授乳婦が下剤(便秘薬)を服用した時の乳児への影響について
授乳中に飲んでも乳児へ影響しない下剤・影響が少ない下剤について患者様から質問を受けることがありましたので、各種下剤について母乳への移行性・乳児への影響に関するデータをまとめました。
〜酸化マグネシウム(マグミットなど)〜
経口摂取による消化管からのマグネシウム吸収量は4%程度ほどであり、母親の血中を経由して母乳へ移行する量は非常に低いため授乳しても差し支えない。
授乳中に服用しても「最も安全な薬」に分類されており、多くの授乳婦で研究した結果、安全性が示された薬剤となっています。
〜ピコスルファート(ラキソベロン)〜
ラキソベロンは胃・小腸では吸収されずに大腸へ到達して下剤として作用する薬です。8〜9割はそのまま便として排泄されます。1〜2割は吸収されますが、肝臓で代謝を受け尿中に排泄されます。そのため母親の血液中に検出できるほどのラキソベロンが移行することはありません(0.5μg/ml以下:検出限界以下)。
以上のことから授乳婦が服用して問題ないとされています。
実際に、授乳婦16人を対象としてラキソベロンを1日10mg、7日間服用した時の母乳からラキソベロンの成分を検出することはできなかったというデータがLactmedに記されています。
〜プルゼニド(センノシド)〜
ヒト母乳への移行は微量ですが、慢性的な使用または大量服用により乳児に下痢を引き起こす可能性があります。
Lactmedの報告を確認してみると、毎日センノシド15mg(プルゼニド1錠ちょっと)及びセンナを11人の授乳婦が服用したところ、プルゼニドの活性代謝物であるレインが母乳中で検出されています。完全母乳の乳児では500ng/kg以下のレインを摂取したことになりますが、この量は非常に少ない量であるために11人の乳児の便はいずれも正常でした(緩くなっていない)。
プルゼニド12mg2錠を母親が服用しても、乳児の便に異常は見られない。
〜アローゼン(センナ・センナジツ)〜
プルゼニドと同様にヒト母乳への移行は微量ですが、慢性的な使用または大量服用により乳児に下痢を引き起こす可能性があります。
アローゼンも基本的にはプルゼニドと同じ仕様でよいかと思います。母親がセンナを服用しても乳児には影響がなかったという報告がLactmedのデータベースに多く載せられていますが、報告されている一例の中に「授乳婦に14mgのセンナ抽出物を含む錠剤を1日1回2週間投与したところ、37人の乳児のうち6人が非吸収性の下剤を服用した群と比較してセンナ抽出物を含む錠剤を服用した群の乳児で下痢の症状が報告された。」という記載がありましたので、慢性的に母親がアローゼンを服用した場合に乳児の便がゆるくなるケースはあるようです。