おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

下剤

重質酸化マグネシウムと酸化マグネシウムは同じ製品です

投稿日:2018年7月16日 更新日:

重質酸化マグネシウムと酸化マグネシウムは同じ製品です

 

重質酸化マグネシウムも酸化マグネシウムも同じ「酸化マグネシウム」製剤です。

 

ネーミングの由来については、第10改正日本薬局方までは

「5.0gの容積が30ml以上を“軽質品”、30ml以下を“重質品”」と規定していましたが、第11改正日本薬局方からは容積による分類がなくなり、重質品も軽質品も共に一般名は「酸化マグネシウム」となりました。この時のネーミングがいまだに残っているため商品名として「重質酸化マグネシウム」製剤と「酸化マグネシウム」製剤が販売されております。

以上のことから「重質酸化マグネシウム」と「酸化マグネシウム」とは粉の密度の違いにより過去に名付けられた呼び名であり、いまではどちらも同じ薬であることはわかりました。

 

処方箋に

(般) 酸化マグネシウム 1g/1×

 

という処方があった場合は「重質酸化マグネシウム」を調剤しても「酸化マグネシウム」を調剤してもどちらでも問題ありません。

 

実際の密度が違うということなので、どの程度ちがうのかを調べてみようかと思ったのですが、そもそも密度や比重に関する記載義務がないため、重質品・軽質品に関してインタビューフォームに記載している品目は3品目しかありませんでした。

基礎的医薬品は変更調剤可能かどうか

・酸化マグネシウム「NP」原末

比重:重質品:3.0~3.6、軽質品:2.75

 

・酸化マグネシウム「シオエ」原末

比重:重質品:3.0~3.6、軽質品:2.75

 

上記2銘柄は比重値を(その他の主な示性値:適否の判定基準としないもの)に記しています。

 

・重質酸化マグネシウム「ホエイ」

細粒状(FG)と微粒状(VFG)を目の細かな篩(ふるい)にかけて、どれくらいも目の細かさの篩(ふるい)でどれくらいの粒子が落下するかという粒度分布を示しています。他社がほとんどデータを開示していない中、「ホエイ」だけが非常に詳しいデータを開示しています。

 

篩号数(ふるいごうすう)という聞きなれない指標を横軸としているのですが、篩(ふるい)のメッシュのサイズにより篩号数がきまっていて、篩号数が大きくなるにつれてメッシュが細かくなる(小さな粒子径が落下する)という意味合いの指標となっています。

 

微粒状の製剤は篩号数200前後(網目径:75㎛)を落下する製剤であるのに対して、細粒状は篩号数60前後(網目径:250㎛)を落下する製剤となっています。

 

また、粗比容積(密度の逆数)を確認してみると、微粒状製剤が1.91ml/g、細粒状が0.94ml/gとなっています。(密度で表現すると微粒状:0.52g/ml、細粒状:1.06g/ml)

white-powder

white-powder

粒度分布とは

酸化マグネシウムの粒子群の中に、どの程度の大きさの粒子(粒子径)が、どのような割合で含まれているかをパーセンテージで表示し指標です。酸化マグネシウム(重質酸化マグネシウム)の場合は「細粒状」と「微粒状」という2種類の粉の粒子が混合されており、その比率が製品によって異なります。

まとめ

・「重質酸化マグネシウム」も「酸化マグネシウム」も同じ「酸化マグネシウム」製剤です。

・呼び名は過去の基準(5.0gの容積が30ml以上か以下か)に由来します

・「重質」と記載されている製剤の方が飲む粉の量が少ない

・重質品と軽質品の比率は1.1~2倍程度の密度差がある

・重質酸化マグネシウム「ホエイ」のインタビューフォームには細粒状・微粒状・粗比容積(密度の逆数)・安息角が記されている

ニューキノロン系抗生剤と併用できない金属カチオンの量について

注意):酸化マグネシウム・重質酸化マグネシウム製剤の薬価は銘柄により1gあたり0.92~1.51円と差があります。

注意):酸化マグネシウム(粉)は後発医薬品ではないため、銘柄処方を他銘柄へメーカー変更調剤してよいというルールはありません(原則)。ただし、地域の支払基金の解釈によりこのあたりの解釈はグレーとなっているところもあるようです。

-下剤
-同じ, 密度, 比較, 比重, 違い, 酸化マグネシウム, 重質酸化マグネシウム

執筆者:ojiyaku


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

関連記事

High-blood-pressure-sanka-magunesiumu

高血圧症に対する酸化マグネシウムの効果について

高血圧症に対する酸化マグネシウムの効果について   高血圧症に対するマグネシウムの効果に関しては「効果がない」と記している報告もあれば、「マグネシウムは血圧をさげることができる」と報告してい …

influenza-virus2

インフルエンザと下痢について

インフルエンザと下痢について   先日、私と私の息子がインフルエンザにかかったのですが、その時2人とも発熱から1日半ほど経過した時に下痢症状で苦しんだという経緯がありました。40℃近い発熱状 …

tablet2

胃瘻・経管で投与される酸化マグネシウム製剤(粉・錠剤)の崩壊性について

胃瘻・経管で投与される酸化マグネシウム製剤の崩壊性について   胃瘻・経管で酸化マグネシウム製剤を投与すると、チューブの先端でつまることが多々あります。酸化マグネシウム(粉)は詰まりやすいの …

benpi

下剤をお渡しする際に患者様へお伝えすること・下剤の薬歴について

下剤をお渡しする際に患者様へお伝えすること・下剤の薬歴について   下剤を定期的に飲んでいる方にお薬の効果・有害事象を確認することはよくあるのですが 「排便状況の確認」「軟便・水様便になる場 …

white-cap

便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)治療薬「リンゼス錠0.25mg(リナクロチド)」とアミティーザの違いについて

便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)治療薬「リンゼス錠0.25mg(リナクロチド)」とアミティーザの違いについて 2016年11月25日(金曜日)、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において …

  google adsense




2023年12月発売予定のGEリスト(エクセルファイル)

2023年12月発売予定のGEリスト(エクセルファイル)

2023年4月薬価改定 新旧薬価差比較データ(エクセルファイル)

2022年4月薬価改定。新旧薬価差比較データ(エクセルファイル)

おじさん薬剤師の働き方

how-to-work

薬剤師の育成について

how-to-bring-upo

日医工・沢井・東和・日本ジェネリック・日本ケミファ・アメルの出荷調整リスト

日医工・沢井・東和・日本ジェネリック・日本ケミファ・アメルの出荷調整リスト




how-to-work