代替調剤ができない亜鉛華単軟膏20%製剤であるサトウザルベ軟膏20%について
先日、亜鉛華軟膏20%と記載された処方箋を手にしました。薬局の在庫にはサトウザルベ20%を備蓄していたため、代替調剤を行おうとしたのですが、店舗スタッフから「亜鉛華軟膏20%とサトウザルベ軟膏20%は同じ薬ではないので代替調剤できません」と教えてもらい、過誤をまぬがれるこができました。
今回の経験から、これまで曖昧に記憶していた亜鉛華軟膏・亜鉛華単軟膏・サトウザルベ軟膏(10%および20%)の違いについて調べてみました。
~亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏についての具体的な定義について
製薬メーカーにより亜鉛華軟膏および亜鉛華単軟膏についての定義には違いがあることがわかりました。
軟膏が皮膚から吸収されるまでの時間について
ヨシダ製薬や丸石製薬のホームページには「よくある質問」として亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏の違いについて記載されています。いずれのホームページにも共通して記載されていることは
●亜鉛華軟膏
①酸化亜鉛を20%含有する
②白色ワセリンを基剤のベースとしている
●亜鉛華単軟膏
①酸化亜鉛を10%含有している
②植物油およびミツロウを基剤のベースとしている
という2点です。注目すべきは
亜鉛華単軟膏=酸化亜鉛を10%含有している
という記載です。一見すると「単」がつくと酸化亜鉛含有量10%というルールであるかのように思えますが、このルールは各製薬会社が自社製品に設けた独自ルールであり、一般的な共通ルールではありません。
なぜなら、佐藤製薬から販売されている「サトウザルベ」は亜鉛華単軟膏製剤ですが、含有する酸化亜鉛の量により
サトウザルベ10%:亜鉛華単軟膏10%
サトウザルベ20%:亜鉛華単軟膏20%
という2規格が医療用医薬品として販売されているためです。
つまり、亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏を区別するルールは「②基剤の違い」のみということになります。
~亜鉛華単軟膏20%と亜鉛華軟膏20%の違いについて~
上記表より酸化亜鉛20%を含有する製剤が2つあることがわかります。
亜鉛華単軟膏20%(サトウザルベ20%)と亜鉛華軟膏20%です。これら2剤の違いについて佐藤製薬の学術担当に確認してみたところ
・両薬剤とも酸化亜鉛20%を含有しているため「効果・効能・用法・用量」は同じである
・サトウザルベ20%(亜鉛華単軟膏20%)はナタネ油を基剤として使用しているため特有のニオイがある。
・サトウザルベ20%(亜鉛華単軟膏20%)は油が分離しやすい
・サトウザルベ20%(亜鉛華単軟膏20%)は保存料を使用していないため敏感肌の患者さんが利用できる
という情報を得ることができました。
また、過去のデータをしらべてみたところ、「ホウ酸亜鉛華軟膏の基剤差による創傷治癒の比較」とういデータによると
・単軟膏(植物油とミツロウ)を基剤とした亜鉛華単軟膏の方が、ワセリンを基剤とした亜鉛華軟膏に比べて乾燥性がすぐれており、創面の分泌物の停留が少なく、治癒経過が優れている。
・創面が完治するまでに要する日数が亜鉛華単軟膏の方が早い
・亜鉛華単軟膏を貯蔵する場合は5度以下にすることが望ましい
という報告を確認することができました。
上記内容をまとめます
・亜鉛華軟膏20%:開封後の長期間使用にむいている(保存料を含有しており製剤として安定しているため)
・サトウザルベ20%(亜鉛華単軟膏):貯蔵する場合は5度以下にすることが望ましい
・サトウザルベ20%(亜鉛華単軟膏):独特のニオイがある
・サトウザルベ20%(亜鉛華単軟膏):乾燥性・治癒までの改善日数に有意性があるという報告がある
・サトウザルベ20%(亜鉛華単軟膏):保存料を含んでいないため敏感肌の方でも使用しやすい
注)亜鉛華軟膏20%と亜鉛華(10%)単軟膏の違い
酸化亜鉛には塗布部分を乾燥させる作用があるため、滲出液が多い患部に塗布する場合は酸化亜鉛を20%含有する亜鉛華軟膏を選択し、また、繰り返し塗布することで乾燥状態が強まってしまうような場合は亜鉛華(10%)単軟膏を選択するなど、症状に応じて選択されているようです