先日、ゾフルーザ錠の耐性菌が出現しているニュースが報道されました。耐性菌の発生率については、まだまだ低いようですが、ゾフルーザ錠の治療占有率が増えるにつれて、耐性菌の発生率も上昇する恐れがあります。
インフルエンザの治療薬としてゾフルーザ錠が承認されている国は2019年1月現在では日本と米国だけですので、そこまで多くの情報は出回ってはおりませんが、ゾフルーザ錠とタミフルカプセルを併用した場合、インフルエンザの治療にとってどの程度有益化といった情報がマウス実験レベル・試験管実験レベルで公開されておりました。
イヌの腎臓細胞(MDCK細胞)を10%ウシの胎児の血清下において、インフルエンザウイルスAに感染させ、37度で1時間培養します。次に様々な濃度のゾフルーザ(1.25~80nmol/l)と段階的に希釈された各種インフルエンザ治療薬(タミフル:156.25~40000nmol/l、リレンザ:78.125~20000nmol/l、イナビル:7.8125~2000nmol/l、ラピアクタ:7.8125~2000nmol/l)をインフルエンザが感染した細胞にふりかけて、2日間培養した後、細胞存在率を測定しています。
結果
ゾフルーザは各種インフルエンザ治療薬との併用において、濃度依存的に相乗効果があることが示されました。またゾフルーザは、どのインフルエンザ治療薬との組み合わせにおいても細胞毒性を示すことはありませんでした。
インフルエンザAに感染させてから96時間(4日)が経過マウスに
・ゾフルーザ単独治療
・タミフル単独治療
・ゾフルーザとタミフルの併用治療
・プラセボ(偽薬)
上記の治療を行ったところ、
・ゾフルーザ単独治療:投与から24時間後のウイルス力価が低下し、投与から72時間後にはウイルス力価が検出下限に達した(検出することができないほどウイルス量が低下した)
・タミフル単独治療:ウイルスの力価低下については、ほとんど影響を及ぼさなかった
・ゾフルーザとタミフルの併用:上記単剤治療と比較して、ウイルス力価の減少作用がより効果的でした。
・プラセボ(偽薬):ウイルスの力価低下なし
インフルエンザウイルス感染後の肺の重量について
ゾフルーザ錠とタミフルカプセルの併用療法(マウス実験レベル)
一般的に、インフルエンザウイルスに感染すると炎症細胞の肺組織への浸潤が生じるため、肺の重量が増加することが報告されています。インフルエンザAに致死的感染したマウスにおいては、肺における過剰炎症反応を介して死亡が誘発されることが報告されております。タミフル単独治療と比較してタミフルとゾフルーザの併用療法においては、ウイルス感染による死亡率の低下が報告され、生存率の上昇が確認されました。
肺内部のサイトカイン・ケモカインに関する報告ではIL-6、IFN-γ、MCP-1およびMPI-1αなどのケミカルメディエーターはウイルス感染後に少なくとも7日間は増加・維持するのですが、ゾフルーザを投与することで、上記ケミカルメディエーターの有意な減少が確認されています。(タミフルによる減少作用には有意差なし)。肺内部におけるIL-6およびMCP-1濃度と、インフルエンザウイルスの力価とは正の相関があることから、これらのケミカルメディエーターの減少はウイルス力価の低下を意味します。
筆者らは、インフルエンザウイルスの重症感染例において、ゾフルーザ錠とタミフルカプセルとの併用療法を支持するとまとめています。