく「調剤管理料」が大幅に簡素化されました。

令和6年度(旧)

  • 7日以下(4点)

  • 8日〜14日(28点)

  • 15日〜28日(50点)

  • 29日以上(60点)

令和8年度(新)

  • 27日以下(短期・中期処方)

  • 28日以上(長期処方)

このように、従来の細かな区分が撤廃され、「28日(4週間)」を境目とした2区分に統合されました。これは、長期処方の管理負担を評価しつつ、事務的な複雑さを解消する狙いがあります。また、これまであった「調剤管理加算」は廃止され、新たな加算体系へと統合・整理されています。


4. 重複投薬・残薬対策の評価新設:患者の安全と経済性の向上

「重複投薬・相互作用等防止加算」が見直され、より実効性の高い「残薬対策」を評価する新項目が設置されました。

「調剤時残薬調整加算」の新設

患者が自宅に持ち帰って余らせている「残薬」を確認し、医師に報告して処方量を調整した場合の評価が新設されました。

  • 算定要件: 7日分以上の処方日数変更を行った場合に算定可能です。

ただし、薬剤師が患者の服薬状況等により必要性があると判断し、6日分以下相当の処方日数の変更を行う場合には、その理由を調剤報酬明細書に記載することで算定可能とする。

  • 目的: 医療費の無駄を省き、多剤服用(ポリファーマシー)による副作用のリスクを軽減することを目指しています。

「薬学的有害事象等防止加算」の新設

薬剤服用歴に基づき、副作用の恐れがある場合などに医師へ照会し、実際に処方が変更された場合に評価されます。より高度な薬学的知見に基づく介入が求められます。


5. 吸入薬管理指導加算の拡充:インフルエンザ患者も対象に

喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)に限定されていた「吸入薬管理指導加算」が、今回からインフルエンザウイルス感染症の患者にも拡大されました。

  • 変更点: インフルエンザなどの急性疾患で吸入薬が処方された際、その場で適切な手技を指導し、医療機関に情報提供した場合に算定できます。

  • 算定間隔: 慢性疾患の場合は従来の「3ヶ月に1回」から「6ヶ月に1回」へと見直されましたが、インフルエンザ等の場合はその都度の算定が可能です。


6. バイオ後続品(バイオシミラー)の使用促進

医療費抑制の観点から、バイオ医薬品の後続品である「バイオシミラー」の使用を促進する評価が新設・見直されました。

  • バイオ後続品使用体制加算の見直し: 病院において、入院初日だけでなく、使用実績に応じた評価ができるよう算定ルールが変更されました。

  • 薬局での評価(バイオ後続品調剤体制加算): 薬局がバイオシミラーを積極的に備蓄し、患者に説明して調剤を行う体制を整えている場合に算定できる加算が新設されました。


7. 長期収載品の「選定療養」導入:患者負担が変わる大きな転換点

今回の改定で最も一般患者に影響があるのが、「長期収載品(先発医薬品)」の選定療養化です。

  • 概要: 患者の希望により長期収載品を使用する場合、長期収載品と後発医薬品の価格差の4分の1相当を患者負担としているが、これを価格差の2分の1相当に引き上げる

8.「医療DX推進体制整備加算」から「電子的調剤情報連携体制整備加算」へ

「医療DX推進体制整備加算」から「電子的調剤情報連携体制整備加算」に改称され、評価区分が1つに整理されます。主な変更点は、従来の体制要件に加えて、電子処方箋システムによる重複投薬等チェックを行う体制の整備が必須要件となる点です。
主な改定・変更ポイントは以下の通りです。
名称変更: 医療DX推進体制整備加算 → 電子的調剤情報連携体制整備加算
体制の明確化: 電子処方箋システムを利用した重複投薬等チェックの実施が要件に追加
評価区分: 1つに統合
情報連携: 電子カルテ情報共有サービス活用に関する経過措置が延長
目的: 薬剤情報などを電子的に連携し、より安全な服薬指導・調剤体制の構築を目指す
この改定により、薬局は従来のシステム導入だけでなく、実際の電子処方箋データを活用した高度なチェック体制が求められることになります。

