ブリリンタ錠を製造販売しているアストラゼネカは、2型糖尿病および冠動脈疾患と診断された1万9000例超の患者さん(心筋梗塞・脳卒中の既往歴なし)を対象として、アスピリン単剤治療およびブリリンタとアスピリンの併用療法における心血管イベント抑制作用に関する第Ⅲ相試験の概要を公開しました(THEMIS試験)。
結果は、主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞・脳梗塞からなる複合イベント)を統計学的に有意に低減し、主要評価項目を達成したことを発表しました。詳細については今後の学会において発表するとしています。
上記の報告は冠動脈疾患と診断されたが、心筋梗塞の既往がない患者さんを対象としたデータとなっており、アストラゼネカとしては“心筋梗塞および脳梗塞の既往例のない2型糖尿病を合併した冠動脈疾患に対する治療薬”としての適応を取得することを目的とした臨床試験と思われます。
今回のアストラゼネカの試験と類似した試験として“PEGASUS-TIMI 54試験“が2016年に公開されております。
心筋梗塞を発症してから1年以上が経過している糖尿病患者さんを対象として、アスピリン単剤およびブリリンタとアスピリンの併用群における血管イベント抑制作用に関する報告です。
PEGASUS-TIMI 54試験の結果
被験者:糖尿病患者6806例(1型:846例、2型:5960例)
ブリリンタ服用量:1日2回、1回90mgまたは60mg
アスピリン単剤と比較してブリリンタとアスピリン併用群は心血管死リスクを22%減少した
アスピリン単剤と比較してブリリンタとアスピリン併用群は冠動脈性心疾患死リスクを34%減少した
以下はインスリン治療を行っている2型糖尿病患者さんを対象とした具体的なデータです。
心血管死・心筋梗塞・脳卒中発生率複合イベント
アスピリン単独群:18.2%
ブリリンタとアスピリンの併用群:16.9%
(ブリリンタとアスピリンの併用群が相対リスク12%減少)
心血管死リスク
アスピリン単独群:8.1%
ブリリンタとアスピリンの併用群:6.7%
(ブリリンタとアスピリンの併用群が相対リスク15%減少)
冠動脈性心血管死リスク
アスピリン単独群:4.0%
ブリリンタとアスピリンの併用群:5.6%
(ブリリンタとアスピリンの併用群が相対リスク23%減少)
大出血リスク
ブリリンタとアスピリン併用群において2.56倍高い
PEGASUS-TIMI 54試験は、過去に心筋梗塞を発症したことがある糖尿病患者さんを対象としたものです。予防医学が主流となっている現状においては、冠動脈疾患と診断を受けているものの、心筋梗塞を発症していない段階において、
「ブリリンタとアスピリンを併用することが予防医学として有益です」
というアストラゼネカの狙いが“適応症取得”という形で評価されるかどうかがポイントとなっております。(2019年2月:第Ⅲ相試験段階)