抗ヒスタミン剤が小児の“熱性けいれん”や“てんかん”を誘発する可能性について

抗ヒスタミン剤が小児の“熱性けいれん”や“てんかん”を誘発する可能性について

 

5歳未満の小児2~5%で発症することがある熱性けいれんですが、抗ヒスタミン剤を使用するとその発作時間や発熱から発症までの時間に影響するという報告がなされています。今回は抗ヒスタミン剤と熱性けいれん、てんかんの関係について調べてみました。

抗ヒスタミン剤と熱性けいれん

 

脳内を流れているヒスタミンは痙攣やてんかんの閾値(上限値)をUPさせることで、てんかんや痙攣の持続時間・重症化を軽減するはたらきがあります。てんかんを誘発しているマウスにヒスタミンを投与すると、脳内のヒスタミンレベルが上昇して、てんかん発作を遅らせることができるという報告があります。(2004.12.6、Brain Res Mol Brain Res)

 

脳内の神経においては、ヒスタミン3受容体に、けいれん発作を抑える効果が示唆されており、鼻水止めとして投与された抗ヒスタミン剤が上記の受容体を抑制してしまうと、てんかん・痙攣までの閾値が低下して発作が生じやすくなると考えられております。

 

以下に発熱した小児に対して投与された抗ヒスタミン剤が、どの程度熱性けいれんの誘発に関連するかをまとめます。

痛み止めとして小児に対するカロナール(アセトアミノフェン)を使用する場合の量15mg/kgについて

被験者:250人の乳児および小児(男児:135人、女児:115人、平均年2歳4か月±1.5歳)

 

上記の250人のうち、84人(33.6%)に発熱時に抗ヒスタミン剤が投与されました。抗ヒスタミン剤を投与した群・しなかった群において、発熱の程度には差はみられませんでした。

結果

 

発熱検出から熱性けいれん発症までの時間

抗ヒスタミン剤を使用しなかった群:4.27±1.36分

第一世代抗ヒスタミン剤を使用した群:2.5±0.79分

第二世代抗ヒスタミン剤を使用した群:3.01±0.37分

軟膏が皮膚から吸収されるまでの時間について

熱性けいれんの持続時間

抗ヒスタミン剤を使用しなかった群:4.5±4.3分

抗ヒスタミン剤を使用した群:9±6.1分

 

熱性けいれんが15分以上持続した割合

抗ヒスタミン剤を使用しなかった群:29.5%

抗ヒスタミン剤を使用した群:31%

痛み止めとして小児に対するカロナール(アセトアミノフェン)を使用する場合の量15mg/kgについて

anti-histamine

第一世代の抗ヒスタミン剤の影響(ポララミン、ネオマレルミン、ジメチンデン)

服用人数:55人

熱性けいれん持続時間:9.3±14.2分(飲まなかった群との間に有意差あり)

15分以上持続した割合:36.7%

 

 

第二世代の抗ヒスタミン剤の影響(ジルテック・ザイザル・クラリチン・ザジテン)

服用人数:29人

熱性けいれん持続時間:6.0±6.1分

15分以上持続した割合:20.7%

 

発熱検出から熱性けいれん発作発症までの時間に関して、第一世代および第二世代の抗ヒスタミン剤を使用することは、使用しない群に比べて熱性けいれんを発症するまでの時間が短くなるという結果がでております。

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以上のデータから、第一・第二世代の抗ヒスタミン剤を使用することは発熱から熱性けいれんを発症するまでの時間を短縮し、発作持続時間を延長するという結果が示されました。

 

別の報告ですが、発熱による熱性けいれんを発症した小児の脳髄液中のヒスタミン濃度と、発作を伴わない発熱をした小児の脳髄液中のヒスタミン濃度を比較したデータによると、

 

発作を伴わない発熱小児の中枢神経内ヒスタミン濃度:0.69±0.16pmol/ml

熱性けいれん小児の中枢神経内ヒスタミン濃度:0.37±0.18pmol/ml

 

という報告があり、中枢内のヒスタミン作動性ニューロン系が小児期の熱発性けいれ発作と関連している可能性が示唆されています。

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ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業