グーフィス錠とウルソ錠の併用について胆汁酸の動きから推測する

グーフィス錠とウルソ錠の併用について胆汁酸の動きから推測する

 

グーフィス錠を販売している持田製薬の学術担当に

「ウルソ錠を服用している方がグーフィス錠を飲むと、どの程度ウルソ錠の作用が減弱しますか?」

と質問したところ、

「データがありません」

という回答を得ました。

グーフィス錠のはたらきについて

また、

「グーフィス錠を服用すると、回腸で吸収されなかった胆汁酸の排泄量はどの程度ふえますか?」

と質問したところ

「データがありません」

という回答を得ました。

胆汁酸に対するグーフィス錠のはたらきが不明瞭な感じがしたので、グーフィス錠およびウルソ錠のインタビューフォームから2剤の影響度合いや胆汁酸に対する効果を調べてみました。

ウルソ錠のはたらきを患者様へお伝えする

胆汁酸の量について

胆汁酸は肝臓で1日あたり200〜500mg程度が生成されます。肝臓で作られた胆汁酸は胆嚢を経て小腸に分泌され、小腸の末端(回腸)から門脈を経て95%以上が肝臓へ戻ります(この流れを腸肝循環と呼びます)。胆汁酸の総量は3〜5g程度と試算されており、この量が1日に何回も腸肝循環をぐるぐる流れるプールのように回っていることになります。

 

胆汁酸の総量のうち、5%未満が再吸収されずに便として排泄されますので、排泄量はおよび100〜300mg程度でしょうか。(だいたい肝臓で1日つくられる胆汁酸の量と同じくらい)

 

さて、グーフィス錠を飲むと、排泄される胆汁酸の量が増えます。(どれくらい増えるかは不明です:モロオ学術より)。減った分の胆汁酸は肝臓で作らなければなりません。胆汁酸の原料はコレステロールであり、肝臓では1個のコレステロールから1個の胆汁酸を作ることができます。

 

グーフィス錠のインタビューフォームを見ると、グーフィス錠5mgを服用することで血中の悪玉コレステロールの値が20〜30mg/dlほど下がったと記されています。この減少分のコレステロールについて、肝臓が新たに血中の悪玉コレステロールを利用して胆汁酸を作ったと想定します。一般的なヒトの血液の総量はおよそ4.6L程度ですので、悪玉コレステロールを材料として新たに作られた胆汁酸の総量を計算すると

 

4.6L ✕ 20〜30mg/dl(200〜300mg/L) = 920〜1380mg

 

あくまで計算の領域を超えませんが、グーフィス錠5mgを飲むと

肝臓は新たに1g程度の胆汁酸をつくる=1g程度の胆汁酸が便として排泄される

 

上記の計算式はあくまで理論値でしかありませんが、これ以外に胆汁酸の排泄量を数値化することができませんでしたので以下はこの理論値を使用してグーフィス錠の効果を考察しております。

 

腸肝循環で流れている胆汁酸の総量は3〜5g程度と言われていますので、従来であれば100〜300mg程度(5%未満)しか便として排泄されていなかった胆汁酸が、グーフィス錠を飲むことで1000mg近い(胆汁酸総量の20%程度ほど?)量の胆汁酸が便として排泄される可能性が試算されました。

 

ここまでのグーフィス錠の効果を見て思うことは

  • 便秘がなおって、さらに悪玉コレステロールも下がるなんてすごいなぁ
  • グーフィス錠5mgを飲むと20%~程度の胆汁酸が便と一緒に排泄される可能性があるなぁ
  • グーフィスを飲むと毎日肝臓が1gもの胆汁酸を新たに作らなければならないなんて、肝臓が大変だな

という感想です。グーフィス錠を飲むことで肝臓が疲弊することで肝機能が低下する可能性はゼロではないなぁと思ったので、グーフィス錠の副作用発生率を確認したところ、

肝機能検査異常:1.6%

ALT(肝機能指標の一つ)の上昇:1.6%

と記載されておりましたので、グーフィス錠を継続使用する際は肝機能を継続的に確認してもいいかもしれません。

tab6

胆汁酸を補充するという観点でウルソ錠を見てみる

 

グーフィス錠は「回腸における胆汁酸の再吸収を減らすことで、胆汁酸を便として排泄させ、便秘が解消する」という働きであるならば、グーフィス錠を飲まない状態で、大量のウルソを服用すれば、吸収しきれなかったウルソ(胆汁酸)が便として排泄されるので、実質グーフィスみたいな効果になるんじゃないだろうか思いました。

 

