整腸剤ミヤBMが欠品中。長年愛用した人が内服をストップした後の腸内環境変化と臨床データを解説

整腸剤ミヤBMが欠品中。長年愛用した人が内服をストップした後の腸内環境変化と臨床データを解説

2026年現在、整腸剤である酪酸菌(ミヤBM)の出荷調整が続いています。i医療機関によっては一時的に処方をストップしている病院もあるかと思います。この影響で、これまで長年にわたって定期的にこのお薬を服用されてきた患者様の中には、「急に飲むのをやめて大丈夫だろうか?」「お腹の環境はどうなってしまうのか?」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

今回は、酪酸菌(ミヤBM)を長年服用していた方が内服を一時的に中止した場合、小腸や大腸の環境が時間経過とともにどのように変化するのか、インタビューフォーム(医薬品の解説資料)に基づいた臨床データや薬理作用を交えながら、分かりやすく解説します。


1. 酪酸菌(ミヤBM)とはどんなお薬なのか?

まず、今回処方が難しくなっているお薬について正しく知っておきましょう。このお薬の主成分は、酪酸菌(宮入菌:ミヤイリ菌)と呼ばれる細菌です。

多くの整腸剤が「乳酸菌」や「ビフィズス菌」を主成分としているのに対し、ミヤBMは「酪酸菌」という独自の菌種を使用しています。この菌の最大の特徴は、菌体そのものが「芽胞(がほう)」という非常に硬い殻のようなものに包まれている点にあります。

一般的な乳酸菌は胃酸や胆汁に弱く、生きて腸まで届けるのが難しいとされていますが、酪酸菌(ミヤBM)は、この「天然のシェルター(芽胞)」のおかげで、強力な胃酸(pH3.5以下)の影響をほとんど受けずに腸まで到達することができます。

インタビューフォームのによると、人胃液中において乳酸菌の菌数は減少したものの、酪酸菌(ミヤBM)は影響を受けなかったという結果(in vitro試験)が出ています。この「生きて腸の奥まで届く力の強さ」こそが、長年多くの方に信頼されてきた理由です。


2. 内服を中止すると腸内環境はどう変化するのか?

では、本題である「内服を中止した後の変化」について見ていきましょう。定期的に飲み続けていたものをストップすると、腸内ではどのようなタイムスケジュールで変化が起こるのでしょうか。

① 効果持続時間と菌の消失(3日〜5日が境目)

ここで重要になるのが、「菌がいつまで腸に留まるか」というデータです。インタビューフォームの「 排泄」の項目には、非常に興味深いデータが記されています。

健康な成人男性に酪酸菌(ミヤBM)を内服してもらったところ、服用を中止してから3日〜5日以内には、便の中から菌が完全に検出されなくなりました。つまり、このお薬の菌は腸の中に「定住」するわけではなく、通過しながら働く「助っ人」のような存在なのです。

  • 服用中: 毎日新しい「助っ人」が送り込まれ、腸内で酪酸を産生し続け、環境を良い状態に維持しています。

  • 中止後1〜2日目: まだ腸内に菌が残っており、ある程度の効果は持続します。

  • 中止後3〜5日目: 腸内から菌がほぼいなくなります。

② 小腸・大腸のエネルギー源「酪酸」の減少

酪酸菌(ミヤBM)が腸内で作り出す「酪酸」は、実は大腸の粘膜細胞にとって最大のエネルギー源です。酪酸は「消化管粘膜上皮細胞の増殖促進作用」や「水・ナトリウムの吸収調節作用」を持っています。

内服を中止して数日が経過し、菌がいなくなると、このエネルギー源の供給がストップします。すると、腸の粘膜の元気(修復力や水分調整力)が徐々に低下し、元の「お薬を飲む前の環境」へと戻ろうとする変化が始まります。

③ 善玉菌と悪玉菌のバランス(フローラ)の変化

腸の中は、多種多様な菌が共生しており、これを「腸内フローラ」と呼びます。酪酸菌(ミヤBM)は、自分が酪酸を作るだけでなく、ビフィズス菌などの他の善玉菌が住みやすい環境を整える「環境整備」のような役割も果たしています。

インタビューフォームでは、抗生物質の投与で荒れてしまったマウスの腸内に、酪酸菌(ミヤBM)を併用投与することで、ビフィズス菌や乳酸菌の回復が早まったというデータが示されています。

内服を中止すると、このサポートがなくなるため、人によっては「便が少し緩くなる」「お腹にガスが溜まりやすくなる」といった、元々の体質的な症状が再発する可能性があります。

ミヤBM


3. 具体的な数値で見るミヤBMの臨床データ

このお薬がどの程度効果的なのか、具体的な数値を知ることで、中止による影響をより深く理解できます。インタビューフォームには、641例という規模で臨床試験の結果がまとめられています。

