重質酸化マグネシウムと酸化マグネシウムは同じ製品です
私たちの生活に身近な便秘薬や制酸剤として知られる「酸化マグネシウム」。薬局で受け取る際、袋に「重質酸化マグネシウム」と書かれていたり、以前の薬と見た目が少し違ったりして疑問に思ったことはありませんか?
実は、酸化マグネシウムにはその「重さ(密度)」や「粒の大きさ」によっていくつかの種類が存在します。特に、かつて販売されていた重質酸化マグネシウム「ホエイ」のインタビューフォーム(医薬品の詳細解説書)には、他のメーカーが公表していないような非常に詳細なデータが記されています。
この記事では、重質酸化マグネシウムも酸化マグネシウムも同じ製剤であることを説明するとともに、かつて医薬品として販売されていた重質酸化マグネシウム「ホエイ」のデータを基に、粉の性質である「FG」や「VFG」、そして比重(密度)の秘密について詳しく解説します。また、薬局での「銘柄変更」に関する意外なルールについても触れていきます。
重質酸化マグネシウム「ホエイ」には細粒状(FG)と微粒状(VFG)に関する詳細が唯一記されていました。ご興味がある方は以下よりdownloadしてください。ブラウザはgoogle chromeを推奨します。
1. 「重質」と「軽質」って何が違うの?酸化マグネシウムの歴史
まず、多くの人が疑問に思う「重質」という言葉から整理しましょう。結論から言うと、「重質酸化マグネシウム」も「酸化マグネシウム」も、成分そのものは全く同じです。どちらも化学式は「MgO」であり、効果に違いはありません。
ではなぜ呼び名が分かれているのでしょうか?それは、過去の「日本薬局方(国が定める薬の規格書)」のルールに由来します。
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第10改正までのルール:
5.0gの粉末を容器に入れたとき、その容積が30ml以上なら「軽質(普通の酸化マグネシウム)」、30ml以下なら「重質」と区別していました。 -
第11改正以降:
この容積による区別がなくなり、すべて一般名は「酸化マグネシウム」に統一されました。
しかし、長年使われてきた呼び名が定着していたため、現在でも商品名に「重質」と残っているものがあるのです。簡単に言えば、「重質」の方が粉がギュッと詰まっていて、同じ重さでもカサ(体積)が小さいということになります。
2. 「ホエイ」のデータから読み解くFG(細粒状)とVFG(微粒状)の正体
重質酸化マグネシウム「ホエイ」のインタビューフォームには、「剤形」の項目に「細粒状(FG)」と「微粒状(VFG)」という2つの表記があります。これらは粉の「粒の大きさ」を表す区分です。
FG(Fine Granule):細粒状
FGは「Fine Granule(ファイン・グラニュール)」の略で、日本語では「細粒(さいりゅう)」と呼びます。
「ホエイ」のデータによると、FGは「白色の粒」と表現されています。粒が比較的大きいため、粉というよりは「非常に細かい砂」のようなイメージです。
VFG(Very Fine Granule):微粒状
VFGは「Very Fine Granule(ベリー・ファイン・グラニュール)」の略で、「微粒(びりゅう)」と呼びます。
こちらは「白色の粉末」と表現されており、FGよりもさらに粒子が細かく、サラサラとした煙のような粉の状態を指します。
このFGとVFGがどのように違うのか、インタビューフォームに記載されている「粒度分布」と「比重(密度)」から詳しく見ていきましょう。
3. インタビューフォームの数値を詳しく分析!
「ホエイ」のインタビューフォームには、非常に興味深い表が掲載されています。ここには、粉の性質を決める「粒度分布」「粗比容積」「安息角」の数値が記されています。
① 粒度分布(粒の大きさの割合)
「篩号数(ふるいごうすう)」という指標が使われています。これは、網目の細かさを表す数字で、数字が大きくなるほど網目が細かくなります。
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FG(細粒状): 42号〜100号の網目を通り抜ける粒が全体の約90%を占めています。
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VFG(微粒状): 150号〜200号以上の非常に細かい網目を通る粒が全体の約98%を占めています。
つまり、VFGはFGに比べて圧倒的に一粒一粒が小さいことがわかります。
② 粗比容積(密度の逆数)と比重の関係
ここが「重質」か「軽質」かを判断する最も重要なポイントです。「粗比容積(そひようせき)」とは、簡単に言うと「1gあたりの体積(ml)」のことです。
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VFG(微粒状):1.91 ml/g
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FG(細粒状):0.94 ml/g
この数値を「密度(1mlあたりの重さ)」に変換してみると、驚きの違いが見えてきます。
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VFGの密度:約0.52 g/ml
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FGの密度:約1.06 g/ml
なんと、細粒状(FG)は微粒状(VFG)に比べて、同じ体積の中に約2倍の重さの成分が詰まっていることになります。
一般的に「重質酸化マグネシウム」としてイメージされる「カサが少なくて飲みやすい」という特徴をより強く持っているのは、このデータ上では「FG(細粒状)」の方だと言えるでしょう。
③ 安息角(粉のサラサラ度合い)
「安息角(あんそくかく)」とは、粉を積み上げたときに崩れずに維持できる角度のことです。この角度が小さいほど、粉の流動性が良く、サラサラと流れる性質があります。
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VFG:43度
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FG:35度