回腸で再吸収されなかったウルソ(胆汁の成分)が便として排泄されることが想定されるので、「大量のウルソ=下剤」という認識ってあるのかなと思い、調べてみました。

ウルソ錠のインタビューフォームによると、ウルソを1日1g、2週間服用すると1日あたりの吸収量が900mgと算出されております。イメージとしは腸管を流れる既存の胆汁酸3〜5gの流れるプールの中にウルソを少しずつくわえていったらウルソ900mgまでは再吸収できた(流れるプールに入ることができた)。それを超えると再吸収できずに排泄された。というニュアンスでしょうか。だとすると、グーフィス錠を飲むと1gの胆汁酸が排泄される計算であるならば、ウルソ錠を1900mgのめば、グーフィス錠と同じ効果で排便作用がでるかもしれません。この方法ならばグーフィス錠を飲むことなく(肝臓が疲弊することなく)、ウルソという胆汁酸を飲むことで便秘解消が可能です。

 

しかし、日本国内ではウルソ錠の上限が1日900mgまでとされていますので、実質的には「ウルソ=下剤」という想定は不可能です。さらにいいますと、ウルソ錠は服用量が多ければ多いほど重大な副作用の発現頻度もがあがるという報告が海外でなされていますので、ウルソの服用量は最小限度に留める必要があります。

グーフィス錠のはたらきについて

念のためですが、裏付けとしてウルソの服用量とそれに伴う排便状況の変化(下痢の度合い)を確認してみると

1日600mgの服用量では報告は少ないものの、1日900mgの服用群では下痢の副作用が報告されています。また服用量は不明ですが、C型肝炎以外の治療でウルソを服用した場合の下痢の副作用頻度は2%前後であるのに対して、C型肝炎治療(ウルソをたくさん飲む)のためにウルソ錠を服用した場合の副作用頻度は6.88%と記されていますので、高用量でウルソを服用すると便がゆるくなることが示唆されます。

 

海外の報告ですが、500〜1500mg(平均750mg)のウルソを1日に服用した場合、軽度の下痢が発症する割合は4.7%という報告があります。

ウルソ500〜1500mg(平均750mg)を服用した場合、軽度の下痢が発現する頻度は4.7%

これらの報告から、おそらくウルソをたくさんのむと下痢気味(便がゆるくなる)ことは示唆されます。

 

尚、肝機能改善を目的としてウルソ錠を服用する際の常用量は1日150mg〜300mgとされており、この量は1日に肝臓が作り出す胆汁酸の量200〜500mgと同程度です。いわゆる肝臓が胆汁酸を作る働きを、ウルソを補うことで肩代わりしている印象を受けます。

 

ウルソ錠とグーフィス錠の併用について

グーフィス錠の添付文書には「ウルソの作用を減弱するおそれがあるため併用注意」とされています。

 

これまでの上記2剤の胆汁酸への役割・効果を踏まえて、2剤併用についての私の感想をしるします。(個人的な感想です)

 

  • 日本人を対象としたグーフィス錠の第三層試験結果によると、1週間に1.7回しか便が出ない人たちがグーフィス錠を飲むと1週間に6.4回の排便があったことが報告されていますので、グーフィス錠はそれほど胆汁酸を排泄させることができる薬だと認識します。

 

  • 計算上ですが、グーフィス錠5mgを服用すると血液中を流れるコレステロール1g程度が肝臓で胆汁酸として生まれ変わる=1g程度の胆汁酸が便として排泄された?と考えるかどうかは今後の臨床報告を待つ感じです。

 

  • 腸肝循環を流れる胆汁酸の量は3〜5g(ウルソのインタビューフォームには2g程度という記載もあります)と想定すると、グーフィス錠を服用すると1g(20%〜)程度の胆汁酸を排泄する計算になります。

 

  • ウルソ錠をたくさん飲むと吸収しきれなくなった胆汁酸が便として排泄されるため下痢になるわけですが、ウルソをたくさん飲むと重大な副作用リスクが上昇するため、下剤として活用することはできません。

 

  • 肝機能改善を目的としてウルソ錠を1日量150〜300mg程度服用している方は、本来であれば肝臓が胆汁酸を作る工程を、ウルソ錠を飲むことで代用し、肝臓の負担を減らすことを目的としています。この方がウルソに追加でグーフィス錠を飲んだ場合、1g相当の胆汁酸が排泄されます。そのため肝臓は1g(1000mg)分の胆汁酸を作らなければならないことになります。1日150〜300mg程度のウルソでは足りません。かといって、ウルソをたくさん飲むことは重大な副作用リスクが上昇するため避けたいところです。あくまで私のイメージですが、ウルソ服用中にグーフィス錠を追加服用すると肝臓が疲弊する可能性が示唆されますので、肝機能が低下する可能性を考慮するのであれば、併用は避けたほうがいい気がします。

 

 

以上のことから、ウルソ錠を服用しているかたはグーフィス錠の併用を避けたほうがいいと私は思います。

高用量ウルソの毒性について(28mg/kg/日)以上の用量について

整腸剤の効果・使用方法・違いについて(ビオフェルミン・乳酸菌・糖化菌・酪酸菌)

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業