ゾフルーザ耐性インフルエンザウイルスの報告について

ゾフルーザ耐性インフルエンザウイルスの報告について

 

2018年12月、横浜の小学校にてゾフルーザ錠に対する耐性を獲得したインフルエンザウイルスが報告されました。

横浜で確認された変異型のインフルエンザウイルスは、既存のインフルエンザ治療薬(タミフルやリレンザ、イナビル)は効果的に作用するものの、ゾフルーザ錠に対しては76~120倍高い耐性(ゾフルーザが効きにくい)を獲得しているウイルスです。

xofluza

ゾフルーザ錠に対する耐性菌については、臨床段階から報告が上がっており、ゾフルーザ錠が作用する部分(ポリメラーゼ産生サブユニット部分)の38番目のアミノ酸“イソロイシン”が“トレオニン”へ変化したインフルエンザウイルスについてはゾフルーザの効き目が大幅に低下することが報告されておりました。

ゾフルーザ耐性インフルエンザウイルスについての報告

今回、横浜の小学校で確認された変異型もPAI38Tという株ですので、ポリメラーゼ産生サブユニット(PA)の38番目のアミノ酸であるI(イソロイシン)がT(トレオニン)へ変異したインフルエンザウイルスでした。臨床試験中のデータを加味しますと、想定の範囲内という感じでしょうか。

 

インフルエンザ治療薬に対する耐性率に関するデータはそれほど多くはないのですが、2000人規模のデータによると、タミフルでインフルエンザウイルスの治療を行った群において、タミフルへの感受性が低下した割合(タミフルに対してインフルエンザウイルスが耐性を獲得したためにタミフルが効きにくくなった割合)を確認してみると、大人で0.32%、小児で4.1%という報告があります。

タミフルに対する耐性を獲得したインフルエンザウイルスの割合

一方、さらにデータは少なく臨床試験中のデータかとは思うのですが、ゾフルーザ錠に対する感受性の低下率を確認してみると大人で0.4%、小児で5.7%という記述を確認しました。この結果を見て、タミフルでもゾフルーザでも同程度の耐性菌は現れると捉えるか、ゾフルーザでの耐性獲得率がやや高いなぁと感じるかはそれぞれかと思われます。

ゾフルーザ錠を体重80kg以上の方が飲むと自己負担額が3000円を超える

今シーズンはインフルエンザの治療にゾフルーザ錠が処方される率が高く、出荷調整が行われている状態が続いております。インフルエンザウイルスの治療薬が1剤に集中すると、感受性の低下(耐性株の出現)・耐性株の増加といったリスクも起こりうることを念頭において、それに関する報告に注視していきたいと思います。

 

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業