追記:2023/8/2
ラジカット内用懸濁液は28日間サイクルで投与/休薬を繰り返して使用する製剤ですが、米国FDAからの要請を受けて田辺三菱製薬は1日1回連日服用の治験を行っていました。しかし、1日1回の連日服用を48週間(約1年間)行っても、既存の投与/休薬サイクルの治療法と比較して、ALS機能評価尺度のスコアで統計的な優越性を示す可能性が低いという結論に至り、1日1回連日服用の治験は中止とされました。
尚、連日服用において、新たな安全性の懸念は認められなかったとしています。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬「ラジカット内用懸濁液2.1%」が発売開始となりました。
通常、成人には1回5mlを空腹時に1日1回、経口投与します。
薬価は1mlで2751.9円です。
「ラジカット内用懸濁液2.1%」の使用方法
第一クール期間は14日間連続投与した後、14日間休薬します。
第二クール以降は14日間注10日間投与し、14日間休薬します。
この場合の1日薬価の計算方法は
28日間のうち10日間服用すると考えます。1回5ml使用する場合の1日薬価は
5ml×2751.9円×10日間/28日間=4914.1円
ということで、4914.1円が1日薬価と考えます。
ラジカット内用懸濁液2.1%が2023年3月15日に薬価収載されました。
適応症は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)における機能障害の進行抑制)です。
以下に、開発経緯や薬の効き目、使用方法について記します。
ラジカットは当初、脳梗塞急性期における神経症候や、日常生活動作障害、機能障害の改善を目的として2001年4月にラジカット注30mgが発売となり、その後2010年1月にラジカット点滴静注バッグ30mgが発売された経緯があります。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬としては、2015年6月に点滴静注治療薬として初めて承認されました。ALSの原因として運動ニューロンの変性が報告されていますが、その要因としてフリーラジカル等の酸化ストレスが運動機能の悪化をもたらすことが示唆されています。
ラジカットは「フリーラジカルスカベンジャー(抗酸化作用)」として役割があり、ヒドロキシラジカル等の「フリーラジカル」を消去する作用により、脂質過酸化を抑制し、酸化ストレスによる神経細胞障害を抑制する作用が期待されます。
ALS患者の長期治療において、頻回に投与しなければならない点滴治療は、患者さんだけでなく介護者や医療従事者にとって大きな負担となっており、日本では在宅治療への移行が難しい要因ともいわれていました。
更に、筋委縮に伴い血管の確保が難しくなることも点滴静注による治療の難しさが報告されていました。
ラジカット内用懸濁液は、ALS患者さんの上記の背景を考慮し、利便性の高い製剤を開発することが求められて開発された製剤です。
錠剤ではなく、内用懸濁液として製造された理由もALS患者さんの嚥下困難に配慮されたためです。
ラジカット内用懸濁液は粘性(最低限のとろみをもたせています)があり、専用の経口シリンジおよびアダプターが付属されています。
2023 年 3 月現在、ラジカットはALS を適応症とする内用懸濁液として米国、カナダで承認されています。
ラジカット内用懸濁液は食事の影響により血漿中濃度が低下するため、起床時等の8時間絶食後に服用すること。服用後少なくとも1時間は水以外の飲食を避けること。
8時間絶食ができない場合は低脂肪食では摂取後4時間以上、軽食では摂食後2時間以上あけて、ラジカット内用懸濁液を服用することが可能です。
通常、成人に1回5ml(エダラボンとして105mg)を空腹時に1日1回経口投与します。
本剤投与期と休薬期を組み合わせた28日間を1クールとし、これを繰り返します。
第1クールは14日間連続投与する投与期の後、14日間休薬します。
第2クール以降は、14日間のうち10日間投与する投与期の後、14日間休薬します。
ラジカット内用懸濁液は、肝臓にてグルクロン酸抱合(水溶性の物質に変えられる)された後、尿として排泄されます。
ラジカット内用懸濁液、フリーラジカル消去作用および脂質過酸化抑制作用が報告されています。
ヒドロキシラジカルによるリノール酸の過酸化および脳ホモジネートの脂質過酸化を、ラジカット内用液の濃度依存的に抑制したことが示されています。
また、水溶性および脂溶性ペルオキシルラジカルによる人工リン脂質膜リポソームの脂質過酸化を抑制します。
上記の作用により、フリーラジカルを消去し、運動神経細胞の酸化的障害を抑制することで病勢進展の遅延を示すことが報告されています。
ボトル:35ml、50ml
ボトル開封前は冷蔵(2~8℃)で正位保存すること。
ボトル開封後は使用の都度必ず密栓し、室温で正位保存すること。
ボトル開封後は15日以内に使用していない本剤を廃棄すること。