「基礎的医薬品は変更調剤(代替調剤)できるのでしょうか?」
基礎的医薬品は変更調剤できるのでしょうか?という質問に対する厚生労働省の回答
「いつも飲んでいるお薬と、薬局でもらったお薬の名前が少し違うけれど大丈夫?」
「ジェネリックじゃないと言われたけれど、メーカーを変えてもいいの?」
病院で処方箋をもらい、薬局でお薬を受け取る際、このような疑問を感じたことはありませんか?特にお薬の世界では、数年ごとにルールが更新され、「基礎的医薬品」や「統一名収載品」といった、一般の方には少し聞き慣れない分類が登場しています。
今回は、これらのお薬が「薬局で別のメーカーのものに変更(代替調剤)できるのか?」という疑問について、厚生労働省の最新の回答やルールに基づき、徹底的に解説します。
1. そもそも「変更調剤(代替調剤)」とは何か?
まず基本となる「変更調剤」についておさらいしましょう。
原則として、薬剤師は医師が書いた処方箋の内容通りにお薬を調剤しなければなりません。しかし、患者さんの自己負担を軽くしたり、お薬の在庫状況に対応したりするために、一定のルールの下で「処方箋に書かれたお薬を、別の同等なお薬に変えて出すこと」が認められています。これが「変更調剤」です。
代表的な例は以下の通りです。
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先発医薬品(新薬)を、それと同じ成分で安い後発医薬品(ジェネリック医薬品)に変える。
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あるメーカーのジェネリック医薬品を、別のメーカーのジェネリック医薬品に変える。
このルールがあるおかげで、私たちは自分に合った価格や飲み合わせのお薬を選べるようになっています。しかし、最近この「ジェネリック医薬品」という枠組みから外れるお薬が増えてきたため、現場で混乱が生じているのです。
2. 「基礎的医薬品」は変更できるのか?
最近、処方箋の分類で注目されているのが「基礎的医薬品」です。
基礎的医薬品とは?
基礎的医薬品とは、古くから使われていて治療に欠かせない「標準的なお薬」のうち、薬の価格(薬価)が非常に安くなりすぎて、メーカーが作り続けるのが難しくなったお薬のことです。国が「この薬は大切だから、価格を維持して守ろう」と指定した、いわば「殿堂入りのお薬」のようなものです。
ここで問題になるのが、「基礎的医薬品に指定されると、ジェネリック医薬品という名札が外れてしまう」という点です。ルール上、変更調剤は「ジェネリックへの変更」が基本ですから、「名札が外れた基礎的医薬品は、もう変更できないのではないか?」という疑問が生まれました。
厚生労働省の回答:これまで通り変更可能です!
この疑問に対し、厚生労働省は2018年(平成30年)の疑義解釈(公式な回答)で以下のように述べています。
「基礎的医薬品であって、それらが基礎的医薬品に指定される以前に変更調剤が認められていたものについては、従来と同様に変更調剤を行うことができる」
つまり、「もともとジェネリックとして変更できていたお薬なら、基礎的医薬品という名前に変わっても、以前と同じように変更して大丈夫ですよ」ということです。
以下に基礎的医薬品への変更調剤に関する厚生労働省の見解(2018年5月25日付け)のPDFファイルを添付(疑義解釈その4)しますのでご確認ください。
具体的にどんな薬が対象?(有名どころリスト)
以下のようなお薬は、基礎的医薬品に指定されていますが、これまで通り薬局でメーカー変更が可能です。
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カルバマゼピン100mg/200mg(てんかんなどのお薬)
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ニフェジピンCR錠10mg/20mg/40mg(血圧を下げるお薬)
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クエン酸第一鉄Na錠50mg(貧血のお薬)
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カルボシステインDS50%(痰を切りやすくするお薬)
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ウルソデオキシコール酸50mg/100mg(肝臓や胆石のお薬)
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ワイドシリン細粒/アモキシシリン細粒(抗生物質)
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トスフロキサシントシル酸塩錠75mg/150mg(抗生物質)
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スピラゾン軟膏/クリーム/ローション(塗り薬)
令和8年以降、これらのお薬はすべて「基礎的医薬品」という分類になりますが、薬局の在庫に合わせて別のメーカーのものを受け取っても、ルール上全く問題ありません。
3. 注意が必要な「昭和の時代からある古いお薬」
一方で、「基礎的医薬品」の中でも変更が難しい(またはルールが不明確な)グループがあります。それが、昭和42年(1967年)以前から存在し、ジェネリックとしての審査を受けていないような古いお薬や漢方薬などです。
疑義照会が必要とされる主なリスト
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漢方薬: ツムラ、クラシエ、コタローなど各メーカーの葛根湯など
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保湿剤など: プロペト、白色ワセリン(健栄、日医工など)
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痛み止め・咳止め: リン酸コデイン(シオエ、タケダ、メタルなど)
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便秘薬: 酸化マグネシウム(マルイシ、健栄など)
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整腸剤・その他: ビオチン散、タンナルビンなど
これらのお薬は、一見すると「どれも同じワセリン」「どれも同じ葛根湯」に見えますが、実は「ジェネリック医薬品(後発品)」という区分に入っていない医薬品です
なぜ漢方やワセリンは勝手に変えられないの?