 


9. 「かかりつけ薬剤師指導料」の廃止と再編

今回の改定案で最も驚きを持って受け止められたのが、かかりつけ薬剤師指導料および包括管理料の廃止です。複雑だった「かかりつけ薬剤師指導料」などが廃止され、「服薬管理指導料」の中での評価に一本化されます。

  • 廃止と統合: 独立した「かかりつけ薬剤師指導料」はなくなり、「服薬管理指導料」の中に「かかりつけ薬剤師が指導した場合」の評価として組み込まれます。

  • 新評価の創設: かかりつけ薬剤師による継続的な指導や、自宅訪問による残薬対策などが新たに評価されます。

  • 狙い: 「かかりつけ」を特別な加算ではなく、薬剤師の標準的な業務の「質の差」として評価する方向にシフトしたと言えます。

  • 算定しやすさと質の担保を両立

    • 薬剤師の在籍期間要件が「1年以上」から「6か月以上」に短縮され、柔軟な働き方に対応。

    • 一方で、管理薬剤師には「3年以上の在籍」を求め、薬局としての責任体制を強化。

    • プライバシーに配慮したパーテーション付きカウンターの設置なども義務化されます。

2026年度 診療報酬(短冊)

 

10. 在宅医療

これからの薬局の生き残り戦略として欠かせない「在宅」と「DX」にも新たな評価がつきます。

  • 在宅(医師との同時訪問): 医師と薬剤師が同時に患者宅を訪問して指導を行った場合の評価(訪問薬剤管理医師同時指導料)が新設されます。

  • 在宅の制限緩和: 在宅訪問の「6日以上あける」という間隔制限が廃止され、週1回の訪問が可能になります。


まとめ:2026年度改定が示す「薬局の新たな生存戦略」

2026年度の調剤報酬改定は、これまでの「対物から対人へ」という流れをさらに一段階進め、「薬局のあり方そのものの再定義」を迫る非常に厳しい、かつ明確なメッセージが込められた内容となりました。

今回の改定の重要ポイントを振り返ると、以下の3つの大きな軸が見えてきます。

  1. 「立地」から「機能」への完全移行

    門前薬局や医療モール内薬局に対する集中率の制限がかつてないほど強化されました。一方で、特定の医療機関に依存しない「面分業」や、地域全体への医薬品供給責任(安定供給への貢献)を果たす薬局が正当に評価される仕組みへと大きく舵が切られました。

  2. 薬剤師の専門性の「標準化」と「深化」

    「かかりつけ薬剤師指導料」の廃止と統合は、かかりつけ機能が「特別な加算」ではなく、薬剤師が果たすべき「当然の質」として組み込まれたことを意味します。また、残薬調整や副作用未然防止といった、より高度な薬学的介入が「点数」として新設されたことで、薬剤師の働きが医療費適正化に直結することが示されました。

  3. 医療DXと経済性への対応

    電子処方箋の活用やオンライン連携は、もはや「努力目標」ではなく「必須のインフラ」となりました。また、長期収載品の選定療養化(患者負担増)やバイオシミラーの推進は、薬局が「国の医療財政を守るゲートキーパー」としての役割を強く期待されている証でもあります。

今後の薬局に求められること

これからの薬局経営において、「ただ処方箋を待つ」スタイルは通用しなくなります。

  • 地域連携: 在宅医療への積極的な参画や、近隣薬局との医薬品融通体制の構築。

  • 臨床能力: 患者の服薬状況から処方提案を行い、医師のパートナーとして機能すること。

  • DX対応: 電子処方箋やマイナ保険証を基盤とした、情報のデジタル連携の完遂。

今回の「短冊」公開により、2026年4月以降の薬局の姿が具体的に見えてきました。制度の変更を単なる「減算の危機」と捉えるのではなく、自局の機能をアップデートし、地域住民から真に選ばれる「かかりつけ拠点」へと進化するための大きな転換点と捉えるべきでしょう。


※本記事は2026年1月23日時点の中医協資料に基づいています。最終的な点数や要件は、3月の告示を待つ必要があります。

 

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