しっかり吸入することができる吸入薬の形はブリーズヘラータイプ(ウルティブロ・オンブレス)/吸入器の形と吸入流速を比較する

しっかり吸入することができる吸入薬の形はブリーズヘラータイプ(ウルティブロ・オンブレス)/吸入器の形と吸入流速を比較する

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の中程度~重症度の患者さんは空気を吸う力(吸引力)が低下してしまいます。COPDの治療薬として乾燥粉末吸入器が使用されるのですが、患者さんの空気を吸う力が低い場合、乾燥粉末吸入器をしっかり吸うことができないため、医師が期待する薬の効果が出ない場合があります。今回は中程度~重症のCOPD患者さんが各種吸入器を吸う力について調べてみました。

使用する吸入器

ブリーズヘラータイプ:ウルティブロ、オンブレス

エリプタタイプ:アノーロ、エンクラッセ

ハンディ―ヘラータイプ:スピリーバ(カプセルを充填するタイプ)

以下の写真を参照ください

対象となる患者さん

10年以上の喫煙歴がある40歳以上の方のうち中等度~非常に重度の閉塞性肺疾患(COPD)患者さん97名です。(息を吐き出しにくいと感じる方)

 

吸引力の計測方法は、上記の吸入器の吸入口(マウスピース部分)に吸引力測定器をセットして吸う力を測定しています。

 

結果(年齢・性別を考慮した平均値)

ブリーズヘラータイプ(ウルティブロ、オンブレス):108±23L/min

エリプタタイプ(アノーロ、エンクラッセ):78±15L/min

ハンディ―ヘラータイプ(スピリーバカプセルを充填するタイプ):49±9L/min

 

ブリーズヘラータイプの吸入器は、エリプタやハンディ―ヘラータイプの吸入器に比べて、しっかりと吸入できることが示されました。今回のデータは薬が適切に患部(気管支)に届くためには“吸いやすさ(吸入流速)”が良い方が、吸引力が低下しているCOPD患者さんの治療に有益であろうという観点から行われたものです。

ブリーズヘラー・エリプタ・ハンディヘラーによる吸入流速を比較する

そのため、各種吸入薬が本来持っている薬としての効き目・強さを比較したものではありません。(吸入器の特性を比較したものです)

喘息の吸入薬を吸うときの口の形は「フー」ではなく「ホー」

尚、上記とは異なる報告なのですが、喘息治療用の吸入薬として使用されるディスカスタイプ(アドエア・フルタイド)およびタービュヘイラータイプ(パルミコート・シムビコート・オーキシス)とハンディーヘラータイプ(スピリーバカプセル)の吸引力を比較したデータによると

ディスカスタイプ(アドエア・フルタイド):82.4L/min

タービュヘイラータイプ(パルミコート・シムビコート):53.1L/min

ハンディ―ヘラータイプ(スピリーバ):40.4L/min

ディスカス・タービュヘイラー・ハンディヘラーの吸入流速を比較する

とされておりますので、どちらのデータもスピリーバハンディ―ヘラータイプを吸うためには一定量の吸引力が必要であることがわかります。ここまでのデータですと、中程度から重症のCOPD患者さんには使用しにくい薬という内容になってしまいますので、以下にスピリーバレスピマット製剤の肺への到達率について示します。

 

スピリーバ製剤に関しては、ハンディ―ヘラーの次に発売されたレスピマット製剤あります。レスピマット製剤は吸引するタイプではなく、ボタンを押すとミストが一定量噴霧するタイプのCOPT治療薬です。そのため吸引力が低下している患者さんでも十分な薬の効果が感じられます。

 

肺への薬剤到達率を評価したデータによると、タービュヘイラータイプ(パルミコート・シムビコート製剤)の肺への到達率15%、タービュヘイラータイプに吸入用のスペーサー(補助器具)を付属した場合の肺到達率28%であったのに対して、スピリーバレスピマットの肺到達率は39~45%となっておりますので、吸引力に左右されずに十分な薬の効果が示されています。

(上記のパーセンテージは吸入器にセットされた薬のうち、どれくらいの量が肺へ到達するかを視覚的に評価したデータです。)

スピリーバレスピマットを使用した時の肺へのミスト到着率

 

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業