「基礎的医薬品は変更調剤(代替調剤)できるのでしょうか?」
基礎的医薬品は変更調剤できるのでしょうか?という質問に対する厚生労働省の回答
平成30年10月追記
基礎的医薬品であって、それらが基礎的医薬品に指定される以前に変更調剤が認められていたもの(「診療報酬における加算等の算定対象となる後発医薬品」等)については、従来と同様に変更調剤を行うことができる。
「これまで変更調剤が認められていた品目は引き続き変更調剤可能」です。という解釈という解釈で差し支えありません。
先発医薬品 → 基礎的医薬品に指定
後発医薬品 → 基礎的医薬品に指定
後発医薬品 → 基礎的医薬品に指定されず、後発医薬品にも指令されず、区分が空欄となる
基礎的医薬品というルールができたことで、既収載品が上記のような扱いにかわりました。どの薬がどの扱いに変わったかわかりにくいなぁと感じたので「基礎的医薬品かどうか確認リスト」というエクセルファイルを作成しました。
厚生労働省のホームページの「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について」では
【後発医薬品と同様に変更調剤が認められる基礎的医薬品等の一覧】
をエクセルファイルでダウンロードすることが可能です。(ダウンロードする際は、最新のホームページからお願いします)
薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(厚生労働省HPより)
私の感覚ですが、平成30年度薬価改正における基礎的医薬品のイメージとして
先発医薬品が基礎的医薬品に指定された場合、そのすべての後発医薬品が基礎的医薬品となるとは限らない
というルールが少しわかりにくいように感じましたので、その詳細について以下に例を示します。
例1:リンデロンVG軟膏およびその後発医薬品が基礎的医薬品となる
リンデロン-VG軟膏0.12%
デルモゾールG軟膏
ルリクールVG軟膏0.12%
デキサンVG軟膏0.12%
ベトノバールG軟膏0.12%
上記の品目はすべて基礎的医薬品となり、同じ薬価となりました。リンデロンVG軟膏が処方箋に記されていた場合は、リンデロンVG軟膏または、その下に記されている4製品を調剤することができます。処方箋にデルモゾールG軟膏と記されていた場合はリンデロンVG軟膏以外の品目を調剤することができます。
例2:タリビット点眼液0.3%および一部の後発医薬品が基礎的医薬品となる
タリビット点眼液0.3%
オフロキサシン点眼液0.3%「日医工」
上記の2品目が基礎的医薬品となり、同じ薬価となりました(薬価は105.4円/ml)
タリビット点眼液0.3%と同一有効成分・同一剤形である以下の品目は基礎的医薬品にはなれませんでした。さらに後発医薬品という区分もなくなりました。
オフロキサシン点眼液0.3%「日新」
オフロキサシン点眼液0.3%「杏林」
オフロキサシン点眼液0.3%「テバ」
オフロキサシン点眼液0.3%「トーワ」
オフロキサシン点眼液0.3%「JG」
オフロキサシン点眼液0.3%「SN」
オフロキサシン点眼液0.3%「サワイ」
オフロキサシン点眼液0.3%「CHOS」
タリフロン点眼液0.3%
オフロキシン点眼液0.3%
ファルキサシン点眼液0.3%
マロメール点眼液0.3%
オフテクター点眼液0.3%
オフロキサシンゲル化点眼液0.3%「わかもと」
上記14品目が基礎的医薬品になれなかった理由は
「卸が薬局に薬を販売する際の値引き率が高かっため」です。基礎的医薬品となるための条件の一つに
・当該既収載品の市場実勢価格の薬価に対する乖離率が、全ての既収載品の平均乖離率を超えないこと
という条件があります。いわゆる
「安売りしていた後発医薬品は基礎的医薬品にはなれない」
というルールです。
一般的に基礎的医薬品となると薬価は先発品と同等の価格となります。そのため後発医薬品だった薬が基礎的医薬品に指定されると薬価がUPするケースが多く見受けらえれます。しかし、これまでずーッと安売りしてきた後発医薬品が基礎的医薬品となって薬価がUPすることは基礎的医薬品の概念とは異なりますので、この場合は基礎的医薬品には指定されないという解釈となります。
(基礎的医薬品の概念:医療上重要な薬剤の薬価が下がらないように下支えする制度)
基礎的医薬品でも後発医薬品でもない薬の扱いについて
上記の14品目は後発医薬品でもなく基礎的医薬品でもありません。基礎的医薬品ではないので薬価改定ごとに薬価は下がっていく製品です。後発医薬品ではありませんが、扱いとしては平成30年度薬価改定以前と同じように変更調剤を行うことができる薬剤という解釈で差し支えありません。(厚生労働省は後発医薬品でもなく基礎的医薬品でもない上記14品目のことを”「基礎的医薬品」等”の”等”と記載して区別しています)
基礎的医薬品に指定された品目、基礎的医薬品に指定されなかった品目を一覧で確認できるリストを作成しました。
以下は平成28年4月時点での基礎的医薬品に関する情報です
平成28年3月までは代替調剤できていた一部の医薬品が、4月以降「代替調剤できるかどうか不明確」という状況におかれています。