現在の法律では「先発品を後発品に変える」「後発品同士を変える」というルールはありますが、「後発品ではない古い薬同士を変える」という明確な公式ルールが存在しません。
例えば、「ツムラの葛根湯」を「クラシエの葛根湯」に変えることは、実は「変更調剤」のルールには含まれていないのです。そのため、薬局に在庫がないからといって、薬剤師が独断でメーカーを変えることはできません。この場合は、必ず薬剤師が医師に電話をして「メーカーを変えてもいいですか?」と確認(疑義照会)する必要があります。
患者さんからすれば「同じ薬なのに面倒だな」と感じるかもしれませんが、これは安全とルールのための手続きなのです。

4. 「統一名収載品」ってなに?アムロジピンの不思議
最近、お薬の名前にメーカー名が入っていないものを見かけるようになりました。例えば「アムロジピン錠5mg『サワイ』」ではなく、単に「アムロジピン錠5mg」とだけ書かれているケースです。これを「統一名収載品」と呼びます。
統一名収載品は「効率化」のための仕組み
以前は、何十社ものメーカーがそれぞれ「アムロジピン錠『〇〇製薬』」という名前でバラバラに登録していました。これでは事務作業が大変なため、一定の基準を満たした古いジェネリック医薬品などは、メーカー名を省いた共通の名前で管理することにしました。
統一名収載品は「ジェネリック」なの?
ここが勘違いされやすいポイントですが、統一名収載品は、実態としては「ジェネリック医薬品(後発品)」そのものです。
名前にメーカー名が入っていなくても、中身はちゃんとジェネリックとしての基準を満たしています。したがって、以下のルールが適用されます。
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一般名処方(成分名での処方)の場合:
「【般】アムロジピン錠5mg」と処方箋に書かれていれば、薬局にあるどのメーカーのアムロジピン(統一名収載品を含む)を選んでも大丈夫です。 -
銘柄処方(メーカー指定の処方)の場合:
「アムロジピン錠5mg『サワイ』」と書かれていても、医師が「変更不可」のチェックを入れていなければ、統一名収載品である「アムロジピン錠5mg」に変更して調剤することが可能です。
「名前からメーカー名が消えたから、何か特別な薬になったのでは?」と不安になる必要はありません。あくまで、お役所や薬局の事務作業をスムーズにするための「まとめられた名前」だと考えてください。
調剤薬局における変更調剤のルールについては平成 24 年3月5日付保医発 0305 第 12 号をご確認ください。
5. 患者さんが知っておきたい「処方箋」の見方
薬局でスムーズにお薬を受け取るために、自分の処方箋のどこをチェックすればよいかを知っておきましょう。
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「般」という文字がついている(一般名処方):
これは「成分名」で書かれているお薬です。患者さんは薬剤師と相談して、先発品にするか、安いジェネリックにするか、どのメーカーにするかを自由に選べます。 -
メーカー名が書いてある(銘柄処方):
特定のメーカーの薬が指定されていますが、右側の「変更不可」の欄にチェックや医師の署名がなければ、薬局で別メーカーやジェネリックに変えることができます。 -
「変更不可」にチェックがある:
この場合は、医師のこだわりや医学的な理由があるため、薬局で勝手に変えることはできません。どうしても変えたい場合は、医師への相談が必要です。
6. まとめ
お薬の分類は複雑になっていますが、大切なポイントは以下の3点です。
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「基礎的医薬品」になっても、元がジェネリックなら今まで通りメーカー変更ができる。
(ニフェジピンCRやカルボシステインなどが代表例です) -
漢方薬、ワセリン、酸化マグネシウムなどの「昭和からの古い薬」は、勝手に変えられないルール。
(薬局の在庫が違う場合は、薬剤師さんが医師に確認してくれます) -
「統一名収載品」は、メーカー名が消えても「ジェネリック医薬品」であることに変わりはない。
(アムロジピンなどの名前が変わっても、安心してお使いいただけます)
お薬の名前やメーカーが変わることは、不安に感じるかもしれません。しかし、日本のルールでは、効果や安全性が同じであると確認された範囲内で変更が行われています。
もし、薬局で「いつもと違う名前だな?」と思ったら、遠慮なく薬剤師さんに「これは基礎的医薬品ですか?」「ジェネリックとしての変更ですか?」と尋ねてみてください。納得してお薬を飲むことが、治療の第一歩になります。


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