FGの方が角度が小さいため、粒が大きくて重い分、サラサラと流れやすく、機械での充填や調剤がしやすい性質を持っていることが推測できます。

4. 患者さんにとってのメリット・デメリット
この「FG」と「VFG」の違いは、実際に薬を飲む患者さんにどのような影響を与えるのでしょうか。
カサ(体積)の違い
FG(細粒状)は密度が高いため、同じ1gを飲む場合でも、スプーンですくったときの見た目の量はVFG(微粒状)の半分程度で済みます。「粉薬を飲むのが苦手で、少しでも量を減らしたい」という方には、密度の高いFGタイプが適しています。
飲み心地の違い
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VFG(微粒状): 粒子が非常に細かいため、口の中でフワッと広がりやすく、人によっては「むせやすい」と感じることがあります。また、水に溶かそうとすると表面張力でダマになりやすい性質があります。
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FG(細粒状): 粒にある程度の重みがあるため、口の中でまとまりやすく、水と一緒にゴクンと飲み込みやすい傾向があります。
「ホエイ」の製剤は、このFGとVFGを組み合わせることで、扱いやすさと飲みやすさのバランスを取っていたと考えられます。
5. 薬局での「変更調剤」を巡る知られざる実状
さて、ここで現実の調剤現場でのルールについて解説します。
処方箋に「(般)酸化マグネシウム」と一般名(成分名)で書かれている場合、薬局は「重質」でも「軽質」でも、どのメーカーの製品を選んでも良いことになっています。
しかし、特定のメーカー名が指定された「銘柄処方」の場合は少し話が変わります。
酸化マグネシウムは「ジェネリック」ではない?
実は、酸化マグネシウムは「後発医薬品(ジェネリック医薬品)」というカテゴリーには分類されていません。古くからある標準的な薬として「基礎的医薬品」などに分類されることが多いのです。
通常、ジェネリック医薬品であれば、患者さんの希望や在庫状況に応じて他メーカーの安価なものへ変更することが法律で認められています。しかし、酸化マグネシウムのような「非・後発品」の場合、「銘柄指定されているものを勝手に他社製に変えてはいけない」という原則があります。
現場での実状とグレーゾーン
とはいえ、実際の医療現場では困ったことが起こります。例えば、特定のメーカーの酸化マグネシウムが全国的に品不足になった場合、厳格にルールを守ると「そのメーカーの在庫がないから薬を渡せない」ということになってしまいます。
そのため、現在では多くの地域で以下のような運用がなされています。
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一般名処方の推奨: 医師が最初から「どのメーカーでも良い」という形式で処方する。
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基金の解釈: 地域の支払基金(レセプトを審査する機関)によっては、酸化マグネシウムの銘柄変更を「実質的に問題なし」として認めている場合があります。
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疑義照会: 薬剤師が医師に電話で確認し、「他社製に変更しても良いですか?」と了承を得ることで変更する。
6. 酸化マグネシウムを上手に飲むためのコツ
粉の性質を理解したところで、酸化マグネシウムをより効果的、かつ快適に飲むためのアドバイスをいくつかご紹介します。
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多めの水で飲む: 酸化マグネシウムは腸の中で水分を抱え込んで便を柔らかくする薬です。水が少ないと効果が十分に発揮されません。コップ1杯の水と一緒に飲みましょう。
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混ぜるものに注意: 飲みにくいからといって牛乳で飲むのは避けましょう。「ミルクアルカリ症候群」という副作用(血中のカルシウム濃度が上がりすぎる)を引き起こす可能性があります。
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他の薬との間隔: インタビューフォームにもある通り、酸化マグネシウムは一部の抗生物質などの吸収を妨げる性質があります。他の薬を飲んでいる場合は、必ず薬剤師に飲み合わせを確認してください。
まとめ
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「重質酸化マグネシウム」と「酸化マグネシウム」は化学的には同じ成分。違いは「密度(カサ)」だけ。
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「ホエイ」のデータによれば、細粒状(FG)は微粒状(VFG)よりも密度が約2倍高く、同じ重さでもカサが半分程度になる。
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FGは「粒」でサラサラしており、VFGは「粉」でフワッとしている。
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酸化マグネシウムは「ジェネリック」ではないため、銘柄指定がある場合の変更調剤には医師の確認する方が無難です。
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現在は供給不安定などの事情もあり、一般名処方による柔軟な対応が一般的になっている。
重質酸化マグネシウム「ホエイ」が残した詳細なインタビューフォームのデータは、私たちが普段何気なく飲んでいる「白い粉」が、実は非常に緻密な設計のもとに作られていることを教えてくれます。もし今、お手元の粉薬の量が以前と違うと感じたら、それは「密度」や「粒度」の違いかもしれません。気になることがあれば、ぜひお近くの薬剤師に相談してみてください。
以上、重質酸化マグネシウムの性質と調剤の裏側についての解説でした。


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