医薬品の区分を大きく分けると以下の4つに分類できます。
①後発医薬品がない先発医薬品
②後発医薬品がある先発医薬品
③後発医薬品
④昭和42年以前に承認・薬科収載された医薬品及び平成28年度診療報酬改定における「基礎的医薬品」の対象成分
今回は④に分類されている医薬品についての取り扱いについて調べてみました。
メトグルコのように2016年4月以降に「後発医薬品の数量シェア(後発率)」の計算式の区分が変更となった医薬品リスト
④に分類されている医薬品の主なリストを記します
・ツムラ葛根湯、クラシエ葛根湯、オースギ葛根湯、コタロー葛根湯、マツウラ葛根湯、テイコク葛根湯などの漢方薬
・プロペト、白色ワセリン「ケンエー」、「ヨシダ」、「日医工」など
・コデインリン酸塩1%「シオエ」、「タカタ」、「タケダ」「マルイシ」
・リン酸コデイン散1%「イワキ」、「フソー」、「メタル」など
・ケフラールカプセル250mg、セファクロルカプセル200mg「JG」、「SN」「サワイ」など
・ケフレックスカプセル250mg、セファレキシン250mg錠など
・タンナルビン「ヨシダ」、タンニン酸アルブミン「ケンエー」など
・ビオチン散0.2%「フソー」、「ホエイ」
・ミノマイシン顆粒2%、ミノサイクリン塩酸塩顆粒2%「サワイ」
・ロートエキス散「ケンエー」、「ホエイ」「ニッコー」
・酸化マグネシウム「マルイシ」重カマ「ヨシダ」、重質酸化マグネシウム「ケンエー」など
処方箋に一般名が記載されている場合、上記薬剤は各メーカーを気にすることなく調剤することが可能です。しかし、処方箋に先発医薬品名または後発医薬品名が記載されている場合は、話が変わります。
~変更調剤とは~
原則として薬剤師は処方箋通りに調剤しなければならないのですが、例外ルールとして先発医薬品から後発医薬品、または後発医薬医薬品から他のメーカーの後発医薬品へ調剤することができるというルールのことを言います。
上記薬剤は④昭和42年以前に承認・薬科収載された医薬品及び平成28年度診療報酬改定における「基礎的医薬品」の対象成分に分類されていますので、”後発医薬品”ではありません。そのため一見すると代替調剤をしてよさそうに見えるのですが、実際のところは・・・「④分類の医薬品を代替調剤してよい」というルールがないために、現状解釈ではグレーゾーン(またはアウト?)などの見解がわかれるところと解釈しています。
私の主観で上記薬剤をパッと見た感じでは、「ツムラの漢方薬をクラシエの漢方薬に代替調剤することはできないであろうなぁ」ということを経験からイメージします。一方で、良いか悪いかはわかりませんが、カマや白色ワセリンの処方に対してメーカー違いの薬を「代替調剤」と称して調剤した記憶があるような・・・・気がします(疑義照会していません)。その際、返戻はありませんでした。カマや白色ワセリンの代替調剤が容認される?のであれば、漢方の代替調剤は?と考えてしまいがちですが、あくまで④分類の医薬品に関して、代替調剤可能という公式ルールはありません。
一部の解釈ですが、局方品に関してレセコン申請する際、メーカー名に区別がない(同一コード)品目があったために支払基金側がメーカー名を把握できなかった(突合点検をする際に、メーカー名がわからない品目があった)という過去の経緯があったようです。そのため局方品はメーカー違いを調剤しても支払基金側には「わからない」という解釈が広まり、局方品は代替調剤してよいという風潮になったのかもしれません。(詳細は不明です)
カマや白色ワセリン、タンナルビンやビオチン散が記載された処方箋を面で受けた場合、薬局に在庫しているメーカーと違うメーカーが処方箋に記載されていれば、現行ルール上は代替調剤できるというルールがないため、疑義照会をすることが無難かと思います。
代替調剤ができない亜鉛華単軟膏20%製剤であるサトウザルベ軟膏20%について
2016年9月15日に疑義解釈その7が公開され、
「基礎的医薬品であって、平成28年3月31日まで変更調剤が認められていたもの(「診療報酬における加算等の算定対象となる後発医薬品」等)については、従来と同様に変更調剤を行うことができる。」
という解釈となりました。
追記
2018年5月25日、疑義解釈資料その4が公開されました。調剤関係の内容としては基礎的医薬品の変更調剤に関する解釈が記されました。
【後発医薬品への変更調剤】
問1
処方箋において変更不可とされていない処方薬については、後発医薬品への変更調剤は認められているが、基礎的医薬品への変更調剤は行うことができるか。
(答)
基礎的医薬品であって、それらが基礎的医薬品に指定される以前に変更調剤が認められていたもの(「診療報酬における加算等の算定対象となる後発医薬品」等)については、従来と同様に変更調剤を行うことができる。なお、 その際にも「処方せんに記載された医薬品の後発医薬品への変更について」(平成 24 年3月5日付保医発 0305 第 12 号)に引き続き留意すること。
基礎的医薬品の変更調剤について(疑義解釈その4)