これによると、様々な疾患(胃腸炎、腹部症状、下痢、便秘など)に対して、「やや有効以上」とされた割合は78%(499例/641例)にのぼります。症状別の具体的な有効率は以下の通りです。

  • 下痢:97%(117例/121例)

  • 交替性便通異常(下痢と便秘を繰り返す):80%(8例/10例)

  • 腹部症状:80%(271例/338例)

  • 胃腸炎:75%(3例/4例)

  • 便秘:67%(6例/9例)

  • 軟便:59%(94例/159例)

特に下痢に対しては97%という非常に高い数値を示しています。長年、下痢気味だった方が酪酸菌(ミヤBM)を服用することでこの恩恵を受けていた場合、内服を中止して5日ほど経過すると、この「高い有効性による抑え込み」がなくなるため、再び下痢症状が出現しやすくなると考えられます。

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4. 他の整腸剤(既存薬)との違いと優位性

「ミヤBMが手に入らないなら、他の整腸剤でも同じでは?」と思われるかもしれませんが、2026年現在、他の整腸剤も出荷調整となっており、代替処方は難しい状況かもしれません。また、、酪酸菌(ミヤBM)には他の乳酸菌製剤にはない独自の強みがありますので、ミヤBMの強みについてご紹介します。

① 抗生物質との相性が抜群に良い

通常の乳酸菌やビフィズス菌の整腸剤は、風邪などで処方される「抗生物質(抗菌薬)」によって死滅してしまいます。しかし、酪酸菌(ミヤBM)は、多くの抗生物質に対して耐性(死なない性質)を持っています。

インタビューフォームでは、多種多様な菌に対する耐性が確認されています。つまり、抗生物質を飲んでいる時でも、お腹の環境を守り続けられる唯一無二の存在なのです。

② 腸粘膜の萎縮を防ぐ作用

他の菌との大きな違いは、先述した「酪酸」を直接作ることです。酪酸は「腸粘膜萎縮改善作用」を有することが示唆されています。これは他の乳酸菌製剤にはあまり見られない、酪酸菌特有の強みです。


5. 効果の発動時間と持続時間について

服用を再開、あるいは中止した時の目安として、以下の時間を参考にしてください。

  • 効果発動時間(内服開始時):

    内服後、菌が小腸下部から大腸にかけて分裂増殖を開始するのは、動物実験(ラット)のデータで内服から約2時間後とされています。人間の場合も、飲み始めて1〜2日以内には腸内環境のサポートが始まります。

  • 効果持続時間(内服中止時):

    先ほど述べた通り、中止後3日〜5日で菌は完全に排出されます。したがって、お薬の直接的な恩恵が受けられるのは、中止後長くても5日間程度と考えたほうが良いでしょう。


6. 服用を休んでいる期間の対策

現在のような出荷調整で一時的に処方がストップしている「休薬期間」において、私たちはどう過ごすべきでしょうか。

  1. 食事によるサポート:

    酪酸菌は、水溶性食物繊維(ごぼう、海藻、納豆、もち麦など)をエサにして増えます。お薬が飲めない期間は、これらの食材を意識して摂ることで、もともとお腹の中に住んでいる自分の酪酸菌を育てることを意識しましょう。

  2. 他の整腸剤の検討:

    ミヤBMの代わりに、ラクトミン(ビオフェルミンなど)やビフィズス菌を配合したお薬を一時的に使用することも一つの手段です。これらは成分が異なりますが、「善玉菌を補う」という目的は共通しています。他の整腸剤の在庫に関しては医療機関にご相談ください。


まとめ

酪酸菌(ミヤBM)を長年服用されていた方が内服を中止すると、腸内のタイムスケジュールは以下のように動きます。

  • 中止〜2日目: まだ腸内に菌が残っており、大きな変化は感じにくい。

  • 3日〜5日目: 腸内から菌が完全に消失。臨床データで示された「97%の下痢改善効果」などのサポートが消失します。

  • 5日目以降: 腸内のエネルギー源である酪酸が減少し、腸本来の力(自力)のみで環境を維持する状態になります。人によっては元の症状(下痢・便秘・腹痛)が徐々に現れ始めます。

今回の出荷調整は一時的なものですが、長年お腹を守ってくれていた「相棒」が不在になることで、腸内環境は確実に「服用前」の状態へと戻っていきます。不安な症状が出た場合は、決して我慢せず、代わりの整腸剤の提案や、食事療法の見直しについて医療従事者へ相談することをお勧めします。

腸内環境は、お薬だけでなく日々の生活習慣でも支えられています。お薬が手に入りにくい今だからこそ、自分のお腹の「自力」を高めるチャンスと捉え、バランスの良い食事を心がけていきましょう。

 

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