アストラゼネカの吸入器エアロスフィアとは何か

アストラゼネカの吸入器エアロスフィアとは何か

アストラゼネカからCOPD治療用吸入剤として以下の2種類発売となりました。

・ビベスピエアエアロスフィア(2剤配合吸入剤)

・ビレーズトリエアロスフィア(3剤配合吸入剤)

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どちらの吸入薬にも「エアロスフィア」という聞きなじみのない言葉が着いていましたので、今回は「エアロスフィア」とは何かについて調べてみました。

 

エアロスフィアとは

 

エアロスフィア(Aerosphere)とは薬剤結晶と比べて比重の軽い担体がキャリアとなって薬剤を送達させる技術を用いたことに由来する言葉で、空気のように軽い「Aero」と担体の「sphere」をとって「Aerosphere」と名付けられております。

 

ビベスピエアロスピア、ビレーズトリエアロスフィアともに吸入器の形としては“加圧式定量噴霧吸入器 (pMDI)”を採用しており、パッと見ではサルタノールやフルティフォームと同じような吸入器です。(プッシュするとシュッと薬が出るタイプです)

 

ビベスピ、ビレーズトリに充填されている薬剤の状態はエアロスフィアという形態を採用しています。この薬剤の状態で加圧式定量噴霧吸入器で“シュッと”噴霧することの利点を調べてみました。

エアロスフィアとは含有薬剤を多孔性粒子である担体に接着させ、肺全体に送達させる薬剤送達技術を有しています。薬剤の運び役である多孔性粒子のイメージとしては、肺表面を覆っているリン脂質の様な成分で出来ていて、それに非常にたくさんの穴が開いたような形状をしいます。この穴に各種薬剤を接着した状態で吸入するようなイメージです。

 

薬剤結晶(薬剤が固まった状態)と比較すると、多孔性粒子(薬剤の運び役)は比重が軽いため、肺の中枢から末梢まで(肺の奥深くまで)到達するのに適していると考えられています。さらに、肺表面と似た成分でできていることから、肺や気道の表面に沈着しやすい(くっつきやすく、離れにくい)性質であることも薬剤を患部へ到達させるのに有益と考えられます。

 

また、多孔性粒子は共懸濁液としても機能し、薬剤結晶を沈降しにくくすることも利点としてあげられます。薬剤が結晶化すると比重が増すため溶液中で沈んでしまうことがあるのですが、多孔性粒子に吸着している薬剤は結晶化しにくいため、分離・沈降を防ぐことができるという利点もあるというニュアンスです。

まとめ

エアロスフィアとは軽くて穴の開いた脂質に含有薬剤(2成分または3成分)を吸着させて、軽い状態の吸入薬を作り出す方法であり、加圧式定量噴霧吸入器で薬剤を噴出した場合に、肺の奥深くまで薬剤を到達させることを期待して作られた多孔性粒子構造をした薬剤のことです。

 

多孔性粒子は肺表面に似た成分でつくられているため肺表面でくっつきやすい特徴があるため、薬剤の到達率を高めることが期待されます。さらに、多孔性粒子は薬剤結晶化して下に沈んでしまうようなことはないことも利点としてあげられます。

(薬剤濃度を均一にしたまま最初から最後まで使用することができる)

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業